6・股間にパンチ!?

『一八五番目の殺人~男たちの賛歌~』

 結論から言えば、今までに観たことのないクレイジーな映画であった。タイトルは結構地味だなとは思うが。


 その世界では男性の股間から【剣】が出現する。

 まあ竿にかけているということだな。

 だがこの竿……おっと……もとい剣は股間を殴ることでしか出現しないという難点がある。もちろん死んでしまったら出ることはない。


 主人公は七人の盗賊たち。

 貧困により、この股間ソードを使って強盗殺人を繰り返していた。

 それが一八五番目の殺人で御用となるイカレタコメディである。

 一八六回も股間を殴っていたかと思うと、かなりクレイジーだ。


「アーーーーーっ!」

という男の叫び声とバフッと股間が殴られる音から映画は始まっていく。

 その後、これまでどうやって殴られるやつを決めていたのか走馬灯のように流れていく。斬新な映画である。


「面白かった?」

と問えば、悠は”凄く”と答えた。

 蓮は思わず股間を隠した。非常に身体に悪い映画だ。

「夕飯食べて帰ろうか?」

 そうだねと笑えば、彼女が顎に手をやりどこに向かうか思案しているよう。前はみないと危ないと思うのだけれどと、思いながら彼女の腕に手を逸える。

 もちろん、転びそうになったら引き上げる為だ。


 駐車場に辿り着くと、助手席に乗り込む。

 行きは蓮、帰りは悠が運転するのが暗黙の了解。

「あ、パンフレット買えば良かった」

 車に乗り込むなり、凄く残念そうな彼女。

「いや、要らないと思う」

と蓮。

「なんでよー」

「股間を殴る話とか……のパンフレットいる?!」

「えー。蓮とのデートの記念なのに」

 そんな記念品嫌だ! と思う蓮であった。


「ここ?」

「そう、評判なの。社内でね」

 不満そうな彼女が連れてきてくれたのは、鍋のお店。

 季節は冬。丁度いい。

「何が売りなの?」

 不満そうだった彼女を笑顔にしようと一所懸命話題を変える蓮。

「いち……もつ鍋」

「いち?」


──今、イチモツ鍋って言わなかった?


「一応って言おうとしたら、ほら看板に出てたから!」

というが、今のわざとだよね? と思う蓮。

 どうやらパンフレットの恨みは鍋に出るらしい。

「いま、イチモツって……」

「ん?」

と可愛く笑う悠。

 ”何か言ったかなー?”とでも言うようにトボけている。

「ささッ。寒いし中入ろうよ。いい匂いだねー。これはいち……もつ鍋の香りかな?」

 

──その”いち”は何だ?!

 

 このあと、蓮は悠の言い間違い攻撃を浴びせられることになった。

「明日、買ったらどうかな? パンフレット」

 〆のうどんを食しながら、蓮が切り出す。

 何もされてないのに一八五回股間にパンチをキメられた気分になりながら、そう提案する。

「帰りさ、ちょっと寄って」

「うん、そうだね! 気になっちゃうしね」

と嬉しそうな悠。

 何がそんなに気になるのかは謎だが。

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