第21話 虫ゲロ障(仮)無人島編その1
「やって来たぞ、無人島!!」
無人島に着くや否やアクトは、船から飛び降り一番乗りで島に入って大声で叫んだ。
それに続く様に、動きやすい格好をした冠と、ため息をつきながらやる気なく監督が、船からゆっくりと降りて来た。
「おいおい監督なんでそんなに嫌そうなんだよ!無人島とかって秘密基地みたいで良くないか?」
「そうだね、ちょっと旅行で遊びに来る程度なら、私も普通にアクトさんの様に、楽しめるとは思いますよ?ですけどね?これは三日間もの無人島でのガチサバイバルですよ?私はこう見えても、家でスマホをぽちぽちしてる系の現代っ子ですよ?それがなんですか?スマホなしでの外出どころか、電波なし人無しのところで、サバイバル?そんなもん誰だって嫌でしょ!それにほら、アレを見てください!」
そう言いながら監督が指差す先には、船から下ろされない様に、船にガッチリホールドしているネガの姿があった。
「どうですか、あの我等、陰キャの代表の姿は!アンタら、特にアクトさんの様な陽キャ、と言っていいかは分からないですが、そんなバグみたいな存在と一緒にしないでください!私は出来る事なら今すぐ家に帰って、布団に入りたいぐらいなんですからね」
監督がそう宣言すると、船にしがみついているネガは首を大きく縦に振った。
「あーそうですか」
アクトは、監督の熱弁を興味がなさそうに一言適当に返すと、船に近づき力ずくでネガを引き離すと、そのまま船には出航してもらい、完全にこの島からの逃げ道を無くした。
そのままネガを定位置である脇に抱えると、そのまま監督の元まで行き、もう一度やって来たぞ、無人島!!と叫び、それを2人が賛同するまで炎天下の中続けた。
その結果、監督とネガはアクトに洗脳されたのか、頭がおかしくなり今までに見せたことのない様な、ハイテンションになっていた。
そんな風に三人だけで盛り上がっている中、1人冠だけが内心で焦っていた。
何しろこの女、元々こういう配信とかはヤラセで、実は無人島っぽい所で、遊んでいるだけだと思っていたのだった。
だがここはマジもんの無人島で、島に出る前に餞別として美咲から送られたものは、人数分のナイフに鍋が一つと、着火剤に釣竿が二本だけだった。
その他飲み物は、個人でいくら持って行っても構わないとのことだったのだが、正直これが1番の問題だ。
まず第一に
次にネガだが、まさかのジュース一本で、更にはそれも船の中で飲み終える始末だ。
そして三人目が私冠だ、先ほども言ったが私はこの企画を甘く見ていた為、場を盛り上げるためだけに、2リットルの水を二本持って来ただけだった。なので今のところ3人で、3日間を水4リットルだけで生き残る事になるのだが、そんな事は普通に無理だ。
そして最後が、逆に凄い監督だ。なんと監督は、来る際にそれはもう本当に色々と用意しており、缶詰はもちろん簡易トイレに、テントや寝袋など他にも暇を潰す用のアイテムなど、これから遭難しても大丈夫と思えるほど、用意して来ていたがそれをあの男、クソゴミなゲロ男が、つまらんの一言でそれを全て、本土に置いて来てしまったのだ。
つまりは、この3日間を4人で4リットル、1人1リットル生活という事だ。
それに問題は、これだけじゃなく食糧問題や、寝床にトイレなど、他にも色々と問題が山住みになっている。
この中で唯一まともに使えそうだった監督も、万全の準備を始まる寸前に、全て無かった事にされた辛さと、これからの現実への絶望で、ネガちゃんと一緒に壊れてしまったし、使い物にならなくなってしまった。
そこまで考えると、今自分達が置かれている状態がどれほど、危機迫っているのかを知り冷や汗が止まらなくなってしまった。
そんな事は梅雨知らず、アクト達は砂浜で馬鹿騒ぎをしていた。
そんな馬鹿騒ぎを止める為に冠は、自分の手を強く2回叩くと、アクト達に集合をかけた。
集合をかけられたアクト達は、なんだなんだと思いながらも、しっかりと冠の前に集合した。
「なんの様だ?虫女。もしかして虫が食べたすぎて、発作でも出たのか?」
「んな訳ないでしょ!それよりアンタら遊ぶのも結構だけど、それは全部終わってからにしなさい」
「「アヒャ?」」
完全に壊れた2人が、冠になぜと問いかけると
「このままだと三日間も、家無し食なし水も無しの、最悪死ぬかも知れない極悪生活になるかもしれないからよ」
それを言われると、ハッとした表情で監督はショウキニモドッタ。
「ハハハッ!それはまずいな!本当にまずいぞ!私ちょっと行って来ますね!アヒャヒャヒャヒャ」
そういうと監督は、釣り竿を一本担いで少し出っぱった岩場へと移動した。
「よしこれで、監督さんが何か釣って来てくれたら、今日の食糧問題は解決ね。そしたら次は」
そう言うと冠は、まだアヒャアヒャ言いながら砂浜に山を立てているネガの元に向かい、ネガの頬を思いっきり叩いた。
「ネガちゃん正気に戻って!貴方がいないと私達はもうダメなの」
冠に叩かれた頬の痛みか、それともその後の言葉かは、判断できないがそのおかげで、ネガはショウキニモドッタ
「それじゃあネガちゃんは、私と一緒にみんなが寝るための拠点を作りましょうか」
「アイ」
「あとゲロ男は、水分問題をどうにかしなさい。この1番難しいのは、戦犯なアンタがやりなさい。もしどうにかできなかったら、アンタの分の水は無いからね」
一般人が無人島でそんな事を言われた日には、絶望でしかないその言葉も、特段アクトには響かず、ただ一言わかったと言い、アクトはナイフと鍋を持ってそのまま森の中へと突っ込んでいった。
まさかなんの抵抗もなくアクトが探しに行った事に、少し違和感を持ちながらも冠は、ネガを連れて自分達の仕事である拠点作りの為の、素材集めと場所探しを始めた。
それから約一時間が経ち、ネガも正気に戻り冠達拠点チームは洞穴を見つけた。
洞穴の中を見てみると、そこは意外にも丈夫そうで、それに昼は日陰になっており、直射日光を避けれて、更には夜には冷たい風を遮れると言う、この無人島では滅多にみれないほどの好物件だった。
「もうここでいいんじゃないかしら?」
そう言う冠に対して、ネガがそれを否定した。
「ア、アノ」
「どうしたのネガちゃん?」
「コ…ここはダメ!…ッデス」
「あら、それはどうして?私が見る分には、とても良い条件に見えるのだけど?」
「ア…アレです」
ネガの指差す先を見ると、そこには食べかけのきのみなどが、そこらじゅうに散乱していた。
「コ、ここに来る前にア、アクトさんにサバイバルに役立つ、ホ本を渡されていて、そこにこう言うところには、動物が住んでいてもしかしたら襲われるって書いてあったので!!」
後半になればなる程どんどんとネガの声は大きくなっていきながらも、それを真剣に聞いていた冠は、ネガの言い分を聞き、その発言とこの好物件な洞穴を比べた結果。
「それもそうね、それじゃあ他の場所を探しましょうか」
「ハ、ハイ!」
その後2人は、少し開けた場所にあった巨木の幹の部分が、少し窪んでいる事に気づき、そこに今まで拾ってきた枝や、何処かから流れ着いたであろう、大きな板などを利用して、簡易拠点を完成させた。
「「完成!」」
拠点が完成した2人はお互い喜び、そのままハイタッチまでしていた。
意外にも見つけてから、組み立てるのに時間がかかり、拠点が完成する頃には、日が落ちかけていた。
一つの問題が解決して、心に余裕ができた冠は他の2人のことを思い出した。
「あの2人は大丈夫かしらね?」
「モ、もしダメだった時用に、きのみでも拾っておきますか?」
「それもそうね」
人の心配よりも、そちらの方がこの場では必要だと思った冠とネガは、その辺で食べられるきのみなどを探していると、自分達の方に話しながら向かってくる2人の男達が見えた。
「よ!帰ったぞって結構いいもんできてんな」
「ほら言ったじゃないですか、私の予想が的中しましたね」
予想の的中とはなんのことだと思った冠は、その事について2人に聞くと、2人はここにくる前に拠点の出来具合を当てるゲームをやっていたんだとか……
「って、こっちが真剣し作業してる間にアンタら男どもは、なにやっとんじゃ!」
それを聞いた冠は、普通に怒った。
そしてこれは完全に自分達が悪い事を自覚していた男達は、自分達の成果をそっと出して、アクトは可愛らしくテヘッ☆と手を頭に当てながら言い、監督は素直にすいませんでしたと言いながら頭を下げた。
正直謝罪はどうでもよかった冠は、ネガと一緒に出された成果物を見た。
「こ、これは!!」
ーーあとがきーー
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