Chapter.6 死望
小学校4年生の時詳細は伏せるが母がすみれ叔母さんの勧誘でとある宗教に入信し私達も必然的に入信させられる。休みの度に有難いお話?とやらを聞きに行っていた気がする。説法を真剣に聞き入れる母の横顔をよくじっと見つめていた。母は、救われるんだろうか?そして、私も。
そこからの日々は〝お前には悪霊がついてる〟といい血が出るまで殴られる様になる。出血する事で母は除霊出来ると言った。『大丈夫、お前からあの悪霊は離れて行ったよ、さっきまでと全然顔つきが違うよ!』と抱きしめられるという地獄のような日々が続く。この時の母の暴力は力が日に火に増していき、頭を強く打ちすぎて吐き気が止まらずトイレで気絶している事もしばしばあった。
神などいないのだ。いるはずがないのだ。
もし神がいるとするのならなんだ、この現状は。
少なからず 私を助けてなんてくれない。私は絶対信じない。神なんて仏なんて。
薄れゆく意識の中そんな事をうわ言の様にブツブツ言っていた。もう心の中だけでは処理しきれなかった。辛くて。苦しくて。痛くて。
とある日に二日酔いで食事の用意が出来なかった母に代わり近所のスーパーで夕飯を買って来る様命じられ夕方18時頃自転車で買い物に出かける。自分が大好きだったカボチャコロッケ、メンチコロッケ、そして父のビールを買い(当時はまだ子供でもお酒を買えた)帰路についている最中に信号無視の自動車に轢かれてしまい頭蓋骨骨折、外傷性くも膜下出血等を負う大怪我を負った。
目が覚めたらICUの中で沢山の配線に繋がれ尋常じゃない頭痛と吐き気が襲った。暫く母の事だけが思い出す事ができなかった。正直入院中幸せだった。いつ殴りかかってくるか分からない母もいない、安心して眠る事ができた。退院の話が出た時は顔が引き攣った。またあの地獄の様な場所に戻るんだ…
1ヶ月半程入院し医師や看護師といった医療従事者様達のおかげで無事回復する事が出来てしまった。退院後も2週間に1回は病院に行かなければならなくて母には大分迷惑をかけてしまった様に思う。毎回申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
1年後の私が5年生の時にマイホームを購入する。その頃にはそれが理由で私は殴られ罵られていた。
『やっと夢だったマイホームを買えたのにお前の同級生の母親どもはお前の事故の慰謝料で買ったの?とか言ってきやがる!!!お前のバカな同級生の家と近所行ってそうじゃないって言って回ってこい!!!!』
本当に言われていたのかは定かでは無いが当時はまだ連絡網が有った為ずっとそうだったがあっちこっちの友達の家に酔って電話を掛けられていた為嫌味のひとつやふたつ言われたのかも知れない。うちの家は有名だった。
『お前のせいで!!あの時死んでたらよかったのにね!
そうしたらあたしもおまえも幸せだったね!』
その言葉を母の口を突いた時、何かが自分の中で千切れていく感覚がした。
大切な何かが千切れて落っこちて割れる様な音が頭の中でした。
そうだ、それだ。
何だか自分の気持ちにスッと落ちていくものがあった。
多分 それを一番自分が痛い程思っていた。
あの時 死んでいたら、と
ただ、そんな事思っちゃいけないよなって考えがあって
蓋されていただけで。
いつから私がこの人を変えられるなんて驕り高ぶった感情を抱いたんだろう。
私自身が母の不幸の元凶だったのに。
でも、あんなに退院喜んでくれたじゃない。あれは何だったの?
生きてていいんだ!そう思ってしまった。
まだ必要のある存在なんだって勘違いしてしまった。
でも、そうじゃなかった。
恥ずかしい。
死にたい、死にたい、死にたい。
そこからの私の写真は一枚も笑顔が無い。
笑う事が怖くなった。私の笑顔に価値など無い。
死ねばいいだけの、存在。
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