第32話 ミルキー3
「がるる~~~~~~! ガルル~~~~!」
「どうどう……」
ミルキーは、順調に成長していた。
本性を現して来たのだ。
猫型の獣人だとは思ったけど、虎か豹かライオンか……。良く分らないが、肉食系だな。
得物に襲いかかると、爪で肉と骨を切り裂き、牙で動脈を断っている。
「ふむ……。本性と言うか、原型が見えて来たな」
そこに、幼かった少女の姿はなかった。
そこにいるのは、血に飢えた
「次……、次ぃ~!」
「どうどう」
「どうすんすか、これ? 戻れんすか?」
衝動を抑えられないみたいだ。
頭が良く、書記官だったそうだが、今は本能で動いている。
「知性と本能の融合……。悪くないかもしれない」
私は、ミルキーの成長した姿が見えた気がした。
◇
「すいませんでしたニャ……。なんか、大事なモノが切れた感覚がして……。目の前が、真っ赤でしたニャ」
「問題ない。それよりも素晴らしい動きだったぞ。一時的に理性を失ったのかもしれないが、長い人生なのだ。時にはそんな日もあるさ」
「こう……、何度も生命の危機に陥って、死の入り口を除いたら、その向こう側からの視線と合って……」
「ほう? 面白い体験だったな。深淵を覗いたのか?」
「深淵? あれは……、なんだったのですかニャ……」
素晴らしい。追い込んでみるものだな。
たった数日でここまで辿り着くとは……。怖いほどの才能だ。
「真理とも、根源とも呼ばれている。あるいは、摂理……か。まあ、言ってみれば、世界だな。そして、自分自身でもある」
「分からないのニャ……」
「怪物を倒す時は、自らも怪物にならなければならないのだ。自分の中に眠っていた才能の一端が、目覚めたと思えばいい」
「怪物に……なる……」
だが、制御できないのでは意味がいない。怪物になった自分を制御して、始めて目覚めたといえる。
「明日からは、変身しながら知性を保つ訓練を行うか」
「変身?」
そうか、ミルキーは自分の姿を分かっていないのだな。
前進の毛が黄金色に輝き、爪と牙は、オリハルコンの様だった。
そして、オーラを放っていた。霊力や魔力とは違う。言うなれば、生命エネルギーの放出だな。
スーパーサ〇ヤ人そのままだったぞ。いや、彼等は猿の獣人だったか。あれ? 宇宙人だったか……? まあいい、近しいとだけ言っておこう。
「ふっ……。明日からが楽しみだな」
「……」
ミルキーは、自分が狩った熊鍋を食べ始めた。
◇
「がるる~~~~~~! ガルル~~~~!」
「どうどう……」
数日が過ぎたが、ミルキーは今だ自分の力を制御できないでいた。
だが、変身の条件は分かった。
ミルキーが、生命の危機を感じ取ると、自在に変身できるようになっていたのだ。
その相手の息の根を止めると、とりあえず戻れるのも確認済み。
「はっ!? あれニャ? はうあ!?」
自分で狩った、野犬を見て驚いている。まあ、妖怪であり巨大な犬なのだが。
騎獣にできそうなほど立派な犬だったな。
「ヘーキチさん。そろそろ、ミルキーさんが危ないでっせ?」
「なにがだ? 後少しじゃないか」
「眼を見なはれ。……戻れなくなりまっせ? このまんまじゃ、野獣化した妖怪仙人一直線っすな」
う~ん。そうなのか? それは困るな。
「なんか……、深淵の先にいるのは、ワタシだった気がしますニャ。あれが、ワタシの真の姿ニャのかニャ……」
「それは、気のせいだ」
う~ん。知性と本能の融合ってどうやるんだ?
私は、幼少期になにも考えずに通ってしまった道だった。
困ったな、教え方が分からない。
◇
「右手だけの変身……ニャ!」
結局は、大鮫魚が知っていた。そう言えば、大鮫魚は
そうなると、始めから教えろと言いたい。
「いい感じでっぜ、ミルキーさん。まずは、四肢からっすよ。首から上は止めときまひょ」
「ありがとうなのニャ。大鮫魚さん。制御できているのニャ!」
ミルキーが変身の練習をしている。
そして、たまに会う妖怪や精霊などを片っ端から狩っている。
血を見て、嬉しそうに微笑んでいるんだが……。
「なんか、好戦的になってないか? 精神に影響が出ていそうだな。肉体の変化が、精神に影響を及ぼしている? ありえるのか?」
「あの程度で良かったと思いましょうよ~」
あの程度……か。
妖怪を見かけると、問答無用で襲いかかっているのだが……。
狩りを行っている時の怖い笑顔が、印象的だ。
そこにはもう、無気力に村で生活していた少女の姿はなかった。
獰猛な
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