第12話 アーシ、魔王になっちゃいましたw
12.アーシ、魔王になっちゃいましたw
ユーミはすぐに即位することになった。
「やーやー、魔族の臣民の皆さん!」
ユーミは不自然なくらいニコニコしつつ、観衆に向かって挨拶した。
「ユーミ・エンケラドゥスです!」
わー、わー
ユーミ様ー!
あらかじめ決められた歓声が聞こえてくる。
魔族の臣民たちは自由な歓声を掛ける事は禁じられている。
魔王即位式。
ユーミは所信表明の演説中であった。
「私はぁー、皆さんの生活を良くするためにぃー、研究所の協力のもとぉ、
電気や蒸気などの技術を開発してきましたぁー」
ユーミの後ろに電光掲示板が出現し、どこかで見たような電気や蒸気の絵が現れる。
「生活が第一、生活が向上すればおのずと国の力も向上します!
ユーミ・エンケラドゥスは皆様のために尽力する所存です!」
わー! わー!
ユーミ様!
即位式は終了。
『それでは、このまま宴会&ダンスパーティーへ移ります!』
そして流れるアナウンス。
これも電気のたまものである。
「へいへい、みんなー、楽しんでるぅ?!」
ユーミは扇子を持って踊り出している。
基本的にアホなのである。
「アーシ、魔王になっちゃいましたw」
ユーミは踊りながら言ったのだった。
*
人間の領土。
サンライド・ミドル王国。
その首都、ミドルナイス市。
勇者一行は、そこへテレポートの魔法で移動していた。
魔法による瞬間移動は、だいたい特定の場所を指定して移動する。
皆が皆、好き勝手にテレポートしてきては混乱するので、王宮により場所が指定されている。
ちなみに使用料まで決まっており、一回金貨100枚である。
「クッソー」
「途中までは上手く行ってたのに」
戦士と勇者は金貨100枚を払ってからブツクサ文句を言い始めた。
「畜生! 無駄に金を使わせやがって!」
魔法使いが悔しそうに地団駄を踏む。
その様子から、よほど金を払いたくなかったらしい事が伺えた。
ちなみに身体を縛っていた紐は勇者たちが取り払っていた。
「魔法使いちゃん、セコイわね…」
僧侶がジト目で魔法使いを見ている。
「いや、そういう事じゃないだろ」
勇者がツッコんだ。
「んだ、オレらの戦法が破られたんだぞ」
戦士が頭を抱える。
「オレらが考えた楽して魔王を倒すプランがぁ…」
「まあ、楽して稼ごうっていう考えがダメなんだろうけどね」
僧侶が自嘲気味に言った。
「けどよ、普通に真正面からやっちまったら魔族全員と総当たり戦になんじゃんかよ」
勇者がふて腐れたように言った。
「バカじゃねえんだから、そんな効率の悪いことしてらんねぇだろ?」
「だよなぁ」
戦士が同調した。
「ま、確かにそうだけどね」
僧侶は肩をすくめた。
「実際問題として、歴代勇者みたいにほぼ魔族全員と戦って押し勝つとかあり得ないよね」
「そんで金が掛かる」
魔法使いがギリギリと歯ぎしりしながら言った。
「レベルアップするのにチマチマ、チマチマ、モンスターを倒して経験値を稼ぐとしよう。
レベルアップするまでにかかる回復薬代、魔法に使うMPの回復代、宿代、食事代などなど、
これらにかかる費用がバカにならない」
「てか、なんも考えずに金払ってるのってバカだよな」
戦士がため息をつく。
彼らは旅の途中でこの事実に気付き、そしてアイディアを練ったのだった。
相手の魔法を封じ、肉弾戦に持ち込んでゆく。
「魔族の力の源は大体魔力だから」
魔法使いが言った。
「魔力を封じてしまえば大分、戦いが楽になる」
「で、チート魔法か」
戦士が呼応する。
「そう、魔法ギルドの秘蔵の古書を拝借して工夫した改造魔法、これで楽に戦えるはずだったのに…」
魔法使いは、はあとため息をつく。
「おいおい、そんな事してたのかよ」
戦士がため息をつく。
「ちなみに私的な魔法改造は違法だよ」
僧侶が補足した。
「てか、魔法改造は公的にも認められないだろ」
勇者が言った。
「ま、オレらは魔王を倒せればどうでもいいけどな」
「いや、良くはない」
僧侶がツッコミを入れた。
こんな話を他人に聞かれたら、官憲に捕縛されかねないので、宿の一室に集まっている。
「宿代、金貨200枚…」
魔法使いは金勘定をしている。
「おめ、そればっかだなぁ」
戦士が呆れた。
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