第40話 復興2

 食糧事情を改善して行く。

 途中で、悪代官と出会うが、捕縛して財産を差し押さえる。金銀財宝は見逃して、食料を放出させる。

 軍隊を出して来た商人もいるが、誰を相手にしているのか分かっているのだろうか? 蹴散らしてやった。そして、軍の兵糧を市民に配る。まあ、商人が隠し持っていた食料なのだ。良しとしよう。


「ここまで混乱状態カオスだと、太師でもどうしようもないな。まるで、世紀末だ」


「いや……。世紀末っすよ?」


 ふう……。大鮫魚には、"世紀末"の意味が伝わらないらしい。戦争で全てが壊れた後の世界という意味なんだが。

 そんな時だった。


「むっ!?」


 私の〈索敵〉に引っかかった。


「仙人か? 私に向かって来ている?」



 今は、馬で来た仙人と対峙している。


「貴様は、金鰲島の道士か? なにをしている?」


「まず、道士ではない。一般人だ。それと、民に食料を分け与えている。富の再分配だな」


 仙人がため息を吐いた。


「我は、殷王朝の王妃様である蘇妲己様の部下、殷破敗いんぱばいだ。ちょっと話そうか」


 む? なんだ?

 そして、その名前はなんだ? 負けフラグ?


 人里離れた場所で、二人きりとなる。

 殷破敗は、釣り竿を取り出した。


「話は聞いている。釣りができるんだろう? 釣りながら話そうか」


 ほう? この私に釣り勝負か?

 いい度胸だ。


「……話し合いでっせ?」





 ――ピチャン


「ふ~。実を言うとだな、俺達もこんなことはしたくないんだ。だけど、上からの命令でな~」


「こんなこと? 政治の混乱のことか? 戦争のことか?」


「……東の国で起きていること全部だよ」


 中間管理職は、辛い立場なのだな。


「……誰を倒せば、この世は良くなるのだ?」


「あ~。やられ役は、紂王ちゅうおう様って決まっているんだ。それを倒して、新しい王朝を築く奴もな……。水面下では、もう話し合いが終わっているんだ」


「その者に付けば、いいじゃないか? 勝ち馬に乗れるんだろう?」


「あ~。我もやられ役なんだよ。次の世は見れないのが決まっている」


 訳が分からん。


「命数に従って、死ぬのか?」


「まあ、そうなるかな。我も次の世を見たいんだけどな~。でも次の世では、生きて行ける場所がないんだそうだ。ならば、安定した場所を望みたい」


 う~む。天界に毒されているな。


「諦めるな。まだ、未開の地などたくさんある!」


「ああ……。いいんだよ。自分のことだ、自分で決めさせてくれ。それでだな……。なるべく死者を少なくしたいとも思っている」


 ほう。まともな奴もいるんだな。


「天界の意思を、私に伝えに来たということか?」


「我みたいな下っ端に、天界の使者なんて来ないさ。王妃様だよ。食料を増産している奴がいるから、止めて来いって言われてさ。そんで来た訳だ」


 う~む。王妃か……。何処かで聞いたな……。


「天界が送り込んだ妖怪仙人でっせ? 忘れてまっか?」


 ああ、そうだったな。そんな奴の話も聞いた気がしないでもない。


「なんだったら、その王妃と紂王を倒して来ようか?」


「その後は? ヘーキチと言ったな。君が王になって政治を行うのか?」


「冗談ではない。政治になど興味ないな」


 殷破敗が、ため息を吐いた。


「ならば、新しい王を立ててくれ」


 こいつは……、私に忠告しに来たのか?


「自分の使命じゃないっすか?」


「ふぅ~」


 私はため息を吐いた。


「ここで、食糧事情を改善しても大局には影響がないのだな。目の前の人を救っても、見えない人達が倒れていると言いたい訳だ……」


「まあ、そうなる。理解してくれて助かるよ」


「だが、断る! 私の手は二本しかないのだ。救える人はこれだけだ。仙人界には手が八本ある奴もいるんだぞ! 救いたい人達がいるのなら、私ではなく仙人に頼れ!」


 私は立ちあがって、両手を広げた。


「東の国の全てを救えそうな大きさだよな……」


「世界一長い、両手っすな~。地球を包み込めるんじゃないっすか?」


「まあいい、言いたいことは言わせて貰った。伝わっているといいんだがな。……結果を待つよ」


 殷破敗は、訳の分からないことを言って去って行った。


「何だったのか」


「ねえ、ヘーキチさん。そろそろ西の国に行きましょうよ~」


 少し考える。

 まだ、朝歌は食糧事情が安定しているとは言えない。

 太師も頑張っているのだ。


「王妃だか紂王だか知らんが、そいつらに殺される民を見捨てることはできない。もう少し頑張ってみる」


「頑固っすな~」

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