第108話 再来

大人になって故郷へと戻ってきた。あまりいい思い出はない。


太っていたあの頃、俺はよくいじめられていた。そのきっかけも君に告白したことが始まりだったか。


周りが騒いだだけ。君に罪はない。


わかっていても身構えてしまう俺は器が狭いなと苦笑する。昔から卑屈なところは変わらなかった。


タイミングよくか悪くか同窓会の招待状。顔を出せば女子の方から声を掛けられた。


俺だとわかるとみんな驚く。苦い顔はされなかった。


いじめたやつらも見て見ぬ振りした奴らもすっかり罪悪感というものを忘れたらしい。そんな最中、君だけが俺を見て表情をこわばらせた。


忘れて欲しかった君だけが、どうして覚えているんだろう。どうして俺だとわかるのだろう。


何度か君のいる席へと足を運ぼうとした。だけど結局最後まで俺は君に話しかけることができなかった。


会場を出て喫煙所へ。興味本位で買って一本ふかしただけで余っていたタバコを取り出す。


慣れていないライターで苦戦しつつも火をつけた。長らく鞄の中で眠っていたのでしけっている気がする。


不味い、やっぱり不味いな。俺は次のタバコを取り出していた。




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