第5話 友人H
彼女は私が初めて親友だと思えた子だった。出会ったのは中学に上がったばかりの頃だ。私は眼鏡に、おさげのいわゆる暗くて地味な子だった。ヒカリという妙にオシャレな名前のせいでいじめられたこともあった。そんな時、彼女が助けてくれたのだ。
「あなたたち、みっともないと思わないの?この子なにもしていないじゃない、どうして無視したりするのよ」
「はぁ~?あんたこそなんでそいつをかばうわけ?こいつって何いっても全部やるくせに、とろいんだもん。仕方なく友達ごっこに付き合ってあげたっていうのに、ろくなものもくれないんだから」
確かにそうだ。私は運動神経は悪いし、いつもミスばかりして彼女たちを怒らせる。もうちょっと友達でいたかったなーとぼんやりと考えていると、頬を殴る音がした。
「人のことを何だと思ってるの?同じ人間でしょ、友達ごっこってなによ!恥を知りなさい」
覚えておきなさいといじめっ子たちはその場を立ち去っていた。初めて私を助けてくれた人がいた。大丈夫?と優しく手を差し伸べてくれる女神みたいな子だと思った。でも、あなたもあれくらいはやり返さなくちゃ、やっていけないよと厳しい言葉も同時に掛けられたが、それでも優しい子だと思った。私のことを相手にするなんて変わった子だなと思ったけれど、そこから一緒にいるようになった。なんだか彼女の雰囲気が気に入ったし、何より私を助けてくれたのだから仲良くせずにはいられなかった。彼女は私の外見にもアドバイスをくれた。ヒカリは美人なんだから前髪きって、髪でも巻けば舐められなくなるよ、モテちゃうかもねなんて、はにかみながらいうものだからすぐに実行した。
朝学校に来るとみんなの態度が変わった。男子は色めき立ち、女子は急に私を慕うようなった。世界が変わって見え、私は学校に行くのが楽しくなった。全部愛のおかげだというと、彼女はまた、はにかみながらあんたが頑張ったんだよと言ってくれた。どこまでも心優しい子だった。だから彼女が高校にあがって、いじめられていることに気づけなかった。あの太陽のような眩しい笑顔は偽りだったことを見抜けなかった自分に腹が立った。
愛、ごめんね。でもなんで教えてくれなかったの。
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