第110話 ガラガラ

君は普段から声がガラガラだ。恥ずかしがってあまり話そうとしない。


でも俺は君の声が嫌いじゃない。低くてかっこいいと思うけど、本人には言えなくて。


あるとき、俺はカラオケで歌い過ぎて声を枯らした。それを君とお揃いだと友人がからかった。


俺は笑った。馬鹿にしたんじゃなくて、純粋に嬉しくて。


それを君はみられているとも知らずに俺は笑ってしまっていた。君を馬鹿にしていると思われてしまった。


君は以前にも増して喋らなくなった。俺との会話を避けている。


君の声がかっこいいと思うからなんて言っても君は信じてくれない。君の声を聞きたいのに。


先に伝えていたら何か変わったのだろうか。君の声が聞こえてこないか、今日も俺は耳を澄ませる。


ガラガラ。君が教室を出ていく音だった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る