スローなライフにしてくれ

第23話 ワンコロのスキル

「そんなことより、いま聞き捨てならないことを言ったわね」

「いろいろ聞き捨てていたようだったが」

「いちいちちゃちゃ入れない！　さっきのホオブクロって例え話よね？」

「例え話って言われてもな。ワンコロが持っているスキルの名前でなんでも収納できるようだが」

「ほんとうにあの伝説のスキルなの……一般的によくあるコブクロのことじゃないわよね？」

「ああ、あの、ここにしか咲かない桜の蕾とかいう」

「混ぜるな危険！」

「焼き肉屋のメニューでもないでござる。ほぼ無限に収納できるアイテムボックスでござる」

「そ、そんなすごいものをこの子が持っているなんて」

「ども、でござる」

「ども、じゃないわよ。そんなのんきなこと……。あんたはどうやってそれを手に入れたの？」

「そんな珍しいスキルなのか？」

「ホオブクロって、新大陸に生息していたクイーンドラゴン族という絶滅したとの噂もある種族の、しかもそのそのごく一部だけに伝わるという伝説級のスキルなのよ。それがこちら――チュウノウ――に渡っていたというだけでもすごいニュースなのに。ほんとに、ほんとにあのホオブクロスキルで間違いないの？」

「そんなに念を押されても困るでござる。拙者もつい先日、ご先祖様から引き継いだばかりのスキルでござる。名前は脳裏に浮かぶのですぐに分かるのでござるが、それがすごいスキルなのかどうか」

「つい先日だと？！」

「光一殿はご存じのはずでござる。あの時でござる」

「あ？　ああ、えっと、あの時って？」

「ご先祖様から引き継いだということなら、あれしかないだろうが」

「どんなボケが出てくるのか楽しみだモん」

「うるさいわ。人をボケしか言えない漫才師みたいに言いやがって」

「素でボケるからたちが悪いんだよなぁ」

「ワンコロが食べた仲間たちの魔石のことだろ？」

「「「そんなわけがあ……あぁ？」」」

「ざまぁみろ。たまには当たるだろうが。ざまぁみろ、ざまぁみろ、ざまぁみろ！」

「そんなに威張りたければ南極に行ってからにしろ」

「そんな寒いとこ行かねぇよ！」

　レアな魔法・結界魔法が使える上に、超がいくつ付くのか分からないほどのアイテムボックス持ちを眷属にして、俺の異世界生活は前途多難である。

「前途洋々だと思うモん？」

「足手まといがいなけりゃな」

「誰のことモん？」