第48話 理解者

君は学校のマドンナだった。多分に漏れず、俺も君が好きな一人だった。


毎日のように男どもが君へ告白にやってくる。俺は告白しなかった。


君のことをそこまで好きではないからか。違う、俺は誰よりも君のことが好きだという自負がある。


君に振られたくないからか。違う、君に振られることなど知っている。


答えは俺が君の理解者だからだ。君は趣向が同性に向いていることを俺は知っていた。


君は俺に勘付かれていることに薄々気づいている。だが俺が君に確かめることもない。


誰を好きになろうと、個人の自由。だから俺が君を好きでいるのも俺の自由だ。


叶わないとわかっているのに好きでいることはおかしいだろうか。不毛だと頭ではわかっている。


でも仕方ないじゃないか。好きになってしまったんだから。


自分を曲げない、まっすぐな君に恋をした。だから気変わりして俺を好きになってしまったらそれは俺が恋した君じゃない。


どう足掻いても叶わぬ恋。俺は陽炎に恋をしていた。

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