第10話 再度砂漠へ1

「まず、物資の調達からだな。どうやったら、あの気温と太陽光から体を守れるかだ……」


 水を大量に持って行っても、体が持たない。

 まずは、服装だ。

 砂漠に適した服装……。


「それでしたら、こちらを……」


 考えていると、街の住人が、厚手の服を渡して来た。

 それと、マフラーと……資材だ。資材は分からない。こんな大きな物を運ぶのか? 話を聞くと、テントなのだそうだ。ゲルとも言うらしい。仙人界で過ごす前の私には、なじみ深い物だったな。形は違うが。

 まあ、私には〈収納〉がある。物資の運搬には困らない。

 それと、聞いてみるか。


「この服装では、暑くならないか?」


「まず、昼間に移動しようとするのが間違っています。移動するのであれば、夜ですよ?」


 ほう……。詳しく聞きたいない。

 話を聞くと、砂漠は夜に氷点下になるんだそうだ。

 昼間休んで、夜に行動するのが普通なのだそうだ。

 それと、馬を預かってくれるそうだ。ラクダでないと、砂漠越えは厳しいらしい。だが、この街にラクダはいなく貸してくれないとのこと。

 ラクダは、コブに水分を溜め込んでおり、暑さに強いのだとか。

 馬を担いで移動するのは避けたい。そうか……、ラクダなのだな。

 う~ん、後でどうにかして手に入れるか。


「それと、オアシスが点在します。陽炎で正確な位置は分からないかもしれませんが、オアシスを通って行くのが正解ですよ」


 ほう……。見かけなかったな。

 術の〈望遠〉を使えば良かったかもしれない。


「ねえ、ヘーキチ。行くの?」


「困っている人達がいる。行かない理由はない。シルフィーは待っているか?」


「行くわよ……」


 不満はあるが、付き合ってくれるのか。まったく、ツンデレさんだな。

 ちなみに、"ツンデレ"は、三千年後の概念だ。

 だがパーティーメンバーとして、組んで良かったと思えた。





 その晩は、歓迎を受けて、宴会となった。

 私は、肉を大量に頂く。豚一頭分を頂いたので、村民は驚いていたな。シルフィーは呆れていたが。

 酒は、ほどほどにした。術の〈解毒〉を使っても良いが、実際のところ私は酒に弱い。それよりは、村民に楽しんで貰いたい。


 そして、空き家でシルフィーと休む。もちろん別々の部屋だ。

 私は、少し休むことにした。


「……」


 数秒後、目を覚ます。大丈夫だ、暗殺者などいない。


「ふう~。マイクロスリープ……。便利な技術を覚えたものだ」


 修行時間を確保するため、何時も睡眠時間は数秒だった。

 だが、夜中であり暇だ。普通に睡眠をとれば良かったな。少し思案して、物資の確認を行うことにした。

 途中で、ドアの前までシルフィーが来た。だが、自分の部屋に帰って行った。

 要件は明日でもいいと判断したのだろう。あえて、触れることでもない。


「村民に教えて貰った物資は、揃ったな。ラクダは後回しにするとして、シルフィーは歩きだ。当然、私も徒歩だ。そして、砂漠に住む妖怪の存在……。どれほどの猛者なのか楽しみだな」


 人に仇名す妖怪なのだ。退治させて貰おう。

 私は、胸を躍らせて朝日を待った。


「……暇だな~」





 朝日と共に外に出て、準備体操をして体をほぐす。

 それと、昨日の晩の残り物を腹に詰めた。

 ここで、シルフィーが起き出して来た。何時もは、ビシッと決めているが、低血圧みたいだ。髪もボサボサ。

 意識がハッキリしないらしい。


「おはよう、シルフィー。顔を洗って来い」


「……おはよう、ヘーキチ。朝から元気ね」


 マイクロスリープを取得している私は、常に絶好調だ。

 薬丹もある。怪我も病気も寄せ付けない体も持っている。

 24時間、365日、絶好調なのだ。


 その後、シルフィーの準備が整うまで、私は、害獣となる獣を狩り続けた。

 百匹までは行かなかったが、野犬等が数十匹駆除できた。

 村民が、駆除された獣の山を見て驚いている。


「農作物を荒らされて困っていたのですが……」


 早く言え。


「とりあえず、私の〈索敵〉には、もう害獣は引っ掛からない。しばらくは、持つだろう。その間に、柵などを作ることを勧める」


「はあ……」


 理解しているのだろうか? 生返事が気になるな。

 まあいい。戻って来たら確認しよう。


 ここで、シルフィーが来た。

 村民に選んで貰った、服装を自慢げに披露している。

 私には、なにが良いのか分からない。


「では行こうか」


「その前に、何か言うことはないの?」


 なんだろう?


「……似合っているぞ」


「……あっそ」


 シルフィーが荷物を、ストレージに仕舞った。

 それと、正確な地図も貰った。コンパスではなく六分儀なる物も貰う。使い方は、シルフィーが分かるとのこと。

 準備は万端だ。

 そう思ったら、なにかを差し出して来た。

 それを受け取る。


「なんだ、この木の板は?」


「冒険者カードと言います。長が認めた人物に贈られる物です。東国であれば、見せるだけでどの国でも優遇してくれますよ」


 "冒険者"の概念を持っているのか? 数千年後と思っていたが。

 それに優遇? 滅多なことでは、発行しないということか?


 話を聞くと、持っている人物は、東国でも100人もいないらしい。

 この国で"冒険者"は、数少ないのか……。

 ありがたく、受け取る。


 こうして、村民の見送りを受けて、私達は出発した。

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