第17話 遺跡4
「『
あったみたい?
「その言い方だと、もうないということか?」
「う~ん。この玄室にあったみたい。でも、なにもないでしょう? それと、カリュウヒョウと同じみたい。仙人? 道士? 以外が触るの禁止って書いてある」
む……。
仙人が関与している? いや、仙人界か?
だが……、下界に
例えるなら、神社に爆弾を奉納するようなものだ。
「いや、待てよ。霊穴なる場所に自動発動型の
「ねえ、ヘーキチ。どうするの? 帰る?」
「少し待ってくれ」
考えを纏める……。
下界に、放置された
「……欲しい。探そう……」
「「えっ? 欲しい?」」
「いや、回収しよう」
「今、『欲しい』って言わなかった?」
「聞き間違えだ」
うむ、下界に危ない物を放置しておくなど、問題でしかない。
回収しよう。
「大鮫魚……。この辺で雨が降り続いている場所はないか?」
「ありませんぜ?」
霊穴がないと、発動しない……か。
最悪、砂漠に埋もれている可能性もあるな。
道中に、人骨はなかった。
蟲に食べられたのかもしれない。手掛かりがないな。
チラッと見る。
「ん? なに? ヘーキチ?」
……シルフィーに頑張って貰うか。
◇
「はあ、はあ……」
「シルフィー。次は東だ」
「ちょっと! 魔力を放出するのは辛いのよ?」
私達は、遺跡の外に出た。そして、砂の影響を受けない場所で作業を始めたのだ。
今は、シルフィーに頼んで、広範囲に霊力を放出して貰っている。シルフィーは、魔力と言っているが、文化の違いなのだろう。細かいことに気を使っても意味はない。
近くに
「頑張れ、シルフィー! これは世界の為でもある!」
「ねえ、本当に砂漠の中にあるの?」
「確証はない……。だが、可能性はある。試してみる価値はあるはずだ」
シルフィーが殴って来た。
ポカポカではない。石を握って、殺意を込めた一撃だった。
まあ、私の頭蓋骨は、石よりも硬い。
シルフィーが、手を痛がっているな……。まったく、無駄なことを。
「遺跡は動いているのだ。次はまだか?」
シルフィーが、涙目で睨んで来た。
ふぅ~。代われるものなら代わりたいものだ。
だが、私の霊力では、
ここは、シルフィーに頑張って貰うしかないのだ。
◇
「ひゅ~、ひゅ~……」
シルフィーが、骨と皮になっている……。見るからに限界だな。
「今日は、ここまでとしよう」
「……何時まで続けるの?」
「見つかるまでだが?」
シルフィーが、倒れた。
ふ~。ここは、まず食事からだろうに。
私は、シルフィーを担いで、遺跡の中に戻った。
「ヘーキチさん。シルフィーさんには、優しくないっすね」
突然、大鮫魚から言われた。
「そうか? 私の修行の中には、仙人界の何処かに隠された物を探すという、訓練もあった。あの時は、数年かかったよ。そして、仙人界を壊しまくって、洞府の主に怒られたのはいい思い出だ」
「常識が、普通の人とかけ離れちまってますな。これが、仙人なんかな~」
「私は、仙人にも道士にもなれなかった、一般人なのだぞ?」
「……俺っちも金鰲島の仙人は知ってますが、ヘーキチさんは仙人以上っすよ~」
「
「天然道士で、仙人以上の人材もいますんでっせ?」
「私は、天然道士でもないのだが?」
「じゃが、仙人と互角に戦っておったじゃろう?」
む? 誰だ? 後ろを振り向く。
「南極……? どうしたのだ? 何故下界にいる?」
私の修行仲間だった、南極仙翁がそこにいた。私の〈索敵〉にも反応しないとは……。腕を上げたな。
「目的の
ほう? 仙人界も困っているということか。
シルフィーは、今は骨と皮だが、話す体力はある。死にはしないと思うんだが。それでも、心配で来たのか。……シルフィーには、何かあるんだな。
「それと、下界をあまり壊すな。自重しろ」
「……何か壊したか?」
「今、そのエルフの娘は死にかけておらんか? お主の常識を他人に押し付けるな!」
シルフィーを見る。ミイラだ。骨と皮だ。
だが、誰もが通る道じゃないか?
「共に修行した仲だろうに。この程度の試練、何度も乗り越えたじゃないか?」
「崑崙山って、凄い訓練をしてるんすな~」
南極と共に大鮫魚を見る。この分だと金鰲島は、温い修行をしていそうだ。
「ごほん。南東に行け。そこで、雨が降り続いている場所がある。霊穴を探せば、すぐに見つかるじゃろう。それと、妖怪仙人がいるので、排除も頼む」
「確認なのだが、日照りで困っている街に持って行くぞ?」
「そこに霊穴はないぞ? 持って行ってどうするのじゃ?」
む……。そうか。シルフィーに頑張って貰うことがまた増えたな。
今のシルフィーは、ミイラ状態だが……、もっと絞ってみようか。なにか出るかもしれない。
「定期的に、崑崙山から仙人を派遣して、雨を降らせるというのはどうじゃ?」
ほう? 協力してくれるのか。
いいだろう。今回は、手を組もう。
それと、南極仙翁は、"薬丹"をシルフィーに使った。数分でシルフィーが回復する。
「シルフィー。大丈夫か? それと、明日から移動となった」
「結局、砂漠にはないんじゃない!」
シルフィーの悲鳴が木霊した。
開口一番それか。ミイラ状態でも、聞いていたのだな。
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