第107話 ハリボテ

昔から俺は共感力が高かった。相手が喜べば俺も嬉しいし、相手が悲しければ俺も悲しい。


だから俺はよく笑う人が好きになった。君はいつも笑っている。


だけどすぐおかしなことに気がついた。君が笑っているのに楽しいと共感できないときがある。


理由はすぐにわかった。君の笑顔はハリボテだ。


顔が笑っているだけで実際は怒っていたりすることが多い。俺は失望した。


本当の彼女に気づけなかった己に。笑顔にしてもらおうなんて甘かった。


俺が笑顔にさせなくちゃいけなかったのに。俺は君を楽しませようと手を尽くしている。


君は笑って受け答えしてくれる。ただそれはいつものハリボテだった。


君を本当の笑顔にする力が、俺には無いのかも知れない。つまらないジョークばかりが上手くなっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る