第2話 モテるのも大変なんです
第二話
「せっかくだし、フレンドにならない?」
「いいよ」
そう言い、フレンドコードを見せようとしようとした時、俺は気付いてしまった。俺のアカウントガッツリブルーのやつだから、バレるくね? 何故サブ垢を作らないかって? ガイドラインで禁止されてるんだよ! まあ、そうそうバレることはないだろうと思い申請が来たのを承認し、フレンドになった。
「もしかしてブルーさんですか!?」
あ、終わった……。もう誤魔化しようがないしいっか……。
「うん、そうだ――」
「やっぱり……私大ファンなんです! 握手してくれませんか?」
「あ、うんいいよ」
キラキラと目を輝かせながら、俺と握手する心愛さん。そんなに俺と握手できて嬉しいか……?
「本当に感激です! あのブルーさんと握手できるなんて……」
「そんなに喜んで貰えるとは思わなかったよ」
正直結構驚いた。俺のチャンネルなんてそんなに有名ではないと思っていたからだ。
「そ、そういえばブルーさん、今日新曲追加されるみたいですけどやるんですか?」
「帰ったらすぐやって、あげようと思ってるよ」
「やったっ。帰ったら楽しみにしておきますね!」
その後、俺たちはそれぞれの帰路についた。俺は家に帰り心愛さんに楽しみにしていた新曲をやった。そしてすぐに編集し動画をあげた。
するとすぐに通知がきた。誰かがコメントをしたようだ。確認してみよう。
KOKOA「凄く楽しみにしてました! 新曲もすぐにできるなんて流石です!」
うん? ……これ心愛さんじゃね? もし本人なら俺が投稿するまで待機してたってことになるぞ? 取り敢えず明日訊いてみるか。
次の日俺から訊く前に心愛さんの方から話しかけてきた。
「昨日の動画見ましたよ! 相変わらずすごいですね!」
「あー、ありがとう。そういえば心愛さんに訊きたいことがあるんだよ」
「なんですか?」
「えーっと、この『KOKOA』っていう人って心愛さん……?」
「はい、そうですよ!」
まじで本人だったわ。
少し心愛さんと話した後自分の席に戻ったら、後ろから声をかけられた。
「四姫と話せたからって調子のってんじゃないわよ」
「のってないよ?」
そんな簡単に調子に乗るわけないだろ…………多分。
「……私の方が颯太と話すんだから」
「ん? なんかいった?」
「別に何も言ってないし」
桜がこっちをギロっと見てくる。怖いわ。ていうか何も俺してなくね? そんなことを思いながら桜の方から前に体を向ける。するとまたもや右から声をかけられた。……いや声かけられすぎじゃね? まさか俺にもモテ期が……。
「すいません、ちょっといいですか?」
そう、声をかけてきたのは水島さんだった。俺に何か用があるのかなと考え、返事をした。
「どうしたの?」
「颯太くんって今日放課後少しだけ学校に残れますか……?」
「あーうん。大丈夫だよ。でもなんで?」
「実は水瀬さんが今日学校休んでるでて、休むことは誰にでもあると思うんですが、実は学級委員の仕事がタイミング悪くて今日の放課後各クラス二人でものを運ばないといけないです……」
あーだから俺に放課後空いてるか訊いてきたのか。ふとそこで俺は疑問に思った。なんで俺に頼ったのかと。別に頼るのはいいけど、俺以外にも人いるよな。そこで俺はその疑問をぶつけてみることにする。
「でもなんで俺なんだ? 別に他の男子でもよくないか?」
「それは先生にそのことを相談したら――」
『先生実は――』
『なるほど。水瀬が休みなのね。だからその代わりをしてくれる人を探してるってことか』
『そうです』
『男子はだいたいが水島さんになんかお近づきになりたいとかで、仕事真面目にやらなそうだなー。うーんならあの子は? 確か名前はえーっと、颯太くんだ。あの人なら真面目にやってくれそうじゃない?』
『わかりました。訊いてみます』
「――ということなの」
「そういうことね」
なんか嬉しいような、悲しいような……。ていうか、生徒の名前くらい覚えとけよ! めっちゃ悩んでるじゃねえか。まあとりあえず断る理由もないので、承諾することにする。
「いいよ」
「本当にありがとうございます! すいません迷惑かけてしまって……」
「それぐらい別になんともないよ」
――――――
その後荷物を職員室にとりに行き、水島さんと一緒に視聴覚室に向かう。二人共黙って歩いていた。なぜかめっちゃ気まずい……。すると向こうから話を切り出してきた。
「そういえば、颯太さんって桜さんと仲が良いんですね」
「仲が良い……のか?」
めっちゃ冷たくされるから仲が良いって良いのかわかんねえな。
「良いと思いますよ。少なくとも私から見たら痴話喧嘩みたいな感じですよ」
「別に俺と桜はそんな関係じゃないからな??」
そんなこと嘘でも言ったら桜に刺されてしまう……。
「少し羨ましいです……」
そんなことを水島さんが言った。どういうことだ? 水島さんは痴話喧嘩するような人が欲しいのか?
「え、なんでだ?」
心の底からわからない俺は訊いてみることにした。
「私、昔から同学年の男性に好かれてるんですよね」
一見モテていることを自慢するような発言だ。しかし、俺はその言葉には自慢するような意味はなく、ただ悩んでいる女の子の弱音に思える。
「そのせいで一部の女子から少し嫌われているんです。多分男性の方々が私を好いているので、自分に好意が向かず嫉妬でもしているんでしょう」
悲しそうな表情をしていた。彼女の周りには吹雪が吹いているんじゃないかと思うぐらい、冷たい空気が流れていた。
「しかも私に好意が向かない男性も特定の女性、例えば私の友達の佳子ちゃんや光野さんなどの方々に向いてしまうんです。その中でも私は学級委員というみなさんをまとめなくてはいけない役なので、私には特に敵意が向いてしまうんです…………」
そんなことを話された俺は少し心がいズキリとした。俺はモテているのは誰だって嬉しいものだと勘違いをしていたからだ。モテる……それは喜びもあるのかもしれないが、周りからの反感を買ってしまうものでもあるのだと理解した。
「ごめんなさい。こんなことを話されたからって面倒くさいだけですよね……」
俺はその言葉を聞き、直ぐに言葉を放った。
「そんなことはないよ!」
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