第26話 復讐のシルフィー1
「地形を変えるという、レベルじゃないだろう! クレーターを作ってどうすんだ!? 消し飛んでいるぞ!」
避ける、避ける、避ける。
私がいた場所が、消滅している。それにしても、遊ばれているようだ。
最大出力で、範囲一帯を消し炭にされたら、私とて無傷とはいかない。
「どう? 少しは反省したかしら?」
上空から、シルフィーが声をかけて来た。
そういえば、飛べるのか……。天女だもんな。
立体機動装置もどきの私の動きなど、児戯に等しいのだろう。
遊ばれているのが分かる。
「うむ……。すまなかった」
「……」
今までで一番威力の高い攻撃が来た。山一つ消滅しているぞ?
それと、謝罪は受け入れないらしい。
私は、辛うじて躱した。だが、山体崩壊が起きている。凄まじい以外の言葉が出ない。まずい、一面平地だ。ワイヤーを引っかける立体物が……、必要なかった。ワイヤーアクションを行っていた訳じゃないんだ。
そうじゃない、身を隠す場所がないのだ。一面の平地で、全くない!
上空のシルフィーの視線が合う。そんな、憎悪にまみれた視線を送って来なくても……。目から焔が出ているんだけど……。
なんかしたっけ……。
今のシルフィーは、仙人の中でも上位の実力者かもしれないな。
ここで、私の〈索敵〉になにかが引っ掛かった。天界の使者の一団ようだ。
そして、天界の使者が、シルフィーを止めに入った。
流石に下界で、秘宝をぶっ放なし、地形を変えるのは不味いだろう。
「シルフィー殿、ここまでで。妖怪が、大量に押し寄せていますよ。留飲も多少は下がったでしょう?」
「ちっ……。またね、ヘーキチ。つまらない死に方をしないでね……」
憎悪の目で、睨み付けて来る、シルフィー。
天界でなにがあったというのか……。
◇
シルフィーが、帰って行った。
私は、尻もちをついた。自分の通って来た道を見る。
まるで、爆撃機の通り過ぎた跡だな……。
「ふぅ~。しかし、天界でなにがあったというのか……。あんなに危ない
「だ~から、女の執念を甘く見過ぎでっせ? それと、仙女の香りを嗅ぎ付けた妖怪の集団はどうすんすか? 囲まれてまっせ?」
「ふぅ~。話し合いを持とうか……。まあ、シルフィーは、去ったのだし、私には関係ないだろう? それに、今は無用な戦いを避けたい。逃げてもいいかもな」
そう思ったら、妖怪仙人が一匹来た。
「我は、
「うむ……。天女を怒らせてしまったみたいでな。攻撃されていたのだ」
「周囲を見ろ! 地形が変わってんじゃねぇか。後世に影響が出ちまうだろうが! それと、仙女は何処だ? 喰わせろ!」
「うむ……。済まなかった。なにぶん、一方的に攻撃を仕掛けられてな。それと、仙女は帰ったぞ?」
「あ~、ヘーキチさん。妖怪はですね、仙女を食べると階位が上がるんでやんす。その~、シルフィーさんは、ヘーキチさんに匂いを付けて行きましたね」
なんだと~う?
それでは、私が襲われるではないか。
シルフィーめ、余計な事を。
「お前……。下界に要らない」
黄風大王がそう言うと、風を起こした。砂が混じっている。
「ぐっ!?」
まず、眼を開けていられない。そして、呼吸をすると、口の中が砂で気持ち悪くなる。最悪、肺を痛めそうだ。
しょうがない。
「ふん!」
私は、打神鞭を振るった。
「なに~~~~~~!?」
打神鞭が、砂を巻き上げる。そうか……、この鞭には風を操る能力もあるのだな。風の操作権を無理やり奪い取る。
その一瞬をついて、黄風大王に左ストレートをお見舞いした。
「ぎゃ~!」
◇
「良かったんすか~。逃げちゃって」
「妖怪が、大量に押し寄せて来ていたのだろう? 無理に戦闘を行う必要はない」
「今のヘーキチさんなら、倒せんじゃないっすか? いや、
「だから、意味がないだろう?」
「……封神計画を知らないんすね~」
なんだ? そのなんとか計画とやらは?
「内容は、教えてくれないのだよな?」
「ええ、知らない方がいいっすよ~。それと、アドバイスっす。東伯候っていう、この辺一帯を納めている人物に会いに行った方がいいっすよ~」
「……何処にいるのだ?」
「戦場っす。東の国の内乱って言えば、分りますかね~?」
行かんよ……。
妖怪仙人達は、私を捜索していたみたいだが、一日で帰って行った。
森に穴を掘り、その中に身を潜めて、〈隠密〉の術を発動した私を見つける術は、天界くらいしか持っていないだろう。土に埋もれたことで、匂いも消えているはずだ。
サバイバルの基本技術の一つだな。
まあ、森羅万象を見通す『易』という方法もなくはないが。
妖怪共が、『易』を習得しているとは、思えないしな。
ちなみに私は使えない。
「さて、念願の
「う~ん。もっと東に行ってみますか? 国と呼べない集落が、ところどころにありやす。
ふむ……。人の少ない土地か。いいかもしれない。
「それでは、案内を頼む」
そう思った時だった。
「ちょっと、待ってくれ」
またしても、私の〈索敵〉をすり抜けて来る人物がいた。これは、騎獣の関係か?
しかし、自信をなくすな……。そろそろ、不意打ちを受けそうだ。
◇
今回の被害者……黄風大王。"西遊記"に登場する妖仙。特になし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます