第99話 さよなら。いい人
次で付き合う人で最後にする。君はそんなことを言った。
俺は苦笑した。君は付き合っても一月もせずに振ってしまう。
かつて俺も告白した。だが俺のことは知っているから付き合わないのだそうだ。
でも最後だ。俺はもう一度告白した。
君はいい人だから、私にはもったいないよ。君はまた俺を振る。
どうしてそんなことを言うのだろう。そう思ってくれるのは君くらいなのに。
そのうち君は高校を中退した。妊娠していたそうだ。
お腹に子どもがいても付き合ってくれる人を探していたらしい。俺は絶句した。
俺にはそんなこと言わなかったのに。一体、誰の子どもなんだ。
あの日の俺の告白を最後に君は俺の前から姿を消していた。連絡先も経たれてしまって……。
もし打ち明けられていたら俺はきっと中絶したほうがいいと勧めた。君が中絶を拒み、俺が支えるとしたら一緒に高校を中退していたかもしれない。
君にとってそれがもったいないと言うのなら。俺はどうすればよかったんだ。
大人になっても俺は君を忘れられずにいる。君を支えるだけの両腕を空けたままにしている。
どこかで誰かと結ばれて幸せでいるならいい。でももし君が一人で子どもを育てているとしたなら。
そこに手を伸ばすのは俺でありたい。子どもとだって仲良くしてみせる。
未練たらしいだろうか。君は俺を迷惑だと思うだろうか。
そしたら俺はいい人じゃない。だから君の側においてくれないだろうか。
君のいなくなった夏が来る。陽炎に君を探していた。
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