第7話 タケの引っ越し

わたしはリーフィアとの生活がはじまった。


家は大きくなったから住みやすい。

家の中の家具もそろってきた。

冷蔵庫にキッチンカウンター。

リーフィアと一緒に寝るベッドも買ったんだ。


白を基調とした部屋にしている。

家らしくなった。


庭の野菜畑は少し大きくした。

リーフィアが毎日ジョウロで水をあげてくれる。


「しおり、トマトができてるよ~」

「ほんとだ。収穫しよう」

「うん」


家の周りに果物の木を増やした。

サクランボだけではなく、ブドウとモモを植えている。

野菜も果物も好きなだけ収穫して、食べられるのだ。


最近引っ越してきた、ルナチとブルーシーにも採れたて野菜や果物のおすそわけをしている。

お返しにって、ルナチからはちみつをもらったり服をもらったりしている。

この間ブルーシーからは、サンドバッグをもらった……。

これで、鍛えろってことかな~


――――


トントンッ!


「しおり!」


あ、ミーリさんだ!


「は~い」

「遊びにきた」


ミーリさんは時々、家に遊びにきてくれる。

いろんな話をして楽しい。

ただ話をしているだけで、楽しいなんて思ったことがなかった。

むかしのわたしなら、ゲームなしではいられない。

友達がいなかったわけではない。

でも、ゲームの中だけでつながっていたのだ。

だから、ゲームをやっているときは話すが、普段学校ではひとことも話をしない子もいた。

それをなんとも思っていなかった。

でも、今は無人島という自然の中で自分が動かなければなにも始まらないところで生活してみてわかったんだ。

わたしは親や周りに甘えていたんだ。

なんでも手に入る楽な生活に甘えていた。

今更、そんなことをいってもしかたがない。

今、ここでしっかり生きよう。

生きよう?

死んでるけど……。

ややこしい。

しっかり生活しよう。

そう思っていた。


――――


そんなある日。


トントンッ!


「は~い」


ドアを開けると、ケンチ―が家にきた。


「どうしたんですか?」

「あの、突然ですがタケさんが引っ越しされました」

「えっ?」


タケが引っ越したというのだ。


「なんでですか?」

「それは……わかりません」

「どこに?」

「わかりません」


なんでだろう。

引っ越しってなに?


「一応、お知らせしておこうと思って」

「はい、わかりました」

「あ、なので島民をひとり募集します」


え?

切り替え早っ。

ひとり減ったらすぐ違う人を入れるってことか。


「わかりました」


ケンチ―は戻っていった。


「しおり、だれか来たのか?」

「うん、ケンチ―さんが」

「なんの用だ?」

「タケさんが引っ越したって」

「そうなのか?」

「うん」


わたしは不思議に思っていた。

引っ越しってなんだろう。

わたしも引っ越しできるの?

わたしは死んでこの無人島にやってきた。

タケさんは違ったってこと?

ミーリさんは?

聞いてみようかな?


「リーフィア、ミーリさんのところにいってくる」

「わかった」

「ぼくは、眠いからねてるよ」

「わかった」


わたしは急いでミーリさんの家に向かった。

ミーリさんも頑張って、家を建てたのだ。

ミーリさんの家の屋根は紫だ。


トントンッ!


「ミーリさん! いますか?」

「は~い」


よかった~今日はいる。


「しおり、どうした?」

「あの、タケさんが引っ越したってききましたか?」

「ええ? なんで?」

「まだ、聞いてなかったんですね」

「うん」

「理由はわかりませんが突然すぎます」

「そうだよーあそこまで頑張ってやってたのに」


ミーリさんもとても残念そうだ。


「あの、ミーリさん。聞きたいことがあるんですが」

「なに? あらたまって」

「ミーリさんはこの無人島にどうしてきたんですか?」

「ん? わたし?」

「はい」

「それは、その時無人島で暮らすのが流行っていてちょうどここの募集が入って応募したんだ」


好んできたということか~


「しおりもそうだろ」

「えっ? まあ」

「だよな~タケもそうだと思うよ。でも飽きちゃったかもな」


そんな感じなのか。


「家に帰ったかもな」

「それならいいんですけど」

「タケなら、心配しなくても大丈夫だよ」

「そう……ですね」


むしろ、タケのことより自分のことが心配になってきた。

なぜかというと、最近寝てる時間が増えているからだ。

タケがいなくなる前は、やっぱり寝てることが多かった。

何日も会えない日が続いた。

1か月くらい会えないときもあった。


リーフィアが最近、わたしがずっと寝ているという。

起こしても起きないようだ。

今日も久しぶりに起きたようで、島の風景も変わっていた。


「ミーリさん、この島で楽しみましょうね」

「ああ、どうしたんだ急に」

「いえ、別に」


「おじゃましました」

「ああ、またね」

「はい」


わたしはミーリさんの家をでた。

リーフィアが待っているから急いで帰って何かおいしいものでも作ってあげようかな~っと。


ジリジリ……ジリジリ……


ん……っ。


頭が痛い!

なんだ?

この痛み。


わたしはその場に座り込んだ。

しばらく座っていると、痛みから解放された。


今のはなんだったんだ?

ふぅ!


家に戻ってきた。


「ただいま~リーフィア」

「おかえり」

「起きてたんだ」

「うん、お腹すいて」

「はははっ、今から作るね」

「わ~い」


こんな楽しいリーフィアとの生活が終わろうとしているとは思いもよらず……。

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