第14話 彼の本音

俺は愛のことを心から愛していた。高校生で愛してるなんてふざけてると思われるかもしれないが、好きという言葉で片づけるのは安すぎる。本気でそう思っていた。

彼女のことが気になり始めたのは、高校に入学したばかりの頃。俺は廊下で仲良くなった沢田とプロレスごっこをしていた時だった。ちょっと、あなたたち危ないでしょ。けがしたらどうするのと注意されたのだ。男子からはまたいつものことかと呆れられ、女子からは男子がまたくだらないことを冷ややかな目で見られていた。初めて無視しなかったのが、彼女だった。真正面から向き合ってきた彼女のことを気にせずにはいられなかった。第一印象は最悪だったが、なんとかクラスをつきとめ話をするように努めた。あんたまた来たの何度もしつこいわよと言われたが、野球の試合を見に来るよう誘った。一度目はあっさり無理、その日は美沙と遊ぶのと断られたが、2度目は予定はないし、仕方ないわねと来てくれることになった。よし、ここでいいところを見せようと意気込んだ。もう2年生の春を迎えていたが、焦りはなかった。

始めからじっくり時間をかけて口説くつもりでいた。彼女は俺には高嶺の花だと何度も沢田にからかわれていたが、野球の試合を見に来てくれることになったと報告したときは、お前やったな、ここまできたなら頑張れよと激励してくれた。試合当日、俺はホームランこそ打てなかったが、1点勝ち取ることができた。観客席に目を向けると、彼女ははじけるような笑顔でお疲れ様と口パクで言っているのが見えた。やっぱりこの子がいいと改めて思い、付き合うことになったのだ。やっとのことで付き合えた俺は、時間の許し限り彼女と一緒に過ごした。部活で忙しい俺でもいいと彼女は言ってくれた。毎日部活が終わるまで待ってくれたし、部活で汚れた服を着ている俺にも嫌な顔ひとつせずに受け入れてくれた。これほど性格の良い子なんていない、優しい子なんていないと実感するばかりだった。しかしそんな幸せな日常はあいつのせいで壊されてしまった。







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