第9話 バグ発生

また、楽しい一日が始まる。


「おはよう、リーフィア」

「おはよう、しおり」

「畑を見てくるね」

「ぼくも行くよ」


家の外に出た。

そして庭にある野菜畑をみた。

ジョウロに水を入れてまいた。


「リーフィア、みて。こんなに立派なトマトができてるよ」

「ほんとだ。真っ赤だね」

「ねっ」


ジリジリ……。


痛い!

また?

なに?


わたしはまた倒れた。


また、なにかがうっすら見えてきた。


ここはどこ?

だれ?

ゲーム?


だれかがゲームをしているみたい。

妹(しほ)?


妹が泣きながらゲームをしている。

あれは、わたしがやっていたゲーム。

妹(しほ)がゲーム?


妹(しほ)はゲームをやったことがない。

でもどうみても妹(しほ)だ。


妹(しほ)がわたしのゲームアカウントでゲームをしているってこと?

テレビの画面をみた。

すると、しおりとリーフィアの会話が写っていた。

え?

リーフィアって、どういうこと?


もしかして、わたしゲームの中にいるの?

そして妹(しほ)に操作されているの?


それなら、いままでの不可解なことの説明がつく。

でも、そんなことって……。


妹(しほ)がなにか話をしている。


「わたしがゲームをやればおねえちゃんは目を覚ますと思ってたのに……っ」


目を覚ます?

この間の?

やっぱり、あれはわたしだった。

わたしは病院で意識がない状態のようだ。


「もう、10か月も目を覚まさないなんて……っ」


10か月も寝たきりってこと?


妹がゲームをやめた。

妹(しほ)はリセットしようとしている。


「え? しほ! なにをしようとしてるの? やめて!」


リセットしたらわたしはどうなるの?

リーフィアは?


今のこの状態はゲームのバグ?


わたしはやっぱり死んでなかったってこと?

意識がないってことはさまよっているってことだよね。

魂がさまよって無人島にきちゃったってことかな。

でも、そんなこと本当にあるの?


とにかく、リセットはやめて!

どうなるかわからない。


「しほ! やめて!」


わたしは目をさました。


「しおり! 大丈夫か?」


ん?


「リーフィア」

「よかった~また、倒れたぞ」

「そっか」


わたしの考えが正しければ、今みたことは本当のこと。

そして戻れるとなると、突然消えるってこともある。

そうなる前にリーフィアにちゃんと話をしなくちゃ。

そして、わたしがいなくなってもやっていけるようにしなくちゃ。


わたしはこの日から、いつ消えていなくなってもいいように魚釣りのやり方や料理も教えた。

野菜の育てかた、果物の育てかたはすべておしえた。

そして、お金は部屋にすべておいておくことにした。


リーフィアには今まであったすべてのことを話した。


「わたしは死んでこの無人島にきたの」

「そうなの?」

「でももしかしたら死んでないかもしれない」

「どういうこと?」

「この間、わたしが倒れたとき不思議な体験をしたの」


わたしは起きたことをはなした。


「そんな……やだよー」


リーフィアは悲しんでいた。


「リーフィアわたしも悲しい。でもこればっかりはどうすることもできないの」

「いやだよー、いかないでー」

「もしわたしの魂がわたしの肉体に戻らなければたぶんわたしはここにもいられない」

「そうなの?」

「たぶん本当に死んでいなくなってしまうような気がする」

「そんなのもっといやだよ」

「ごめんね」

「……」

「……」

「わかったよ、だから生きて」

「うんっ、ありがとう……リーフィア」


リーフィアはわかってくれた。


この夜、同じベッドで一緒に寝た。


「リーフィア、わたしあなたが弟みたいで可愛くてしょうがなかったの、ふふっ」

「ぼくもだよ。しおりはおかあさんみたいに優しかった」

「おかあさんかぁ~」

「「はははっ」」


「もし離れてしまっても絶対に忘れないから」

「うん、ぼくも忘れない」


わたしはリーフィアに貝のネックレスをプレゼントした。


「実はぼくも……」


リーフィアもたまたま作ってくれていた貝のブレスレットをプレゼントしてくれた。


「リーフィアも作ってくれてたの?」

「うん、しおりのように上手じゃないけど」

「ううん、上手だよ」

「ほんと?」

「ありがと、リーフィア」

「うん、ぼく大事にするね」

「わたしも大事にする」


ふたりは眠りについた。


この日からわたしたちは毎日楽しく過ごした。

ずっと一緒にいて、いっときも離れることはなかった。


「しおり、今日も一緒に寝ていいか?」

「うん、いいよ。一緒に寝よ」

「明日はなにしようか?」

「畑をもう少し大きくするか?」

「リーフィアすごい」

「わたしがやろうとしていることがわかったの?」

「まあね」

「野菜の種類を増やしてもいいかなって思ってるんだよ」

「ぼくもそう思う」

「そっか。じゃあ、商店いって買ってこよう」

「うん、何がいいかな~」

「ん~そうだね~」


毎日、次の日のことを話ながら寝ていた。

目が覚めると、隣にリーフィアがいて安心していたのだ。

その繰り返しだった。


この日も次の日の話をしながら寝た。


「リーフィアまた明日ね」

「うん、また明日。しおり」

「「おやすみ」」

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