第11話 バンドやろうぜその1

少しおしゃれなカフェの店内、そこにはデラックスジャンボパフェと言う、その名の通りデラックスでジャンボなパフェを待っている、一組の男女がそこにいた。


フォルテは目の前にいる男性には気取られない様にしながら、内心すごく焦っていた。

ど、どうしよう、さっきまでは私のスランプを解消する為に一緒に行動していたが、よくよく考えてみればこれは男と女、いわゆるデートというものではないのか?

今までの人生を小中高と女子校に通っていたせいもあり、男性にそこまで免疫の無いフォルテは、そんな事を考えて1人心の中であたふたしていた。

初対面は、お互い誤解があってバッドコミュニケーションだったけど、今はお互いその誤解も解け、それにアクトさんは私の為と言って、本来関係ない私のスランプを一緒に解消する為に、行動してくれている。

もしかしてアクトさんは、私のことが好きなのでは?ほら初対面の時も、男性は好きな子にイタズラをすると言いますし、それなのでは?

でもでもどうしよう……相手は年上とは言え、仕事上での私の後輩、それに同期の実の兄という。

けど、お互いに愛さえあればそんな事些細な事よね?

そんな風に完全に独りよがりな妄想をしていると、想像よりも一回り、いや二回り以上もでかいデラックスジャンボパフェがやって来た。


「うわでっか!何だこれ?店員さんこれってこんなにデカかったの?写真で見る限りそんなにデカそうな感じじゃなかったけど」

「ああその事でしたか、実は先日食べに来たお客様が、それはもう凄まじい勢いで完食されて、その際店長にデラックスジャンボパフェって言う割に、そんなにデラックスでもジャンボでもなかったわね。っと言ったことが原因で、その結果今増量キャンペーン中なんです」

「お、おうそれは何というか凄いな、店側にそんな横暴な事を言うその客も、それに乗っかって本当にデラックスでジャンボなパフェを作る店長も」


阿久津が店員とそんなくだらない世間話をしている間も、フォルテはそれ以上にくだらない妄想をし続けていた。


2人でデラックスジャンボパフェを完食するのに1時間もかかり、その後は2人とも胸焼けした状態で、お互いの家へと帰ることとなった。


フォルテは家に帰ってからお風呂にさっぱりとした状態で、改めてアクトに言われた事を考えた。


「わたしのスランプの原因は私のすぐ近くにある?」


適当に部屋の中を捜索してみたが、やはりその様な原因となりそうなものは見つからなかった。


「そう言えば今日は、色々な事があったせいで、まともに歌の練習をしてなかった」


そう思ったフォルテは、急いで自家用の採点機にマイクのコードを挿し、自分の十八番でもある曲を順番に歌い始めた。

その結果は、やはり歌姫と言われる事はあり、その全てが90点以上を叩き出した。


「前よりちょっと点数が下がってる……。やっぱり今日サボり過ぎたかな?リスナーのみんなを失望させない様に、もっと上手くならなくちゃ。何故なら私は歌姫だから」



「うっぷ。気持ち悪い」


フォルテと別れてから家に帰った阿久津だが、やはり帰りに食べたデラックスジャンボパフェが物凄く胸きており、今の気分は最っ高に悪い。

自分の部屋に行く気力もなく、リビングにあるソファーで伸びていると、ソフトクリームをその小さな口から少し飛び出した、可愛らしい舌でぺろぺろと舐めている小雪が、阿久津の姿を見つけてやって来た。


「お兄様お帰りにならしてたんですね。それで今日はどちらに行っておられましたんですか?」

「ああ、実はな……ヒッ」

「どうかされましたか?」

「いや実は、さっきまでフォルテちゃんとデラックスジャンボパフェって言う、めちゃくちゃデカいパフェを食って来てな」

「へぇーフォルテちゃんと…………それで?」

「ああ、マジでそれが思ってたより量があってな、正直今はそういうクリーム系をあまり見たくないんだ」

「そうだったのですね。ではこれは後で自分の部屋で食べることにしようと思います」

「すまんな」

「いえ、お兄様が気にするような事は一切有りませんよ。それでは私は少しフォルテちゃんとお話がありますので、失礼しますね」

「おう」


そう言うと、小雪は静かに張り付けた笑みをしながら、自分の部屋へと戻っていった。

部屋に戻る為にも、気分が良くなるまで休んでいようと思い、休んでいる最中にスマホから着信が鳴った。

正直今誰かと話すのも億劫だが、だとしても頼み事をしたのにそのくせ電話に出ないのは最低なので、やる気のない足取りでスマホの近くまで行き、電話を取った。


「はいもしもし」

「おい、阿久津急にこれはなんだよ!」

「あれ?もしかして奏って日本語読めなくなったのか?よかったら英語で送り直そうか?」

「読めるわ!ってそう言う事じゃなくて、お前急にバンドしようって、今度は何に影響されたんだよ。それにお前は今vtuber何だろ?他でそんな事して大丈夫なのか?」

「さぁ?それは知らんけど、それは大丈夫だろ。」

「すまんが全く持って意味がわからないんだが……」

「だから、vtuberとしてバンドを組むんだよ!それなら多分大丈夫だろ」

「うーんそうなのかな?と言うよりそれならvtuberじゃない僕が出たらだめなんじゃないのか?初配信の時も確か後で怒られたんでしょ?」

「あーその事だけど、奏に頼む時に一緒に美咲さん、えーっとうちの社長さんに確認した所、ちゃんと奏に許可がもらえるなら、別にやっていいって、と言うより轟奏の名前を存分に使ってこいって、背中押されたから大丈夫だと思うぞ」

「それは何と言うか、頼もしい社長さんだね。まぁ僕が参加するのは別にいいけど、バンドって確かギターにベース、ドラムとキーボードが必要だったはずだけど。人足りるのか?」

「うちの妹もやらせるつもりだし、他にも頼めばやってくれそうなやつも居るし多分大丈夫だろ」

「へー確か妹って小雪ちゃんだったよね、あの子楽器もできるの?」

「いや、まぁ小雪は俺の妹なだけあって物覚えがいいから、多分すぐに覚えるだろ」

「それは…………いやあの子なら何とかしそうな気がするな。それじゃあもう1人の方は大丈夫なのか?」

「それこそ大丈夫だろ。そいつ周りから歌姫とか呼ばれてるから、音楽には詳しいはずだから出来るだろ多分」

「まぁ、阿久津がそう言うんなら多分大丈夫何だろ。それじゃあそろそろ仕事に行かないと行けないから、色々決まったらまた連絡してね」

「わかった」


通話が切られた。


「よし、これで大丈夫だな。次は」


小雪の部屋へと向かう。扉には配信中と書かれている看板が掛かっていた。

俺はその扉をノックする。


「リリィ今ちょっといいか?」

「はい、大丈夫ですよお兄様」


配信中にも関わらず、リリィは配信そっちのけで扉を開いた。


「今度バンド組もうとしてんだけどリリィもやるか?」

「はい、喜んで!」

「リリィは何楽器とか出来るか?」

「楽器ですか?ギターはお兄様に教えて頂いたので出来ますし、ピアノは習っていたので多分ですが、キーボードもできると思いますよ?」

「じゃあキーボードで頼むわ」

「はい、わかりました。それで他のメンバーは?」

「奏とフォルテちゃんだ」

「奏さんとフォルテちゃんですか?」

「ああ、奏の方はもう了承を得てるから、あとはフォルテちゃんの方だけど、まぁ受けるだろうな」

「そうですかフォルテちゃんでしたか……」

「じゃあそう言う事だからよろしく」

「はい」


よし、これで完璧だな。後はフォルテちゃんだけだが、これは一応あの子の為でもあるし受けてくれるだろ。


「私楽器出来ませんよ?」

「は?」


ーーあとがきーー


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