Cパート:ナレーション?「没を喰らった作家K……果たして間に合うのか?」

 楓の今の心境を語るとすれば、それは驚愕の二字が何よりもしっくりとこよう。


 実際、本当に驚愕するだけの出来事に直面したばかりとあって、彼女の目は大きくぎょっと丸く開いていた。



「ちょっとちょっと、これいったい何がどうなってるのよ……ちょっとヤバすぎるんじゃない彼」



 せっかく徹夜までして完成させたプロットが、執筆途中ですべてが台無しになった。


 書き手にとってこれほど絶望的なものはまずないし、没になったプロットはもう使い物にならない。


 早急に書き直す必要があり、同時に締め切りが迫れば余計に焦りが生じる。


 もしここで楓が一人きりだったならば、時間の概念など何も気にすることなく。


 それこそ大好きなアップルティーを片手にのんびりゆったりとした執筆作業となっていたが、生憎と四人・・も監視があればそうはしていられない。



「わ、私だってまさかこんなことになるなんて夢にも思ってなかったんだってば!」



 プロットは、言ってしまえば機械のようなものだ。

 念入りに重厚な設定で固めればそれこそ精密さを増していく。


 それだけに一度、ほんのわずかな歪みの一つでも生じようものならすべてが呆気なく崩壊する。


 少しぐらいの歪みだったなら簡単に治せる。


 そんな自信が楓にはあっただけに、予想していたよりも遥に大きな歪みの出現には動揺を禁じ得ない。



「――、だ、大丈夫よ! 次のはそう簡単に改変しないで済むようにするから! わかったからそんなに怒らないでってばー!」



 この娘達・・の気持ちも、同じ女だからこそわからないでもない。

 誰にだって運命の人との出会いは大切にしたいし、一生の宝物にしたい。


 好きな相手とは一分一秒だって離れたくないし、ずっと世界の終焉が訪れるまで一緒にいたい。


 自分の大切な愛娘だからこそ、その気持ちは痛いほどわかる。

 どうにかしてあげたいと思うのは、親だからこその本心だ。

 ちょっとの嘘偽りもない。



(でも……今回は本当に大変になっちゃいそうかも……)



 今までをかえりみれば、楓の作業は比較的スムーズな方だったと言えよう。


 滞ったことは一度としてないし、すべてが順調にハッピーエンドを迎えている。


 今回はあまりに特異質イレギュラーだったという話で、だからこそ挑み甲斐があるというもの。


 次こそは絶対にハッピーエンドにしてやるんだから! そう意気込む楓は羊皮紙にすらすらと羽ペンを走らせる。


 傾向とその対策については今日の失敗でバッチリだ。

 もう二度と失敗なんかしない。


 かわいい四人の娘達からも、がんばってママ、と暖かい声援を受けて、俄然やる気に満ちた楓の目には強い意志がめらめらと燃えていた。




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かわいい我が家のシスターは魔導少女~「大好きなお兄ちゃんを管理するのは妹の大事な務めなんだからね!」と言って兄離れしてくれません~ 龍威ユウ @yaibatosaya7895123

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