第10話 ずっと一緒だよ

……。

……。


なんだろう。

変な感じ。

病院で寝ているわたしの指が動いた。

そして、わたしは目を開けた。


リーフィア?

ん?

ここはどこ?


「しおり!?」


お母さんの声だ。

お母さんだ。

わたし戻ってきたんだ。

お母さんはわたしを抱きしめて泣いていた。


わたしは10か月も寝たきりだったので、声をだすことも難しかった。

ゆっくり声をだして、1時間も話をしていればもう普通にしゃべれるようになっていた。


お父さんと妹(しほ)もかけつけた。

ふたりとも泣いて喜んでいた。


「おねえちゃん!」

「しほ!」

「よかった! 目を覚ましてくれて」

「うん」


「おかえり、しおり!」

「ただいま、お父さん!」


家族みんなわたしが戻ることを望んでいてくれたようだ。


何日かして、お友達もお見舞いにきてくれた。


「しおりちゃん!」

「まりちゃん!」

「もう、よかったよーおかえりー」

「ただいま」


まりちゃんは小学校のときからの友達だ。

泣いて喜んでくれた。

唯一の友達だ。

最近の高校の話をいっぱいしてくれた。


わたしは歩行練習をするため、しばらく入院していた。


みんなが家に帰ると、ハピネス島のことを思いだす。

リーフィアに会いたい。

リーフィアたちはどうなってしまったのだろう。

あの無人島暮らしは夢ではないよね。

そんなことを思ってしまう。

でも、この腕にしているブレスレットが証拠だよ。


ある日、お母さんにきいてみた。


「お母さん、このブレスレットだれがはめてくれたの?」

「わからないの、いつのまにか腕にしてあった」

「そうなんだ~」

「看護師さんがしてくれたのかな~って思ってたのよ」

「そうか」


わたしはこれはやっぱり、リーフィアがくれたブレスレットだと思った。


しばらくして退院した。

お母さんと妹(しほ)が迎えにきてくれた。

ん~ん~

力いっぱい伸びをした。


「外の空気は気持ちいいね~」

「そう?」

「病院はいやだね」

「まあね」


「ねえ、本当にタクシーよばなくてよかったの?」

「うん、いいの」


リハビリをかねて、歩いて帰った。


「大丈夫? しおり」

「うん、大丈夫だよ」

「おねえちゃん歩くの嫌いだったじゃん」

「そうだっけ?」

「そうだよ、近いコンビニに自転車でいってたじゃん」

「ああ、そうだったね」


「いや~歩かないとだめだよ。自分でなんでも考えて行動しないとだめだよ」

「なにそれ」

「まあ、そういうことだよ」

「へんなの」


わたしは無人島の暮らしを思いだしていた。


なにもないところから自分たちで作らなければならない大変さを知っているから……。


――――


わたしは大学受験をするために猛勉強をした。

もっともっと、いろんなことを勉強をしたいと思った。


いつどんな時でも、リーフィアのことは忘れたことはない。

もらったブレスレットもずっと大事にしています。


そして、この春晴れて大学生になりました。


大学でもお友達ができました。

毎日楽しく生活をおくっています。


ジリジリ……。


なに?


ふと、ゲームのことを思いだした。


「しほ~」

「なに?」

「あんた、『一緒に暮らそうハピネス島』のゲームしらない?」

「あるよ、ここに」


しほはカセットをもってきた。

わたしは、しほにきいてみた。


「しほ~このゲームやってた?」

「うん、おねえちゃんのアカウントで」

「そっか」


あのとき見た、しほがわたしのゲームをやっていたのは夢ではなかった。

あの時、リセットしようとしてたよね。

じゃあ、リセットしちゃったかぁ~

恐る恐る聞いてみた。


「しほ、リセットした?」

「……。しょうと思ったけどやめた」

「え? ほんと? してない?」

「うん、できなかった」


なら、もしかしたらリーフィアにあえるかも?

ほんのちょっとの奇跡を求めて。

電源をいれた。

そして、『一緒に暮らそうハピネス島』を起動した。


主人公はしおりになっていた。

そして……。

家からでたところから始まる。

まわりの風景はあの無人島だ。

隣の野菜畑も綺麗になっている。

家の中に入ってみた。

リーフィアはいなかった……。

やっぱり、違うのか……。


すごくがっかりした。

でも、懐かしくなって海まで歩いた。


するとだれかいる。

リーフィア!?

リーフィアだ!!


「リーフィア!」


わたしは話かけた。


「しおり! 久しぶりだな」


リーフィアが返事をした。


わたしはゲームの中でもリーフィアにあえてうれしかった。

でも、いろいろな話ができるわけではない。


もっと、リーフィアと話がしたい。

話ができないだろうか。

考えた。


手紙だ!!


わたしは飛行場のお手紙でリーフィアに毎日手紙を書いた。

書き続けた。


すると、ゲーム内で家のポストにリーフィアから手紙が届いた。


『しおり元気か? ぼくはしおりに教えてもらったリンゴジャムをミーリに作ってあげたよ。喜んでいたぞ』


と書いてあった。

やったー

届いたんだ。

そして、わたしはまた返事の手紙を書いた。


リーフィア!

リンゴジャムを作ってえらいよって。


わたしたちはゲームの中でずっとつながっている。


離れていてもずっと一緒だからね。

リーフィア。


――――


ゲームはもちろんやっています。

好きですから。

でも現実世界も楽しくやっていきます。

いろいろ悩んで考えて……、自分らしく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

人生の終わりに無人島で暮らしているはずですが~これってゲームの中じゃない? 柚子桃しずく @momoyuzu-sizuku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ