第43話 尻ぬぐい1

「貴様らが、異世界召喚者か?」


 なんか、鉄筋コンクリートのアパートを建てて、蚊取り線香を炊いているんだけど?

 それと、鱗があったり、翼を持っていたりして、妖怪と見分けがつかない。


「……申公豹の言っていた、ヘーキチだな?」


 異世界召喚者が、なにかを向けて来た。私は、それを前世の知識で知っている。


「先端が、筒……。銃か」


 異世界召喚者が、汚い笑みを浮かべて来た。

 余程の自信があるみたいだ。


 ――パン


 大きな音が鳴った。

 そして、それが迫っていた。私には見えている。

 私の反射神経なら躱すどころか、摘まむのも問題ない。とりあえず、摘まんでみる。


「む? タングステン鋼? 随分と進んだ技術なのだな」


 摘まんでいるが、もの凄く回転していて、指先を少し火傷してしまった。

 実際に弾を摘まむと、こんなもんか。


「……ライフル銃か。せめて、火縄銃にしろ! 世界観が滅茶苦茶だぞ!」


「なっ!? なっ!?」


 異世界召喚者は驚いている。


 ――パラパラパラパラ……


 今度は、複数人が撃ち出して来た。しかも、連続でだ。

 瞬時に躱す。当たると痛いかもしれない。

 しかし、五月蠅いな。音をなんとかしろ。


 ――ガキン


「ちくしょう! ジャムりやがった!!」


 む? 整備不具合か?

 なんか、一人だけガチャガチャやっている。

 それと、他の奴は、弾切れかな? そいつらも、ガチャガチャやっている。

 その隙を見逃す理由もない。私は、背後に回り込んで、延髄にチョップを喰らわせた。首トンだ。古いかな?

 おすだと思う奴には、股間を蹴り上げる。


 ――バタン、バタン、バタン……


 異世界召喚者達が倒れた。


「なんだったのだ、まったく」


 私の元いた場所を見る。

 背後の樹が傷づいていた。


「まったく、迷惑な武器を使う……。環境破壊だろうに」


 これは、ダメな異世界召喚者だな。下界では、住民に迷惑をかけるタイプだ。仙人界か天界に引き取って貰おう。

 私は、残りの異世界召喚者にガンを飛ばした。

 だが、異世界召喚者達の戦意は折れない。


「逸材を集めたのだな」


 そして、また、弾を放って来た。


 ――パラパラパラパラ……


 あえて受ける。そんな下界の武器で私の皮膚を傷つけることはできない。それを思い知らせてやる。

 うるさい音が止まった。


「なっ? なっ? 銃が効かない?」


 異世界召喚者達は、驚愕の表情だ。

 下界の武器で、私を傷つけられると思っていたのか? 申公豹は、なにを教えていたんだ?


「むっ?」


 壁面雷へきめんらいみたいなのを投げて来た。それが、私の足元で爆発する。


 ――ドカン


「手榴弾か……。土煙が酷いな……。服が汚れてしまった」


 服に着いた、埃を払う。


「ぐっ。なら、これでどうだ!」


 大筒を、肩に担いで来た。

 筒の大きさは、頭がすっぽり入るくらい大きい。バズーカ砲が近いかな?

 そして、大轟音が鳴り響いた。鳥達が一斉に飛び立つ。


 ――ドパン


 私は、撃ち出された弾を、右手で受けた。金属の塊みたいだったが、押し潰されて平らになっている。

 それが、地面に落ちた。原型を留めていないな。

 それを見た異世界召喚者達が、固まった。


「バズーカ砲を人に向けるな! それは、対戦車ロケット弾発射器だぞ! それと、もう終わりでいいか?」


 異世界召喚者達は、表情が凍っている。思考が追い付いていないみたいだ。

 これは、未来の武器だな。広まると、下界に影響が出そうだ。


「排除させて貰う!」


「「「ぎゃ~!」」」





 異世界召喚者達を縛り上げて、話を聞くことにした。


「技術者と錬金術師? それと、科学者もいるのか?」


「はい……。古代に飛ばされて、途方に暮れていたところを、申公豹さんに助けて貰い……」


 あの野郎……。天界が見つける前に攫ったんだな。

 後で、折檻してやろう。


「いろんな時代の、いろんな世界の人材が集まったんですが、最終的に"火薬"を扱うことに纏まりました。もう少ししたら、戦車や戦闘機も作って、国を興そうって」


 う~ん。それぞれの種族の特徴を生かそうよ。

 軍隊となると、画一的なスペックを求められるのだぞ?

 翼を持ち飛べそうな者もいるんだし。

 手の形も、脚の形も異なる。

 それに、魔法を使える者もいた。シルフィーと同じ"えるふ"と言う妖怪だな。


「さて、どうするか……」


 ここで、気配を殺して近づいて来る者がいた。

 その者が、飛行を止めて、地上に落りる。


「シルフィーの時以来だな。天界の使者か……。彼等を頼めるか?」


「話が早くて助かります。彼等には、元の世界に帰って貰います」


 うん。それがいいだろう。

 この時代に、彼等は不要だ。帰れるなら、返した方がいい。

 それと……。


「腐敗している、妖怪はどうする? あれをどうにかしないと来た意味がないんだが」


「ヘーキチさんは、すぐにここから離れてください。この辺り一帯を吹き飛ばします。焼き尽くすというのが、正しい表現でしょうか」


「もしかして、シルフィーか?」


「はは。今や、戦闘力では、天界随一ですよ。天界でも、彼女の扱いに困っています」


 私は、〈光遁〉の術でその場を後にした。

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