第38話 今後の方針

「誰だ? 見たところ、仙人のようだが?」


「お初にお目にかかります。崑崙山の道士、楊戩ようせんといいます」


 今度は、話せる奴が来たようだ。

 哪吒は、説得を受けて帰って行った。『乾坤圏』を返してやったのが大きかったな。

 なんだったのだ、まったく。

 地形を変えただけとなってしまった。

 まあ、気晴らしにはなったかな。今度、崑崙山に行ったら、スパーリングパートナーにしてやろう。多少ボコっても壊れなさそうだし、いい相手が見つかった。


「それで、今頃崑崙山がなに用だ? もう、私はお払い箱だったろう?」


「えーとですね。ヘーキチさんの代わりに申公豹しんこうひょうを立てたのですが、滅茶苦茶しまして……。やっぱり、戻って来て欲しいそうです」


 あいつか……。弟弟子だ。

 仲が悪かったので、滅多に会わなかったが。


「天界も絡んでいるのだ。申公豹を導けば、いいのではないか?」


「天界も申公豹は、見捨てました。やはり、ヘーキチさんでないとという結論になり……。喜ばせるために、哪吒を遣わしました」


 ふ~。やれやれだぜ。

 私は、もう仙人界とは縁がないというのに。


「とにかく、縁を切ったのだ。従う理由はない! 勝手になんとか計画を進めろと、あのクソ師匠に伝えてくれ!」


「それでは、宝貝パオペイを返してください。それは、崑崙山のモノです」


「……詳細を教えてくれ」


「変わり身が、早いっすな~」





 楊戩の話を聞くと、天界が妖怪仙人を送り込んで、政治を滅茶苦茶にしたらしい。

 そして西の西岐なる国に、現王制を倒させるのだとか。

 自作自演もいいとこだ。

 辟易してしまう。

 申公豹は、嫌がったらしく、西岐も政治が混乱しているのだとか。あいつは性格が悪い、わざとだな。

 まともな国が少なくなり、治安の悪化か。

 天界と仙人界は、なにをしているんだか。


「それでですね。次の王になる者と、その父親を導いて貰いたのです」


「シルフィーや、ミルキーみたいに鍛えればいいのだろう? いいだろう、とことんまで追い込んでやろう」


 楊戩の表情が曇る。

 間違ったことを言ったのか?


「……え~と。導いて欲しいのです」


「下界でも、屈指の実力者にすればいいのだろう? 実力はあるんだろうな? まあ、私であれば素質がなくても鍛え上げてみせるが」


「……認識がズレていますね。王への道を示して頂きたいのですが?」


「王とは、虎を狩り続けなければならないのだぞ?」


 楊戩が、両手で顔を覆ってしまった。



 話が進まなかったので、大鮫魚に詳細を聞くことにした。

 まず、王になる者の父親だそうだ。


「七年間の幽閉の後、解放されたのか……」


「はい、その後、西岐に帰っています。まず、会ってください。そこがスタートです」


「東の国は、朝歌といったか? 滅ぼして来ようか? そのどさくさに紛れて、建国するとか」


 ……楊戩。その変顔を止めよう。


「え~と。殷の太師も頑張っていますよ」


 あ~。思い出した。冒険者カードに印を押して貰った恩がある。

 う~む。彼がいるのか。


「滅ぼしたくないな~。つうか、戦争は嫌だな~。いまの国家体制でいいんじゃないのか~」


「本音駄々洩れっすね……」





 楊戩は帰って行った。

 とりあえず、必要な情報は手に入った。


「さて、どうするか……」


「計画を聞いたのだし、行くしかないんじゃないっすか? 案内しまっせ」


「それよりも、申公豹だ。奴が、なにをしたかだな~」


 あの、できの悪い弟弟子が、なにをしたかで変わって来る。


「それと~、シルフィーさんが天界で暴れ回って、幽閉されていまっせ?」


 シルフィーの件は、置いておこう。

 最悪、下界を破壊し尽くすかもしれない。

 ラスボスとなるなら、最後にミルキーと合流してボコってやろう。

 王道ストーリーだな。


「うん、幽閉しておいて貰おう。天界もいい処置を思いついたな。これで、天界の邪魔は入らない」


「はあ~。助けに行かないんすね~。また未来が変わりそうだ~」


 私は、天界に行ったことがないのだが? どうやって助けるのだ? それが、命数だった?


 大鮫魚は、何か知っているのだな。

 まあ、聞かない方がいいだろう。


「とりあえず、朝歌に行ってみるか……。政治を乱しているという妖怪仙人に会ってみる。場合により、倒してしまおう。それで終わりだ」


「……本当に、分かっていませんね~。話を聞きましょうよ~」

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