第18話 雨の降り注ぐ土地1
南極仙翁は、帰って行った。必要な情報だけ教えに来てくれたみたいだ。
無駄な時間を取ってしまったが、無事、遺跡探索は終わった。終わったのだ。
全員無事だし。
今度は、再度の砂漠越えだ。
だが、今回は、大鮫魚がいる。
「ねえ、無駄足になっていない?」
シルフィーが言いにくいことを、直球で投げて来た。
「いや……。街の人達にないことを伝えれば、今後犠牲者も増えんだろう」
シルフィーの不機嫌は、最高潮のようだ。もっと上がないことを祈ろう。
大鮫魚は、まずオアシスの場所を示してくれた。
半日で辿り着く。
オアシスの水は、浄化されており飲料水として使えた。これで、砂漠を越えられるな。
やはり、水は必要だ。一息つけた。
「さて行くか」
「……」
シルフィーの機嫌は治らない。まあ、いいのだけど。
パーティーは、ここまでかな。砂漠を越えたら、分れるのもいいだろう。
「ねえ、〈光遁〉の術を使ってよ。目的地が分かってんだからさ」
シルフィーからの、依頼と言うより命令だった。
「数に限りがある。歩けば目的地まで行けるのだ。今回は使えない」
「使えって言ってんのよ!」
シルフィー……。そんな目で人を見るもんじゃないぞ?
私は、思案の末、〈光遁〉の術を使うことにした。残りの数が、心許なくなって来たな。
◇
「ここら辺か? 雨が凄いな」
「……そうね。昼間なのに暗いし、日照不足で雑草すら育ってないわ。それと、人が住んでいない……。疫病かな?」
ふむ……。人の根付かない土地か。
今の時代は、まだまだ人の数が少ない。住みにくい土地となるのだろうな。
「さて……。霊穴は、何処だ?」
「あの山ね。あそこから、魔力を感じるわ」
シルフィーが、指差した方向を見る。
行ってみるか。
「あ~、ヘーキチさん。水には触れないでくだせえ。寄生虫が、凄いことになってますぜ。それと、蚊と蠅にも注意してくだせぇ……」
むむ……。怖い土地なのだな。
「それと妖怪仙人が、おりやすね。彼等の住みやすい土地に変えたんかな~?」
「ほう……。討伐の必要はあるか? 南極からの依頼だが、確認したい。大鮫魚の意見を聞かせてくれ」
「無人の土地だったんですぜ? 悪さはしてないんじゃないんかな~?」
ふむ……。考えてしまう。
土地を自分の住みやすい環境に変えただけ……。そして、元から無人の土地……。
邪魔だからといって、討伐するのは、盗賊と変わらない。
私は、そこまで非道ではない。
妖怪を、害虫駆除感覚で追い出す気はなかった。ただ、
「とりあえず、目的のお宝だけ、回収しましょうよ。それで、この雨雲も晴れるだろうし」
シルフィーの言う通りだな。私も同意見だ。
悪用とは言わないが、独占しているのは問題だ。
仙人界に戻す気はないが。
「よし……。まず、
「りょ~かい」「それで行きまっしょ~」
私達は、歩を進めた。
◇
「雨が凄い降って来たな……」
雨中の行進は、体力を削られる。
「あ、雨宿りしましょう。寒いわ……」
その辺の長い草で組んだ|蓑〈みの〉で雨具を作ったが、完全には水を弾けない。ナイロンやポリエステルが欲しいな。ポリ塩化ビニルも、手に入るのであれば欲しい。
まあ、時代に合っていないか。科学技術が発展するのを待つしかない。
シルフィーを見る。限界のようだ。
「何処で休む?」
「ここで……」
シルフィーが魔法を使った。土が盛り上がって行く。
「土でできた、かまくらか。考えているな」
「私の転生前は、これで休んでいたの」
ほう……、テントではないのだな。こんな方法があるのであれば、砂漠でわざわざテントを建てる必要もなかったのに。
だが面白い。私ならどう作るか……。作れそうにないな。
う~む。拳でクレータを作っても雨宿りはできない。
築くというのは、私には向いていないな。
その後、シルフィーの作ったかまくらへ入ることになった。
◇
かまくらの中で、シルフィーが火魔法を発動してくれた。温かい。
濡れた服を干して、乾かして行く。
シルフィーが私の横に座った。
そして肩に頭を乗せて来た。
シルフィーも疲れているのかもしれない。
私は、〈収納〉より薪を取り出した。
それに火をつける。焚火を作ったのだ。
喚起にも気を付ける。一酸化炭素中毒は避けたい。
「これで魔法を止めてもいいぞ。それと、眠いのか? 休んで良いぞ?」
「……」
シルフィーは、無言で離れた場所に移動して、寝てしまった。
私は、火の番をする。
私には、マイクロスリープがある。時間的な問題などない。
「は~、ヘーキチさんは、女心が分かっちゃいませんね~。もっとデレさせてあげましょうよ~。可哀相でっせ……」
大鮫魚からだった。
「そうか? 疲れていたのだろう? シルフィーの火魔法に頼っていては、シルフィーも休めないと思い、こうして薪を出したのだ。問題などないと思うが?」
「……」
大鮫魚も黙ってしまった。道案内で疲れているのだろう。
私は、マイクロスリープを発動させた。
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