002 スキルチェックSIDE-A
「それでは、ご案内いたします。
あ、まずはスキルチェックをいたしましょう」
俺を笑顔で案内する王女様。
だが、メイドに指示を出す声音は違った。
「そなた、準備なさい」
「かしこまりました」
王女殿下自身が直接案内をするというのに驚いた。
まさか、この世界では勇者様はとんでもない好待遇で、王女と結婚なんてことも望めるのかもしれない。
それにしても王女様、俺には敬語を使うけど、メイドに対する上からの指示、嫌いじゃないぞ。
だが、スキルチェックと言ったか?
普通ここはステータスチェックではないのか?
ステータスはあまり重要視されない世界なのか?
俺は移動の最中だが、王女様に訊ねた。
マナーとかどうか知らんし。
「なあ、ステータスは見ないのか?」
「はい? ステータスですか?」
おっと、どうやらこの世界ではステータスというものは知られていないらしい。
まさかステータスという仕組み自体が無い?
「ステータス、ステータス・オープン」
俺はラノベで当たり前のように行うステータスの表示を試みた。
指先で開く動作までしてみた。
だが、反応が無い。
ステータス制無しか。
なかなか面倒かもしれないぞ。
「うふふ、不思議なお方」
王女様に笑われてしまった。
王女様の反応からもステータスの表示は無いと思った方が良さそうだな。
「こちらへ」
王女様の案内で、俺は上階の応接室へと連れていかれた。
どうやらあの召喚の間は地下だったようだ。
「どうぞ、お座りになってください」
王女様に誘導されるまま、俺はソファに座った。
なかなか豪華なもので、ソファは本革だろう。
いや、この世界、合皮なんてなくて本革が普通か。
王女様よりも先に座るのもどうかと思ったが、王女様に促されたのだ、失礼ということもないだろう。
やはり、俺の立場は優遇されている。
王族と同等と思って良いのかもしれない。
「それでは、こちらに触れていただけますか?」
王女様に促されて、視線を向けると、ソファの対面にあるローテーブルに水晶球のようなものが置かれていた。
所謂スキル表示の魔道具だろう。
「安心してください。
元々勇者様には聖なる力が存在します。
スキルはオマケみたいなものです」
「わかった」
聖なる力はある限り、厚遇は変わらないと。
加えてここで、俺の付加価値が判るということか。
変なスキルでないことを祈ろう。
俺は若干の不安を抱きながら水晶球に触れた。
すると水晶球が眩く光り出した。
「おお、これは!」
この部屋には王女様と俺以外に護衛騎士や執事、メイドがいた。
俺が手を触れた水晶球の光に、護衛騎士が思わず声をあげたのだ。
こんな光は見たことがないという雰囲気だ。
もしや、俺の能力って凄いのかもしれないぞ。
「素晴らしい光の強さですね」
王女様も感嘆している。
これは良い兆候だよな?
「この魔道具は光の強さで、その人の能力の高さを示します。
そして……」
王女様が説明している間に、光が弱まった。
そして水晶球の中にいくつかの文字列が浮かび上がった。
「!」
それは俺には読めない字だった。
王女様と普通に会話が成立しているもんだから、俺は言語に関するスキルを持っていると思っていた。
所謂異世界基本セットだ。
異世界人と会話が出来なかったり、読み書きが出来ないと困る。
そこらへんは、誰でも出来るようになっているというものだ。
なのに、俺にはその文字が読めなかった。
つまり、会話が出来ても字が読み書き出来ない可能性があった。
「ご心配させてしまいましたか?
安心してください。
この文字は神聖文字と言って、特別な文字で読める者は少ないのです。
えっと」
「こちらを」
王女様が困った様子を見せたところ、すかさず執事が脇からメモを渡して来た。
どうやら、そこにこの世界で普通に使われる文字が書かれているらしい。
「お食事の用意が出来てます?」
読めた。つまり神聖文字だったから読めなかったということか。
「読めましたね」
「安心した」
王女様もニコリと笑顔を見せてくれる。
「それで、俺のスキルは?」
「異世界言語と、敏捷、そして聖級剣技ですね。
聖級剣技は剣聖と呼ばれる者が持つ最上位スキルですよ♪」
おお、俺って剣聖だったのか。王女様の反応も良い。
これならば、王城を出ても食いっぱぐれが無さそうだな。
多少訓練して、装備一式を手に入れて、王城での待遇が良くないならば出て行くという選択肢もありだろう。
そうなれば冒険者だな。
剣聖の力があれば、好き勝手生きていけそうだ。
魔王討伐?
命あってのものだねだろ?
そんな危険よりも、俺はこの世界を好き勝手に生きるんだ。
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