第15話 別れ

念仏を唱えるお坊さんの声が会場に響き渡る。皆同じように顔を下に向けている。涙を流す人もいれば、茫然と立ちつくす人もいる。私だけが取り残された気分になった。


なぜ、自分はこんなところにいるのかも分からず、見よう見まねでお焼香をすました。遺族に向かってお辞儀をするとき、彼の片割れがいることにようやく気がついたくらいだ。

頭がボーっとする。柾はなぜ死んだのかそればかり葬式中は考えていた。


「来てくれてありがとな。柾も喜んでるとおもう。向こうで」


「柾はずっとあんたのためを思って行動してたんだよ」


「なぜ、死んだの。なぜ誰も何も教えてくれなかったの」


「隠し通したかったらしい。あんただけには知られたくなったみたいなんだ」


「白血病。それが柾の死んだ理由」


「はっ・けつ・びょう?何それ。どういうこと」


「この病気今では、医療も進んで治る病気にはなってきてるらしい。でも柾は骨髄移植しか手がなかった。でもドナーが見つからなかった。薬で病気の進行を抑えることしかできなかったんだ」



「病気なんて嘘よ。元気だったじゃない。ずっと。そんな素振り一度も見せたことなかった」



「薬で誤魔化していたんだよ。愛の前では何でもない顔をしてたいんだとかカッコつけてたから」


私はまともに目の前の柾の分身の話を聞くことができない。

また私は走り出す。柾に突然別れを切り出されたときみたいに、無我夢中で走る。


気がつくと、学校の野球場にいた。

なんだかそこで柾が待っている気がして雨が降っていることもおかまいなしに、

ずかずかとローファーで入っていく。

でも、そこには誰もいない。うわーんと子どもみたいに泣いた。雨音がそっと隠してくれていると感じながら、ひたすら泣きじゃくった。



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