第20話 虫ゲロ障(仮)でラジオその2

前回、【ここがおかしい!アクトの放送内容、本人に聞いてみた】をやり少し事故は起きたが、なんとかそれも持ち直し話を続けた。


「まだまだ質問はありますが、時間もありますので次のコーナーに移りましょうか。次は今後の私たち虫ゲロ障(仮)にやってもらいたい企画を募集しました。」

「出来るだけ金のかかった企画がいいよな。もしくは個人でできないやつ。それにもし面白そうなのがあったら、俺の配信でもやるから、その時は見に来いよ」

「ワ…私は簡単なのがいいな」


そんな各々の意見を言いながらも、順調に進んでいくかに思えたが……


「……つまらん。さっきからあのゲームをやってほしいだの、あの歌を歌ってほしいだの。そんなもんは俺ら個人に言えよ!」

「まぁ、私も癪だけどゲロ男と同じ意見ね。それは個人の配信でやればいい事だものね」


アクトと冠がリスナー達からのお便りにダメ出しをしている中、実はこの案の中にはこっそりとネガが出していたものもあり、1人悲しく部屋の隅で泣いていた。


「本当にこんなもんしかないのか?」


そう言ってアクトがスタッフの方を見ると、ここのスタッフの中で1番偉い、通称監督(※監督では無い)が一つの箱を持って部屋に入ってきた。


その箱の側面には、アクトのリスナーと書かれており、監督は嫌そうな顔をしながらそれを渡しにきた。


「ん?監督これなんだ?俺のリスナーって」

「ここには、アクトさんの配信でよく名前を見る人からの、お便りが入っています……」

「監督さんどうしてこれを、他のお便りと分けていたのかしら?」

「それは……」


そう聞かれた監督は、少し言いたくなさそうにしながらも、睨んでくるアクトと冠になぜか泣いているネガに押されて、話し始めた。


「正直に言いましょう。私は社長から今後あなた達の企画についていく様にと言われています。ですので私がやりたく無いものを省いた結果、こうなりました!」


それを聞いた冠は頭を抱え、こっそりと監督がはけていた内容を見たネガは監督の考えを肯定し、アクトは笑いながら監督の肩を組んだ。


「いや、いいね監督。俺お前みたいな奴結構好きだわ」

「ワ…私もいいと思います」

「ハァー」


1スタッフが勝手に自分の意思で裏工作していたことや、普通に配信に入ってきている異常性で、アクトの配信で耐性をつけていないリスナーは、困惑していた。


「そんじゃまぁ、早速俺のリスナーからのお便り見ていくか」


アクトがそう言い箱に手を伸ばそうとしたところを、ネガに止められた。


「何のつもりだネガ?」

「ヤッ!ヤァー!」


お便りの中身を見たネガは、お便りの内容をやりたく無いがために、今日1番の大声を上げながら、アクトにしがみついた。

それを見た、監督もアクトを後ろから羽交締めにし始めた。


「わ、私もやりたくありません!」

「お前らいい度胸だな!」

「ヤァー!!!」


30代後半の男性を背中に、身体は小学生ほどの高校生を腹部に抱きつかれたのを、振り解こうとアクトはその場で暴れ始め、映像が流れて来ないリスナーサイドからは、ドタバタとマジもんの喧嘩をしている様に聞こえ、コメント欄は杞憂民によって占拠された。


三人がそんなアホな事をしているのを横目に、冠は普通に箱からお便りを取り出し読み始め、それを聞いた瞬間アクトは拳を天高く掲げ、監督はその場で突っ伏し、ネガは普通に振り払われた結果、思いっきり壁にぶつかり気絶していた。


「こんにちは本題ですが、私はスカイダイビングなんでどうかと思います。つい先日のジャンプバンジーをやっていた際、アクトさんとマネージャーさんが別々に飛んでいる音声を聞き、2人同時に飛んだほうが面白いのにと思った瞬間、スカイダイビングという言葉が私の脳内に浮かびました。ですので私は皆さんに是非スカイダイビングをやってもらいたいと思います。だそうですけど。急にどぎついのが来ましたね」

「あーでもスカイダイビングは、予約しちゃってるからパスで」


それを聞いた監督は1人安堵しており、一般リスナー達はアクトの配信で鍛えられたリスナーが、自分達とは全く持って違う存在だと気づき、今まで仲良くしていたもの達が全く違うもの達だと知った一般リスナーは、SANチェックです。


そんな事はお構いなしに、冠はまたしてもそのブラックボックスにてを入れる。


「それじゃあ次のお便りを読みましょうか。はじめまして本題ですが、皆様は某男性アイドルがやっている無人島開拓番組をご存知でしょうか?実は自分はあの番組の大ファンなんです。ですので無人島に行きましょう!以上よ」

「えっ!めっちゃいいじゃん無人島!」


アクトが子供がサンタさんにプレゼントをもらったかの様によろこんでいると、その奥で監督が腕で罰を作りながら、今まで見た事ない勢いで首を横に振っていた。それを見た冠は監督に質問をした。


「監督さん、全力で首を振っていますが流石にこれは出来ないんですか?」


そう言われた監督は、咄嗟の事に一瞬反応できなかったが、それでも一瞬の事だった、直ぐに許可は降りていないと嘘を付いたが、冠はその一瞬の動揺を見逃さなかった。


「監督さん、それ……嘘ですよね」

「…………はい」

「なら次の放送は無人島編だな!」

「まぁ、その場合は流石に配信はできないから、動画になるとは思うけどね」


完全に次回の放送が、無人島に決まった事に絶望した監督は、その場で足から崩れ落ちた。


「そういやさっきからネガの奴黙ってるけど、このまま反論とか無かったら、無人島になるけどいいのか?」


アクトが自分の席を立ち、壁際に居るネガの元に近づくが何の反応もなかった、流石におかしいと思ったアクトがネガの顔を覗き込むと、ネガは綺麗な顔で目をつぶっていた。


「し、死んでる!?」

「んな訳あるか!」


後をつけていた冠に頭を殴られた後、椅子を横に並べその上にネガを寝かし込んだ。


「それじゃあ、ネガちゃんと監督が使い物にならなくなったところで、今回の放送は終わりにしましょう」

「あれ?もう一個コーナーあったんじゃなかったっけ?」

「誰かさんが途中途中に問題が起きたせいで、時間がなくなったのよ」

「なるほど監督か!」

「ちげぇよ!貴様の事だよこのクソゲロ男が!放送中に遊んでんじゃねぇよ!」


そう言うと冠は、今度は拳ではなく蹴りを繰り出した。

それに驚きながらも、アクトはギリギリでその蹴りを躱した。


「やってくれたなこの虫女!やっぱりテメェ頭に食い残した虫でも湧いてんじゃねぇのか?」

「言ってくれるじゃないか、このvtuberの癖にvtuberっぽい事を全くやらない、vtuber擬きが!」

「知らねぇよんな事!けど知ってるか?そんな俺が今同接数1番多いんだぞ?」

「はっ!こっちは登録者が1番なんだよ!」


そんな事で冠とアクトの殴り合いが始まり、前までならその喧嘩を止めていた2人が今、1人は気絶しており、もう1人は絶望した表情で床に向かって、行きたくないと永遠に呟き続けていた。


その様子に、ネットでは不仲説や他にも色々言われたい放題言われた結果、ワールドトレンドにも載る事件が起き、そこでようやく気づいた他のスタッフがスタジオに乱入して来て、2人を力ずくで鎮圧する事で事なきを得た。


その結果、虫ゲロ障(仮)は、まぜるな危険と書かれてるものを、混ぜた結果できたのがこれ、と言う圧倒的に不名誉な名前ができた。


それと、余ったアクトのリスナーが送って来たお便りは、UPライブ所属vtuberの罰ゲーム用アイテムとして、事務所に置かれる事になり、後日フォルテがリリィとの配信内の勝負に負けた結果、これを引き心霊スポットで焼き肉を食べると言う、全くもって意味の分からない配信をする事になった。


ーーあとがきーー


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