第4話・クソ親父〔ワ●ル〕の名言……クソ親父の墓に刻んで後世に伝えてやる

 クソ親父がよく口にする三つの言葉。

「バカ野郎!(バカ小僧)」

「(家に居るなら)当たり前じゃないか」

「嫌なら家を出ていけ!」


 今でも思い出すとムカつくクソ親父〔ワタル〕の名言がある。


「バカな人間は奴隷になるしかない」


 おそらく、クソ親父は自分が人より上だと内心自負しているから、口から出た言葉だろう。

 じゃあ、自分がバカだと認めたら奴隷になるコトを受け入れるのか?滑稽だ。

 Aiが発達した現代には、おまえ〔クソ親父〕のような無能な奴隷は不要。


 私はクソ親父と顔を合わせなければならない、十二月の大晦日が嫌いで憂鬱ゆううつになる。

 幸いここ数年は、大晦日には家には居ない。

 以前の、クソ親父の頭の中には「大晦日には家族が家にいるのが当たり前」という考えが定着していたらしい。


 家長は、大晦日の日には何もせずに居間のテーブルの前に座って、酒を飲みながら家の者が準備して運ばれてくる。

 料理を平然と飲み食いするのが当たり前と思っている、時代錯誤の男。


 そんな、クソ親父に昔「バカな人間は奴隷になるしかない」の言葉に怒りを感じていたので、訂正を大晦日に求めた。


 返ってきたクソ親父〔ワタル〕の言葉は詫びとか訂正ではなく。

「バカ野郎、それはだな……」

 私は泣いて、自分の部屋に引きこもった。

 この時、こいつは最低の人間だと気づいた。


 クソ親父の戒名には『畜生道』とか『餓鬼道』とか、そんな言葉を入れてやる。

 クソ親父の葬儀の写真にマジックペンで落書きして、笑い者にしてやる。


 葬儀の花輪は紅白の祝いの花輪で、火葬は骨も残さない火力で。

 骨壺の中にたんを吐いて、タン壺に変えて笑ってやる──可能なら。

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