第40話 つぎはぎ

幼い子の記憶はほとんど忘れてしまった。けれど君との思い出はいくつも覚えている。


遠足で君が弁当をひっくり返したこと。公園で遊んでいるとき二人して池に落ちたこと。


ぼんやりだけど覚えている。だが君に言わせると弁当をひっくり返したのは俺だという。


だが確かに覚えているんだ。間違いじゃないはずなのに。


君と将来結婚しようと約束したことも、君は忘れてしまったのだろうか。それとも覚えていて口にしないのだろうか。


ある日、机から写真が出てきた。そこには弁当ひっくり返して泣く自分がいる。


俺が間違っていたのか。なら結婚の約束は。


必死に記憶を呼び起こす。曖昧な記憶はつぎはぎだらけだった。

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