第11話 さすユミ!

11.さすユミ!


「さすがユーミ様!」

「さすユミ!」

どこに隠れていたのか、デンドロニウムとオキュペディウスが走り寄ってきた。

「おまえら、戦わなくてもいいけど隠れるってどういうことだ!?」

ロドリゲスが妙な怒り方をしているが、

「すいません!」

「我々、足手まといにならぬようにと…」

2人は土下座。

躊躇なく額を床に着けている。


その間にユーミは、グラナドスに回復魔法の使える者を呼びに行かせる。

全員、致命傷はなく、すぐに回復魔法によって回復した。



「全くお役に立てず、申し訳ござらん」

「右に同じで…」

チェン・シェン・ロンとゴンザレスは平謝り。

「我々も」

「お役に立てませんでした」

「身に染みました」

カイナス、オルドス、グラナドスも同じように平伏している。


「お主ら揃いも揃って…!」

「まあまあ、お父様」

ロドリゲスが何か言おうとしたところへ、ユーミが口を挟んだ。

「叔父様たちもイケメンたちも、彼らなりに頑張ったじゃん」

「しかしなぁ…」

「悪い所があるとすれば、魔王城の仕組みじゃね?」

「どういうことだ?」

「敵の侵入を易々と許してしまうトコじゃん?

 でもまあ、警備兵たちの落ち度ってワケじゃないけどさぁ」

ユーミはベラベラとしゃべくっている。

「まあ、今回は敵のやり方が予想外だったっつーのもあんだけど、

 それにしても城の警備がまだまだザルっつーか、

 最初っからコンセプト見直した方がいいんじゃね?」

「う、む…。ユーミの言うことにも一理あるか」

ロドリゲスは渋々といったていで、引いた。

ロドリゲスは部下を叱責する立場、ユーミが取りなしをする立場ということである。

組織というのは面倒なお約束がまかり通っているものだ。


「とにかく、責任があるとしたらアーシら全員にあんでしょ?」

ユーミはとりあえず良い事を言ってる風で、その実、責任の所在をうやむやにするような言い方をしている。

「ふん、ならばユーミ、お前が改善案を出せ」

ロドリゲスはそれに便乗する気らしい。

「えー?」

「お前も魔王の娘なら、それくらいはやらなければならん」

ロドリゲスは無駄に威厳を醸し出している。

「まー、いいけどぉ」

ユーミは言った。


(いいのかよ)

その場の皆が思った。



その後、責任の所在はうやむやになった。

代わりにユーミと仲間たちが、頭を捻って改善案を出した。


魔法が使えない状態でも戦えるよう研究所が開発した射撃武器を採用したり、

警備兵たちの班分けを組み直したり、

連絡速度を上げたり、

色々とやってみた。


こんな事をしてるうちに、ユーミと公爵家の面々、オキュペディウス、デンドロニウムは仲良くなっていたりする。


「……あれ? これってもう目的達成してね?」

ユーミは気付いた。

「ん? あー、そういう経緯なんだっけか?」

カイナスは興味なさそうに言った。

「別にもういいだろ、お前が魔王でいいよ」

「えー、めんどくさくね?」

ユーミはイヤそうな顔。

「イヤイヤイヤ、魔王に必要なのは単純な腕力ではなく、皆をまとめてゆく統率力ですぞ」

オキュペディウスが訳知り顔で言う。

「なにげに上から目線よね、オキュペディウス」

ユーミがジト目で羊角の悪魔を見たが、

「年の功と言いますからね」

オキュペディウスはするりとかわす。

「確かに、エンケラドゥス家とフォボス家が仲良くなったらそれで目的達成ですね」

オルドスがうなずいている。

「……」

グラナドスは無言だが、なんだか不満そうである。

「実は、もうロドリゲス様とは相談しておりまして」

デンドロニウムが唐突に言った。

「ちと早いかも知れませんが、ロドリゲス様が退位され、魔王の座をユーミ様に譲る手配をしてます」

「へ? なにそれ」

ユーミは半口開けてデンドロニウムを見た。

「おいおい、いつの間に!?」

カイナスがツッコミを入れる。

「それは良かったですね」

オルドスが、ちっとも良いと思ってない様子で言う。

「……」

グラナドスはやっぱり無言。

「いやいやいやいや、まだ早いよー」

ユーミは謙遜している。

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