第6話 真相

校舎から体育館へと続く道は、やはり好きじゃない。

最も凄惨な殺戮場となった痕跡が、今も尚残っているからだ。

そんなことをうっすらと考えながら、航平たちが待つ体育館へと入る沙里奈。


航平「お疲れさんです、沙里奈さん」

沙里奈「お疲れ様、何か発見があったの?」

剛「お疲れ様です」

沙里奈「剛くん、お疲れ様」

航平「かなり。例の奇妙な件にも繋がってくるかもです」

沙里奈「どれ」

航平はそう言うと、黒いアタッシュケースを沙里奈に見せた。

航平「これの中身、なんだったと思いますか?」

沙里奈「さあ、全く検討つかないわ」

航平はケースのフタを開けた。

中には、空になった注射器、無色透明の液体が入ったままの注射器、そしてボイスレコーダーがあった。

沙里奈「注射器とボイスレコーダー?」

航平「はい、この注射器に何が入っていて、どう言う目的で使われたかが、このボイスレコーダーから分かります」

沙里奈「再生してくれる?」

航平「もちろん」


(ボイスレコーダー)(男の声)

私は、自己紹介などしない。無意味とわかっているからだ。

だが、これから起ころうとしていること。いや、これが誰かに再生されているときには、すでにことは起きている頃だろう。だから、伝えておこうと思う。今起きていることの真実を。単刀直入に言う。今周りで起きていることの目的は、金儲けだ。そしてこのことを行う実行力のあった最終意思決定者は、長い間退屈すぎて、死ぬ間際に刺激的なことをしてみたかったという庶民が想像すらできないほどの桁違いの金持ちが暇すぎて行ったというくだらない者だ。だがこの方法は、余暇を潰すにはあまりにも行き過ぎたこと、金儲けのための破壊行為としては、全くもってコントロールしきれない、戦後復興のような再生活動が追いつけない、ただただ破壊だけがものすごいスピードで進んでしまうものだ。じゃあなぜ、ここまで先のことを知っていて、私が実行者として行動しようとしているか?疑問に感じているだろう?この理由もまた実にシンプルで、君の期待を裏切るね。脅されているからだよ。弱みを握られているわけさ。同時に報酬も用意されてる。これをちゃんとやってのけて帰れば、私と家族は金持ちたちが安心して暮らす予定のシェルターの労働者として雇用してもらえる、つまりかくまってもらえる。実行を拒否すれば当然、家族の命はそこまでだ。わがままだと思うかい?所詮、人間なんてのは身の回りを守ることが優先だよ。そのためなら、他の圧倒的多数の人間がどうなろうと関係ない。そしてこれは、桜第一高校のみで実行されるわけじゃないよ、当然。全世界的だ。すごいだろ、このスケール。全く、気の狂った金持ちがいるもんだね。怒りと絶望を感じているだろう君に、私からささやかなプレゼントだ。これは、希望でもあり、同時に焦りも招くけど、文字通り頑張りきれば、君たちにも未来はある。情報と物、1つずつ渡そう。私のせめてもの善意だよ。まず、無色透明の注射器について、これをまるっと全部体内に注入するとある程度の時間経過すると体調不良になる。そして徐々に目が赤くなる。やがて本人の意識は飛び、攻撃的になる。言って仕舞えば、噛み付いてくる。この成分にはとある生物も含まれてるから、種の保存が働いてるんだろうね。さて、噛まれた人は、どうなるのでしょうか?正解です。同じ症状に襲われます。心臓は止まってるようで実は微動してる。でも流石に脳天を壊されたら機能停止。終わりだね。ただね、最大のポイントは、この原液を注射した人はね、だいたい半年かな、早くても、元の理性を取り戻す。そしてね、普通じゃ考えられない能力を1人1つ授かることになる。でも注意点が、、噛まれただけの人は、半年経とうが1年経とうが永遠に理性を取り戻すことはない、これは残酷だけど真実。実験データでとっくに証明された。おっと、話し過ぎたね、そろそろ実行の時間が迫ってる。君の幸運を祈るよ。


沙里奈「そんなことって、、、」

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