第2話 アウトレットな話
「部長、せっかくの新入部員で弓矢を見せてあげては?」
政美さんが堀こたつに入った木舞部長の肩を振らず。
「着替えるのが面倒くさい」
木舞部長は頭をボリボリと頭をする。
すると、部長の髪には外ハネを発生する。
「部長、ハネています」
政美さんの一言を木舞部長が受けると。
ガバ!
堀こたつから飛び出して、トイレに駆け込む。
「この外ハネが!この外ハネが!」
部長は大声で謎の液体を髪に付けクシで何度もブラッシングをする。
確かに髪の外ハネはその人のキャラを変えるがほのぼの部長は少しヒステリックだ。
「ナンマイダ、ナンマイダ」
政美さんは部長に対して手を合わす。
この部活大丈夫かな?
小さな疑問は妹にも伝染する。
「わたしに試し打ちさせて」
うん?
「ジャージでいいなら一回はいいぞ」
弓道は作法のスポーツである。礼に始まり礼に終わる。
そんなことは関係ない。
みつかはジャージで弓を弾き放つ。
刹那、マトの中心にヒットする。
「えへへへ……」
弓道部の二人は絶句している。
「あんなに苦労したのに……」
木舞部長はイジイジとダンゴ虫に話かけている。
「ダメです、ここはわたしが打ちます」
正美さんもジャージ姿で一筋の矢を放つ。
マトの中心やや左下であった。
『ふ、今日はこれくらいにしておいてやる』
何か正美さんがブツブツ言っているが、そこは黙っておこう。
そうそう、学年主任が部長のハンコが欲しいとか。
「あ、入部届ね」
この書類にハンコとサイン、五枚、いや、十枚はある。
えーこれが二人分だから……。
「あ、この書類は住所が必要です」
あああああ、と、倒れ込む木舞部長であった。
「木舞部長!傷は浅いです」
正美さんは壊れた木舞部長を揺する。
「はぁ!」
「気が付きましたか」
「わたしは一体?」
「部長としての職務為に殉職しかけたのです」
「わたしはこの命が尽きようとしても、職務に打ち勝つ」
おおおお……!
「部長、部長、部長」
皆から歓声が上がる。
「いい加減にしろ、無能部長が」
わたしはつい本音を吐いてみる。
「お、お姉ちゃん、木舞部長が書類と戦っているのよ」
皆の冷たい視線が突き刺さる。
「正義はここにある」
わたしは携帯の画面に錦の旗を揚げる。
わたしに注いでいた冷たい目線はころりと変わり。
「そうだ、ダメ部長が悪い」
誰かが叫ぶ。
そこで渋々と書類にハンコを押す木舞部長であった。
「ふ、勝った」
これを俗に言う『入部届の乱』である。
「おーし、ここテストに出るぞ」
「はーい」
わたしの掛け声にメモをとる一同であった。
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