やっぱ変な人
「んーん!
よく眠れたっす!
サイポンおはようっす」
上半身を起こしたあと背伸びし、
そして丸い形をしたゴーレムに朝の挨拶をする、僕の日課っす。
このゴーレムは親父から子供の頃に渡された物、でも起動した事がないっす、親父に何度も聞いたけど起動方法は教えて貰えなかったっす。
だからこのゴーレムは置物状態っす、いつか起動させてみせるっす。
そんな事を考えながら部屋から出て昨日のお兄さんの様子を見に行く、僕の家は僕と親父しか住んでなかったから、泊められる部屋は親父の部屋くらいっす。
親父の部屋の扉を静かに開けて中を見る、
どうやらまだ眠っているようっす、また静かに扉を閉めてキッチンに向かったっす。
いつもはパンと冷蔵箱にある野菜を生のまま食べて工房へ向かうが、一応お兄さんが家に泊まっているからちゃんとしたものを作ることにしたっす。
パンは安物なのでとても硬く、それを食べやすくするためにシチューかスープを作ろうと思うっす。
冷蔵箱を確認するとヤミーの乳が切れていたのが分かったので、野菜スープを作り始めたっす。ヤミーとは人工的遺伝子を改造した動物で、お肉もお乳も栄養価が高くこの世界では一般的なもので、飲食されているっす。
「ふっふん、ふふふふん、ふふふー」
最近流行っている曲を鼻歌で歌いながらスープをかき混ぜている。これを歌っているのが新型のホムンクルスだと思うと少し癪だけどっす、いい曲はいい曲っす。
「あのー君が助けてくれたのかな?」
「ふわっ!びっくりさせないで欲しいっすよ!声をかける前に壁を叩くなりして存在をアピールして欲しいっすよ!
あと気配を消さないで欲しいっす」
「あーごめんごめん、目が覚めたら知らないところにいたから警戒したんだ。
それに楽しそうに歌ってたからどうしようかと思ってさ。
タイミングをはかっていたんだけど終わりそうになくて、頑張って声をかけたんだけど、
なんかごめん」
お兄さんは両手の手のひらをを合わせて謝ってきたっす。
「まあいいっす。
とりあえずご飯できたっすから、話を聞く前に食べるっす!」
「いいの!実はすごいお腹減っていたんだよね」
親父が使っていた器にスープを入れ、お盆にそれとパンが乗っている皿をお兄さんに渡したっす。
「お兄さんパンは硬いからスープに浸して食べるといいっすよ!」
「了解!
じゃあいただきます」
「なんすかそれ?」
「あー俺の国ではご飯を食べる前に言うんだ。確か食べ物やその食べ物作ってくれた人、料理を作ってくれた人に感謝するって意味だったような?
まあきにしないでよ」
「ふーんなんか面白いっすね。
じゃあ僕もいただきます」
そう言って僕等は食べ始め、うん、久しぶり作ったけどなかなか上手く作れたっす。
お兄さんの方を見ると美味しそうに食べているっす、親父が死んでから食べるのは一人きりだったから凄く懐かしいっす。
「ごちそうさま。ありがとうえーと」
「僕の名前はシエルっす!ゴーレム技師をやってるっす」
「シエル君ね、俺の名前は創。
歯車 創!サラリーマンをやっている!」
「ソウさんは名前を最後に言うんっすね。
家名があるってことは貴族っすか?
それとサラリーマンとは?」
「いや貴族じゃない。
そうかこの世界だと創 歯車なのかな?
サラリーマンはそうだなー働く戦士って感じかな」
「そうっす、名前を最初に言うっす。
働く戦士っすか、なんか凄そうっすね。
それよりこの世界ってどう言う意味っすか?」
少し言い方が気になったので聞いてみたっす。
「えーあー。
シエル君その前にこの国と世界のこと教えてくれないかな?
このとおり」
ソウさんは机におでこをつけて言ってきたっす。
「いいっすよ!
まずこの世界の名前はアーセルク、女神アーセルク様がお創りになったっす。
そして大陸が四つあるっす、その中で二番目に大きい大陸サバルトの一番東にあるのがこの国、ラピスっす。
そして僕達がいるのがラピスの王都っす。
ラピスは魔道国とも言われるっす。
魔法陣と呼ばれる技術が発展して沢山の道具に使われ、いろんな効果を発揮するっす。
僕が作っているゴーレムにも魔法陣を使って動かしているっす。
その技術を使った魔道具を他の国に輸出することでこの国ができたと言われているっす。
昔はその技術欲しさに攻め込まれたりしたらしいっすけど、全部返り討ちにしたらしいっす。なんでも輸出していたのは旧式の魔道具だったらしいっす、だから他国は新型の魔道具には手も足もでなかったらしいっす。
そして同盟を結び、今は平和な時代になったっす。
こんな感じっすかね」
昔親父に聞いた事をソウさんに説明し、ソウさんは両肘を机につき頭を抱えているっす。
「ソウさん大丈夫っすか?頭痛いなら薬持って来るっすよ!」
「いや大丈夫だ。今頭の中を整理していただけだよ。
シエル、俺は異世界に来てしまったっぽい」
「ソウさん何言っているんすか?
異世界なんてあるわけないっすよ」
「あるんだ。俺は地球の日本にあるさいたま市に住んでいたんだ。
証拠はこれだ」
ソウさんの顔が書いてあるなんかよく分からないカードを出してきたっす。
「えーとソウさん証拠と言われましてもこれが何か分からないっす!」
「あっそうか。世界が違うならこれが何か分からないか。
クソスマホが使えれば、、、そうだ!
シエル君、俺鞄もってなかったか?」
「鞄すか?うーんあれのことっすかね。
ちょっと待つっす」
ソウさんが気絶した時に持っていた鞄を取りに自分の部屋に行くっす。
「確かここに置いたっすよね。
あったっす、相変わらず不思議な素材っすね」
鞄を持ちソウさんの居るリビングに向かうっす。
「お待たせっす!
これのことっすよね」
ソウさんに鞄を渡したっす。
「ありがとうシエル君、
確か後輩からの誕生日プレゼントであれがあったはず。
これだ!これを差して回せばいいんだよな。
シエル君少し待っててね」
ソウさんは昨日スマホと言っていた四角い板にコードのようなものを差し、そのコードが出ている機械のような物のレバーを回しだしたっす。
しばらく待っているとスマホと呼ばれる物が何かの文字が書き出したっす。
「よーし!えーと30パーセントか。
まあとりあえず動画を見せるくらいだから大丈夫だな。
シエル君見て」
スマホが見たことのない風景を描き出した。
そしてその絵は動いているっす。
まるで魔道具の動絵みたいっす。
その風景とはとても高い建物と沢山の人達が白い線の上を歩いて、歩いている人達はみんな同じような格好をしていたっす。
「ソウさんここはどこっすか?
なんでみんな白い線の上を歩いているんす?」
「ここは交差点。ここの色が青になるとこの白い線の上を歩いて向こう側に行けるんだ。
そして、赤くなるとほら。
みんな止まってまた青になるのを待つんだ。
これが俺の国なんだ。
ほら次はこれを見て」
ソウさんが指差しながら教えてくれ、次は動く絵では無く動かない絵っす。
見たことのないピンク色の花が咲く木や、動車とは違う何かに乗った人達っす。
少し似ているけど違う動物っす。
「なんなんっすか!
本当に異世界があるとでもいいたいんすか?
これはただの絵っす!
現実世界じゃないっす!」
「これならどうだい」
ソウさんはソウさんの描かれている動く絵を見せてきたっす。
そこにはソウさんの声と他の人の声が聞こえ、絵と共に動いていたっす。
音声と絵が一緒に動くなんて動絵にはない機能、なんでさっき気づかなかったんだろっす。
「ソウさん、本当に異世界から来たんすか?」
「そうみたい。
シエル君信じてくれるかい?」
「信じられないけど、ラピスででこんな技術が使われている魔道具はないっす。
もしかすると僕が知らないだけかもしれないっすけど。
分かったっす一応信じてあげるっす」
「ありがとう。そういえばシエル君はなんで見ず知らずの俺を家にまで入れて助けてくれたんだ?」
「それは、僕も昔ゴミ捨て場から助けてもらったんすよ。
親父に」
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