第3話 その瞳の意味
航平「今日の昼飯何にすっかなー」
俺は航平。
学業成績絶不調のまま迎える高校三年生への進学。
でもまあ二年生留年も囁かれてた俺にとっては、まずまずの結果だろ。
部活もせず勉強もろくにせず、いい加減に2年間を過ごした。
周りの他校のオラオラ系と似たモノ同士感覚でよく遊んだ。
ただここ数週間、そいつらからLINEが飛ばなくなって、
偶然できた暇時間、流石に将来を考えて勉強モードにスイッチしようかと春空を見上げて食堂近くの教室でつまらん日本史の授業を受けてる。
まあ一応、ここらではそこそこ名の知れた進学校の生徒だからな...
2限目が終わった。
航平「剛は昼飯何にする?」
剛「んー、肉」
航平「肉笑。んなもんメニューで言ったら色々だわ」
剛「見て決める」
航平「おけおけ」
剛はいつもこんな感じだ。
片言というか、ワード少なめで会話があんま続かない。
でもそんな素っ気なさがめんどくさくなくて俺は好きだ。
追加で言うと、あいつのフィジカルパワーは、シンプルにすげえ。
ワンチャンステロイド効かせてるのかと見紛うほどの筋肉だ。
この学校にボディビルド部がないのが残念で仕方ない笑。
航平「結局唐揚げ定食か」
剛「おう」
航平「いやしかし、食堂が隣にあると席が選び放題でいいな、まったく」
剛「おう」
航平「剛はさ、大学いくん?」
剛「ああ」
航平「あ、いくんだ一応笑」
剛「行くわ、なめんな笑 そんでもって運動部でわからんがたくさん受賞したる」
航平「それはいい志だ笑」
剛「だろ」
航平「普通はさ、そこまで目標があるんなら、ついでにどんな賞が実際あって、その為の部活かなんかがどの大学に用意されてるかまでチェックすんだけどな」
剛「そうか...ありがと。来週の面談で確認する」
航平「お、おう笑」
剛のさっぱりした性格は本当にいいな。
いやそれにしても、俺はどこの大学に行くかな。
そもそも選択肢がこの辺にはなさすぎんだよな。関東突っ込むしかねえか。
女子「キャー!」
食堂から遠くない距離で女子の叫ぶ声が聞こえた。
隣で大人しく定食を食ってた剛が秒で立ち上がる。
航平「なんだいったい?」
剛「様子見に行くか?」
航平「そうだな、ちょっとこれは、ただ事ではない叫び声だわ」
そう言うと剛と俺は、食べかけの食事を残して食堂を後にした。
食堂を出る際、食堂のおばちゃんも厨房で互いにキョロキョロしてた。
まあそれくらいの叫び声だったからな。
食堂を出て右に曲がると少し先に人だかりができていた。
駆け寄ってみる。
どこかで見かけたが名前は知らない教師が倒れて意識を失っている女子に懸命に話しかけている。
よくみると彼女の頭からは大量の血が流れていて、床一面血の海だった。
野次馬から少し離れた所では保健室の先生が電話越しに早口で話している。
恐らくは119なんだろう。
群衆の輪からややはみ出た所で震えながら同じく血塗れの女子がいた。
見たことはない。見覚えがあると言えばある子だ。
航平「おい、大丈夫かお前?」
女子「...」
その子は話しかけても恐怖に顔を歪ませたまま、ただ一点だけ見つめて何も話さない。
剛「その子の血、自分のやんね。止血せんと大丈夫か?」
航平「えっ?」
剛「いやだから、その子、多分この倒れてる子の血とちゃうで。」
剛はテンパったり動揺したりするとえせ関西弁をしてくる。
航平「違うってお前、なに、この子自身の血ってことか?」
剛「肩見てみいや」
本当だった。
剛が指摘した通り、左肩に沿う形で血が今も流れてる。
よく見てみると、右手の二の腕辺りからも血が流れている。
航平「ねえ君、血が、血が止まってないよ。止血しないとだよ」
さっきから色々声をかけてみるが、微動打にしない。
自分の傷を確認することもしない。
剛「ショック状態だよ」
航平「ああ、そうみたいだな。どうしちゃったんだよまったく」
割と出血量が素人から見ても凄いので、保健室の先生にこのことを告げようとしたが、まだ電話している。長い。先生の近くに行ってみた。
保健室の先生「すぐに来れないってどう言うことですか?こっちはとにかく大変な事になってるんですよ。生徒が1名頭が割れて大量出血していて意識なしの瀕死の状態で、もう一人はショック状態で会話もできない生徒までいるんですよ。あれ、もしもし!もしもし!ちょっとやだ切れたわ!!」
航平「先生、この子、さっきから凄い血が出てます。止血してあげないと」
保険の先生「えっ、そそ、そうね、ごめんなさい、君のスマホで救急隊を呼んでもらえるかしら」
航平「分かりました!」
先生は俺にそう言うと止血の準備に入った。
航平「ダメだ、全然繋がんない。」
剛「俺のスマホからも同じだ...」
航平「このツーツーツーってさ、お話中てことよな?」
剛「ああ、間違いない」
救急隊が来ないとこの倒れている子がこのまま死んでしまう。
倒れている子の側にいる先生のもとへ行き、救急隊に電話がつながらないことを報告しに行こうと駆け寄ったその時だった。
俺は、頭をかち割って倒れて瀕死の状態のその子と目があった。
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