第38話 今後の方針
「誰だ? 見たところ、仙人のようだが?」
「お初にお目にかかります。崑崙山の道士、
今度は、話せる奴が来たようだ。
哪吒は、説得を受けて帰って行った。『乾坤圏』を返してやったのが大きかったな。
なんだったのだ、まったく。
地形を変えただけとなってしまった。
まあ、気晴らしにはなったかな。今度、崑崙山に行ったら、スパーリングパートナーにしてやろう。多少ボコっても壊れなさそうだし、いい相手が見つかった。
「それで、今頃崑崙山がなに用だ? もう、私はお払い箱だったろう?」
「えーとですね。ヘーキチさんの代わりに
あいつか……。弟弟子だ。
仲が悪かったので、滅多に会わなかったが。
「天界も絡んでいるのだ。申公豹を導けば、いいのではないか?」
「天界も申公豹は、見捨てました。やはり、ヘーキチさんでないとという結論になり……。喜ばせるために、哪吒を遣わしました」
ふ~。やれやれだぜ。
私は、もう仙人界とは縁がないというのに。
「とにかく、縁を切ったのだ。従う理由はない! 勝手になんとか計画を進めろと、あのクソ師匠に伝えてくれ!」
「それでは、
「……詳細を教えてくれ」
「変わり身が、早いっすな~」
◇
楊戩の話を聞くと、天界が妖怪仙人を送り込んで、政治を滅茶苦茶にしたらしい。
そして西の西岐なる国に、現王制を倒させるのだとか。
自作自演もいいとこだ。
辟易してしまう。
申公豹は、嫌がったらしく、西岐も政治が混乱しているのだとか。あいつは性格が悪い、わざとだな。
まともな国が少なくなり、治安の悪化か。
天界と仙人界は、なにをしているんだか。
「それでですね。次の王になる者と、その父親を導いて貰いたのです」
「シルフィーや、ミルキーみたいに鍛えればいいのだろう? いいだろう、とことんまで追い込んでやろう」
楊戩の表情が曇る。
間違ったことを言ったのか?
「……え~と。導いて欲しいのです」
「下界でも、屈指の実力者にすればいいのだろう? 実力はあるんだろうな? まあ、私であれば素質がなくても鍛え上げてみせるが」
「……認識がズレていますね。王への道を示して頂きたいのですが?」
「王とは、虎を狩り続けなければならないのだぞ?」
楊戩が、両手で顔を覆ってしまった。
話が進まなかったので、大鮫魚に詳細を聞くことにした。
まず、王になる者の父親だそうだ。
「七年間の幽閉の後、解放されたのか……」
「はい、その後、西岐に帰っています。まず、会ってください。そこがスタートです」
「東の国は、朝歌といったか? 滅ぼして来ようか? そのどさくさに紛れて、建国するとか」
……楊戩。その変顔を止めよう。
「え~と。殷の太師も頑張っていますよ」
あ~。思い出した。冒険者カードに印を押して貰った恩がある。
う~む。彼がいるのか。
「滅ぼしたくないな~。つうか、戦争は嫌だな~。いまの国家体制でいいんじゃないのか~」
「本音駄々洩れっすね……」
◇
楊戩は帰って行った。
とりあえず、必要な情報は手に入った。
「さて、どうするか……」
「計画を聞いたのだし、行くしかないんじゃないっすか? 案内しまっせ」
「それよりも、申公豹だ。奴が、なにをしたかだな~」
あの、できの悪い弟弟子が、なにをしたかで変わって来る。
「それと~、シルフィーさんが天界で暴れ回って、幽閉されていまっせ?」
シルフィーの件は、置いておこう。
最悪、下界を破壊し尽くすかもしれない。
ラスボスとなるなら、最後にミルキーと合流してボコってやろう。
王道ストーリーだな。
「うん、幽閉しておいて貰おう。天界もいい処置を思いついたな。これで、天界の邪魔は入らない」
「はあ~。助けに行かないんすね~。また未来が変わりそうだ~」
私は、天界に行ったことがないのだが? どうやって助けるのだ? それが、命数だった?
大鮫魚は、何か知っているのだな。
まあ、聞かない方がいいだろう。
「とりあえず、朝歌に行ってみるか……。政治を乱しているという妖怪仙人に会ってみる。場合により、倒してしまおう。それで終わりだ」
「……本当に、分かっていませんね~。話を聞きましょうよ~」
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