007 説得SIDE-A
風呂から上がると、俺はエッダに身体をバスタオルで拭かれてしまった。
そのようなことを女性にされるのは気が引ける。
着がえにはこの世界の服が用意されており、下着から何から何までエッダに着させられてしまう。
その間にシャノはメイド服を支給されるとかで、裸にバスタオル一枚で、エッダに呼ばれた他のメイドに連れていかれてしまった。
シャノの行動には衝撃を受けた。
まさか女性が、しかも処女の乙女があのような行動に出るとは……。
俺が彼女を諜報員だと疑ったせいだ。
それが違うのだと証明して見せる手立てが、シャノにはあれしか無かったのだ。
俺が追い詰めて、あんなセクハラ紛いのことをさせてしまった。
日本であのようなことを未成年――シャノは15だ――にさせたと発覚したら、社会的に抹殺されてしまうだろう。
俺は、そのような行為をシャノを疑ったことで、させてしまったのだ。
そう落ち込む俺に、エッダがフンスと息巻いて説教して来た。
「よろしいですか?
この世界では奴隷という身分は当たり前なんです。
特に借金奴隷や奉公奴隷は、貧しい家庭の救済措置みたいなものなのです」
奉公だ、救済だと言っても、その現実は性的なサービスを強要されているのだ。
それも日本では未成年にだ。
いくらこの世界では15歳から成人だとしても、納得できるものではない。
「しかし、あんなに必死になって身を捧げるなんて、奉公とは言えないのではないか?」
「それは本人の意思により決めた契約事項です。
そのようなお勤めをするからこそ、家族が何年も食べられるお金が稼げるのです」
こんなことが発覚したら、SNSで大バッシングを受ける。
そうならない、奴隷が当たり前、この世界こそがおかしいんだ。
「でも、それはパワハラやセクハラになるから……」
「逆にこのままシャノを放り出したらどうなると思っているのですか?
シャノは契約不履行により、一つ下の借金奴隷に落ちますよ。
そうなると、もっと酷い扱いが許容されてしまうのですよ?」
人権って何だろう?
女性がこんな扱いを受けて良いんだろうか?
それを思わず受け容れそうになった俺って……。
自己嫌悪に陥る。
「明らかに人権侵害、女性蔑視だよ」
「それは日本の倫理観でしょう。
この世界では通じません。
むしろ、奴隷制度が無ければ、シャノもその家族も飢えて死ななければならないのですよ?」
この世界でも奴隷解放は可能だろう。
そうなるように社会が変わっていかないとならないんだよ。
「そうならないように政治が動かないと」
「それは王族批判の不敬罪になりますので聞かなかったことにします。
ですが、そのようにこの世界を変えたいのならば、ソーマ様自身が国の中枢に昇り変革なさい」
ああ、エッダの言う通りだ。
俺には何の力もないのだ。
奴隷制度を撤廃し、女性を性奴隷にしないで済む世界にする。
そんなことを言える立場に俺はないんだ。
「そのためには勇者として実績を上げなければならないか……」
「ならば、まずシャノを幸せにしてあげなさい。
1人の女を幸せに出来なければ、国を動かすなんて出来ませんよ?」
国の制度で奴隷解放が出来なくても、俺の生活圏の中ならば、奴隷として扱わないことは出来る。
しかもシャノは、あれだけの覚悟を見せてくれた女性だ。
俺が責任をとって幸せにすれば、彼女を救うことは出来る。
「そうか、俺が彼女の人権を守りたいならば、俺の嫁として幸せにすれば良いのだな」
シャノが嫁になれば、俺が手を出しても問題ないのだ。
年齢は……シャノは大人びているから大丈夫だ。
ふと気付くと、シャノがメイド服に着がえて戻って来ていた。
凄くカワイイ。
この子が俺の嫁?
あれ? 幸せな家庭しか思い浮かばないぞ。
明日からの訓練、頑張っちゃおうかな?
その前に、夜の訓練をどうするべきか。
いいのかな? 行っちゃっていいのかな?
俺の期待は膨れに膨らんでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。