第46話 修行2
石の妖怪仙人は、2人となった。2人で一つなのかもしれない。
「私達は、方弼と方相といいます。さぞかし名のある仙人様とお見受けしますが、どのようなご用件で?」
「うむ。一般人のヘーキチと言う」
「ヘーキチさんは、一般人ではないですね~。冒険者を名乗った方が良くないっすか?」
そういえばそうだったな。
「失礼した。殷の太師に認められた冒険者のヘーキチだ」
冒険者カードを見せる。
「冒険者ですか……。この世界では、数少ない職業ですね」
ほう? 世界の情報を得ているのか。ただ、霊穴の上で年月を消費している訳ではなさそうだ。
「それでなのだが、霊穴を譲って貰えないだろうか? 釣りのついでに修行がしたいのだ」
「それはちょっと……。もう、千年近くここで、修行を積んでいるので……。申し訳ないのですが、譲れないのです。上司の指示でもありますので」
う~む。困ったな。
強制排除はしたくない。
「目的が変わってませんか? 『杏黄旗』の性能評価だったじゃないっすか~」
ああ、そうだった。
「では、私を攻撃して貰えないだろうか? 報酬は弾むぞ。なにがいい?」
「「はい?」」
石の投擲が来る。
私は避けずに全て受ける。だが、『杏黄旗』により、私にダメージはない。
方弼と方相が分かれた。
狙撃による"殺し間"だな。二方向からの攻撃なので、意識を割くことになる……。
散弾のような弾幕だ。そして、私に石が触れると粉々になる威力。
だが……、私にダメージはない。
河原の石が尽きたのか、方相が巨大な岩を持ち上げて、突進して来た。
『杏黄旗』を使用していると言っても、少し怖いな。
私は、左腕でガードした。
――ドカン
大岩が、私と衝突した。そして……、割れる。
「ギブアップです。私達の最強の攻撃でもノーダメージなんですから……」
方弼が、両手を上げて降参を申し出た。
足元を見ると、砂の山だった。
「ふむ。物理ダメージには強いことが分かった。そうなると、炎耐性が気になるな。冷気耐性でもいい。それと毒耐性……。呪い耐性……」
「もうちょっと北に行くと、活火山がありますよ? マグマで試してみては?」
ほう? 方相がいい案を出してくれた。
活火山か。修行場としたことはなかったな。厳しい自然環境……、興味あるな。
飲料水を持って行けば、修行も可能だろう。
「俺っちのこと忘れていません?」
う~ん。大丈夫だと思う。
「いい修行となった。感謝する。そして、行ってみるとしよう」
「見逃してくれるなら、こちらとしても御の字です。それではこれで、私達はまた霊穴の上で眠りにつくので」
う~む。霊穴の上にいるだけでは、そんなに修行にならんぞ。
「なんだったら、稽古をつけてやろうか? 報酬も望んで来ないのだし」
方弼と方相が真っ青な顔をする。
「「いえいえ、私達は、強さを求めていないので……」」
変わった妖怪仙人もいるのだな。
争いを好まないのか。そして、防御一辺倒なのかもしれない。
「分かった。礼を言う。困ったことがあったら連絡をくれ。必ず力になろう」
「……まあ、そのうちまた会うことになるでしょう。その時は、見逃してください」
ふむ? 命数か?
彼等にも天界から指示が、来ているのかもしれない。
「分かった。覚えておこう。岩の兄弟。敵対する場合は……、攻撃を一日だけ待ってやる。その間に逃げろ」
「「……」」
「……分かっていませんね~」
こうして、岩の妖怪仙人と別れた。
◇
その後、北に移動したのだが、活火山などなかった。平地とは言わないが、小さな山があるだけだ。丘だな。
「活火山は……、何処だ?」
「まだ、噴火はしてませんね~。百年後っすな。まあ、多少の溶岩は、溜まっていますんで、実験にはなるっす。そうっすな~、〈地行術〉で沈んで行けば、マグマ溜まりに行けまっせ?」
大鮫魚の指し示す方向に向かう。
そこには、少ないながら、煙が立ち昇る池があった。
この下に少しマグマがあるのかもしれない。
「これか……。うむ、助かったぞ、大鮫魚」
「そんで、どうすんすか? 〈地行術〉っすか~?」
「地上に引き寄せるに、決まっているだろう」
「はえ!?」
私は、打神鞭を振った。
衝撃波で、大地が避ける。
「行けるな……」
撃つ、撃つ、撃つ!
地響が起こり始める。そして……、地震が来た。
「なにすっとね!?」
大鮫魚の抗議を打ち消すかのように、火柱が上がった。
「……結構マグマが溜まっていたのだな。割れ目噴火か」
「速よ、逃げましょうよ~!!」
なにを言っているのか。
上空からは、マグマの雨。そして、目の前にはマグマのカーテン。
これ以上ない環境だ。
「うむ、試運転には最高だな」
私は、マグマのカーテンに飛び込んだ。
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