第23話




 大学四年。あかりと付き合ってから五年経過して同棲してから三年経った。そしてきょうはあかりの誕生日。毎年あかりにプレゼントしているけれど今年はどんなものにしようかとショッピングモールの中を散策する。


 あかりが今欲しいもの……は基本あかりも自分で買い揃えてたりするし服とかでも良いな。あ、でも服はあかりが似合うものを選ばなければならないのだから難易度高いのでは?ん〜……じゃあイヤリングとか……いや。今もあかりは婚約指輪をネックレス用のチェーンにつけてそれを付けていたっけか。時折指輪をするけど基本はそうしてる。ってなると……。


 「あ、そうだ。アレにしよう」


 悶々と自問自答を繰り返す中で誕生日プレゼントとしてのものを考えつきそれを買いに行く。次いでにあかりの好きなチョコケーキも買って行く。


 「喜んでくれたら嬉しいな」









 夕食後。夕食の食器を下げた後に小皿を取り出し、小皿の上に買ってきたチョコケーキを乗せあかりの前に置く。


 「え、これ私が好きなお店のやつだ!」

 「そうだよ。今日はきみの誕生日だからね。少し行列に並んだけどきみの好きなチョコケーキを買ってきたんだ」

 「えへへ、ありがときょーや」


 嬉しそうに笑う彼女の顔を見るだけでこちらも嬉しくなる。


 「それと……これ、誕生日おめでとうあかり」

 「えっ!? これって……」


 赤い紐で口を結われた袋をあかりに渡す。某有名なブランドものでそのロゴを見て驚いて僕を見る。


 「なんにしようかなって考えた時にそういえばコレ持ってなかったよなって思って」

 「開けてみてい?」

 「うん」


 あかりは丁寧にリボンを解き、袋から取り出していく。


 「……嬉しい。覚えてたんだコレ欲しいって」


 その中身は腕時計だ。あまりゴツくなく、華奢すぎもなく、女性らしさもありながらもしっかりとした機能がついている腕時計だ。


 「だって買おう買おうって言ってたけど買うの忘れてたでしょ?」

 「あ、そういえばそだった」

 「似合うと思って買ったんだ。つけてみて」


 隣に座りつつあかりが腕時計をつけるのを見る。ちゃんと似合っていて良かった。


 「はわぁ……どう?」

 「うん。似合ってる」

 「えへへ、ありがとっ」


 むぎゅうっと抱きついて礼を言うあかりを抱き締める。ぽんぽんと背中を優しく叩くといきなりあかりは離れる。


 「あかり? どうかした?」

 「ちょっと待ってて!」

 「え、う、うん……?」


 そう言って寝室に向かっていくあかりの背を見つめる。一体何があるというのだろう。暫く待っているとパタパタと足音が聞こえる。


 「……き、きょーや」

 「うん? ……え?」


 振り返れば家着姿だったあかりがドレス姿で来たのだ。それも黒の透けたレースでドレスというより……たしかネグリジェというものだっただろうか。まじまじとあかりの姿を見てしまう。あかりは仄かに頬を朱に染め、ソワソワとする。


 「ぷ、プレゼントもらったお、お返し……」

 「…………」


 僕はゆっくりと唾を飲み込む。ゆっくり立ち上がりあかりの目の前に立つ。


 「き、きょーや?」

 「……すごい似合ってる……し、その……すごいエロい」

 「そ、そう? ……えっとね……私のお願い聞いて欲しいなって。誕生日だし」

 「なに?」

 「……こ、こども欲しいの。きょーやの」

 「……………へっ?」


 あかりの言葉に素っ頓狂な声を上げる。聞き間違い……かな?


 「……だ、だから……きょーやのこども欲しいの」


 聞き間違いじゃあなかった。


 「その……ね? 五年になるし、だから……」

 「……まぁ、もう頃合いかなって思ってたんだ」


 僕は溜息を吐いて頬を掻いてから意を決してあかりの目を見る。


 「後数ヶ月で卒業ではあるけどさ。僕たち結婚しようあかり」

 「………うんっ! あ、えと……ベッド、いこ?」


 僕は頷き、そういえばテーブルに出しっぱなしだったケーキを見る。


 「少し待ってて」


 ケーキをまた冷蔵庫に収め、あかりと一緒に寝室に向かう。ベッドに互いに腰掛けてからはあかりの肩に手を置きそっと押し倒す。僕からしたことに少しあかりは驚きの表情をするけれど直ぐに僕の首に手を回す。


 「愛してるよきょーや」

 「僕も愛してる」


 互いに微笑み合い、自然とキスをする。数秒重ねた後に首筋に顔を移動して再度キスをする。


 「んっ……! ……ぁッ」

 「ちゅ……ちゅ…」

 「ぁ……ねぇ…きょーや…」

 「……うん?」

 「……いっぱい…愛してね」

 「うん。今日は寝かせないよあかり」


 彼女の着ているネグリジェの肩紐をズラしつつ薄暗がりの中でも分かる彼女の白く艶のある肌にまたキスをする。キスをする度にあかりは吐息を吐く。身体を震わせる。そんなイジらしさのあるあかりに僕はもう耐えきれなくなる。あかりの誕生日の日。僕はあかりの中に僕という証を残した。そしてあかりと結婚を誓い合った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る