第2話 食べ物の恨みはらさでおくべきか!?
あたしの名前は
少しばかりの? ドジっ子さを笑われたりな、成績普通、運動神経並、取り立ててまだ何の才能も見つかっていない、ただの通りすがりの女の子。
夢見がちな思考回路が日々頭を巡ってるってだけじゃ、将来何かの役に立つわけでもなさそうだしね。
それでも、
だからといって……この状況はあんまりじゃない?
そりゃー例えば、おとぎ話に出てくるよーなかぼちゃの馬車を夢見たり、チーズをかじるだけだと思ってたねずみが突然
よりにもよって目を覚ましてみたら、関西弁で
こんなことになるんだったとしても、百歩
……でも?ちょっと待って。まだ犯罪の可能性も無きにしもあらず?
そーよ! 最近じゃ、外国の人のそういうドロボーみたいなのだって珍しくないじゃない。居直り強盗の可能性だって。
でも、あの三頭身はどうみたってコスプレってだけじゃ説明出来ない、
とにかく、深呼吸を二つ三つ
あたしはあたし。他の誰でもないあたし。
ゴシゴシと水気をしっかり毛穴の
「落ち着くのよ! 先ずはいつもの通りのあたしらしく!」
ブクブクと泡立った
ショートボブにしておいたお陰でドライヤーに時間を取られることもなく、チョイチョイと一連の身だしなみを完了させた。
ダイニングには、木製のテーブルと
扉を開けても火の気がしないのは、結構な時間が経過している証拠。
ゆとりを持って楽しくご飯は食べましょうっていうのが、うちのママのルールだからここには時計がない。
ましてテレビも置いていない。キッチンと冷蔵庫と
「そーいえば
食べかけのハムエッグと空のお茶碗とお箸と、
あたしは料理なんてしない。
いや、出来ない……。
いーじゃない? 現代には二十四時間、朝食から晩御飯からおやつまで用意してくれる、とーっても奇特な場所があるんだから、飢えることなんてない! そーよ、専業主婦になる予定なんてないったらない。
なんて自分を納得させながら、うんうんと頷きながら同意してくれる声無き声を求めるあたし。
うちのママは大変ね。
あたし達にはパパがいない。生まれた時からいないんだからどーってこともないけれど。
何が
文句の言い様もないけれど。
でも、だからといって何もかも模範的優等生では送れないのがビミョーな年頃の女子高生なのよ!
そうだわ、こんな時にこんな所で誰に向けたか分からない主張を続けてもしょうがない。
取り
……あいつの言いなりになるのは何だか
食べることへの飽く無き探究心と冒険心は、数学の方程式よりよっぽどあたしの人生を豊かにしてくれるもの。
さーてと。
「……無い?」
「いや、待てよ!?」
何だかこの部屋の“
あたしは
……何だか思考がふつーじゃないのは気のせいってことで。
慌てて冷蔵庫の扉を勢いよく引いて
「空っぽ?」
昨日のお買い物はあたしの当番だったから、少なくともお豆腐にたまねぎ、ニンジンにショートケーキに豚肉200グラムに、ジャガイモにモンブランに……有るはずのものがみーんな無くなっていた。
「いや! そんな! まさか!?」
当りたくもない予感は、
「な・ん・に・も・な・い!」
……いや、
いくら姉妹とはいえ、ホドホドの
ここでタイミング良くお
で、何だか
コマ送りよろしくさっきまで動転していた頭の中身を思い切りフラッシュバックさせて、はてな? と首を
あたしの頭の中でいままさに腕を組んで立ち
そこには何だかお米が2つ3つ
「……なーにが
土足であたしの胃袋を踏み荒らしてくれちゃって!
ううんっ! そんなことよりも!
「ちょっとぉ! あたしの朝ご……パンっ!?」
すぱぱぱぱーん!!
……思い切り
おまけにズドーン! って音がしたかどうかはシタタカ後頭部をベッドの
痛い! とかそんなことよりよっぽど恥ずかしいわ!
「
だから! な・ん・で! あたしが怒られなきゃいけないのよ!
頭を
「最初に言っておく」
「?」
「わしは洋菓子よりもあんこの方が好きじゃ。特に粒あんじゃ」
それを今言い放つ権利があなたにあるの? 最初っから最後までそんな
「それよりも! あたしの朝ご飯、ううん! あんなにあった食材まで全部食べちゃってるじゃないの! なによ!? 何なのよ!」
「うむ、豚肉はそのまま食っても旨いもんやな」
生なんか絶対ダメだしっていや違うわ! 調理法なんかどうでも良いってば!
「さてと」
さも、くつろいだ風(ふう)をこれ見よがしに見せつけちゃってくれると、どこから取り出したのか座布団の上にちょこんと座りお茶なんかすすり始めた。
……それだってあたしの湯呑(ゆのみ)じゃないの。
こいこいと
肩で息をしながらも
何だかどーも逆らいきれない何かがあるのよ! うううっ……情けないあたし。
さっぱりなんだか分からないままの侵入者は、コホンと咳払いを軽くついて口を開く。
「わしはタブリスっちゅーもんや。あんたが
ニコッとこちらに笑いかけながらも、何だか絶妙な
……よーな気がする。
って?
「はぁぁ……カ・ミ・サ・ン……?」
「そうや、カミサン」
え? 関西弁の
かみさん? 神さん? って神様?
「またまたぁ……!」
ジト目に込めたちょっと引きの姿勢に疑いのトーンを思い切り込めて否定しかけて。
「まぁな。
自白しやがった
「
カラカラと笑い声を立ててさもこれが当然の
あたしの
「そないに怒らんとよー聞けよ? 大変なのはお前自身のことなんや。いや、それが与える影響のことを考えたらそれだけじゃ済まへんかもしれん。これを見てくれるか」
アラブ系の人……もとい、自分のことを神様だなんて
「何よこれ!?」
何もない空間に、確かに安物の手品じゃ無理そうな
「スクリーン……みたい?」
有機LEDの薄さにはけっこー感動したわ、初めて見た時は。
でも、そんなコトじゃない。宙に浮かんで向こう側が
ありっこない。あたしの常識が、いくら4コママンガ並の小さな辞書からの引用だとしても。
いきなりのSFチックな展開に、壷から現れた魔人がお願いを
ちょっとだけ手を差し出してみるけれど、やっぱりその平面体には
ブンブンと両手でその空間をかき乱してみたけれど、
でも、確かにこの両の
画面を挟んで向こう側のタブリスが目の前の空間をエアギターよろしくエアキーボード風に、そのプクプクとしたちっちゃな手で何かを叩いてる。カチャカチャと
「おっと、こっちのファイルやないな……ほなら行くで?」
瞬時に何かの画像がたくさん並んで、すぐさま目の前が
「あたし……が映ってる?」
DVDとかって映画のチャプターを選択する画面があるじゃない?
たくさんの、いわゆるサムネイルって小さな画像が並んでいくつもその
そんな
1つの小さな動画から2つの線が伸びている場所もあったり。
「え!? 何よこれ!」
ふと目が
それは思いっきり見覚え……じゃないわね、体験したのはあたしだから鮮明に記憶しているあたしの体験。
思いっきり走ってるあたしめがけてダラダラと
後ろでハラハラと、
あっ! すっ転んだわあたし! ちょっとー! そこには
そーよ、これは中学生の時のこと! 大きな口であたしの頭に食らいついた!
あっ! でもあたし、白目を
何でそこであたし、
違うでしょ!? 逃げなきゃ! 攻守入れ替わってあたしのターン!
相手のフサフサした毛に
ピューっと頭から血が吹き出ているのもあたし……。
前半のモノローグ撤回。けっこー普通じゃないあたし……。
「これって……あたしの?」
ニヤニヤ笑いを、面と向かったあたしへ投げ掛けながら見ていた画像を
「過去の記録か? そうやな、でも問題はそれやないで」
信じるとか信じないとか、これが夢の続きじゃないこと位は
どーしたって日常生活の輪から全くもってはみ出したことが起こっている。
だから目の前の“神様”に向き直ると、真剣な
「……簡単に説明してよ?」
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