第44話 ウォーキングデッド

俺と君の共通の趣味はゾンビ映画だった。駄作でも名作でも何だって見漁った。


だけど君は気づいていないことがある。俺が君に好意を寄せていることだ。


知っている。君には彼氏がいることくらい。


知っている。俺の恋が実らないことくらい。


俺の恋はすでに死んでいる。それでも思いを捨てられずにいる。


まるでゾンビだ。俺自身が歩く屍。


嬉しくないことだ。君の好きなものになっても一番にはなれない。


今日も隣で君とゾンビ映画を鑑賞する。彼氏はゾンビ映画は好きではないらしい。


それでどうして好きなままでいられるんだろう。でも俺には僥倖だった。


君の隣にいれるんだから。そのためなら俺の恋は死んでてもいい。


テレビでゾンビの頭がショットガンで撃ち抜かれる。それを見て喜ぶ君、ゾンビを自分の姿に重ねて俺は苦笑した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る