第9話 お見合い、そして勇者一行乱入
9.お見合い、そして勇者一行乱入
一言でいうと停滞。
お見合いは進展する様子はなく、ひたすら平行線である。
そもそもユーミの態度がハッキリしないのが原因だ。
ユーミが興味を示さないのは、イケメンとはいえ、実は幼なじみのようなものである公爵家の息子たちだということにある。
(むうぅ、折角セッティングしたというのにッ!)
(なんで話が進まんのだ!?)
ロドリゲスとゴンザレスは心の中で叫んでいた。
2人は内心焦っていた。
マラカスとかを両手に握って、「うぉー!」と叫びつつシャカシャカシャカシャカ振り回してしまうくらい焦っていた。
あくまでイメージ。
見合いが上手くいかないと、無駄に集まっただけである。
経費も少なからず掛かっている。
魔王城で責任のある立場の者も動員してしまっている。
(こんな事はしたくないが、魔王の地位を使って協力させるしかないな)
(ここまでセッティングしておいてダメでしたでは、公爵家たるフォボス家の名折れになる)
ロドリゲスとゴンザレスは利害の一致をみた。
「ふー、そういや、そろそろ査定の時期だな」
ロドリゲスはボソボソとつぶやいた。
突然、魔王が給料の増減の話をし出したので、周囲にいた役職ありの者は途端に緊張した。
「ユーミ様、結婚式は豪華に行きたいですなぁ」
オキュペディウスが何やら言い出す。
「いや、まだ付き合ってすらいないじゃん」
ユーミは頭を振るが、
「両家が手を取り合えば我が国に対抗できる勢力はありませぬなぁ。
この話は是非にでも成就させねばなりますまい」
チェン・シェン・ロンもムリヤリ外堀から固めようとしてくる。
「それは分かるけども、こういうのは本人たちの意思が重要なんじゃん」
ユーミは頑として言い張っている。
「我ら魔族は魔王様が盤石であってこそ、発展するのですぞ」
天然っぽいデンドロニウムですら、援護射撃をしてきた。
「でも、それ私のアイディアですよね?」
ユーミはどこかで聞いたフレーズのような事を返す。
カイナス、オルドス、グラナドスは周囲が急に話をまとめようとしてきたのに驚き固まってしまっている。
「ユーミ様の夫ともなれば、次期魔王の座も狙えるのではありませぬか?」
そこへ、追い打ちとばかりにゴンザレスが言った。
「うむ、まあ、そう言えないこともなくもない」
ロドリゲスはよく分からない事を言ってはいたが、うなずいた。
「では、私と! 是非! お付き合いを!」
カイナスが手を挙げて矢継ぎ早に言った。
「いや、私と!」
グラナドスが一念発起でもしたのか、追随する。
ここで発言しなければ、ユーミを取られるとでも思っているのだろう。
「……」
オルドスだけが無言でいたが、
「ユーミ様の夫君ともなれば研究費は使い放題でしょうなぁ」
デンドロニウムの独り言を聞いて、
「はい! 私、オルドスも立候補します!」
くるりと掌を返す。
「いや、まだ付き合ってもいないし、もっとお互いのことをよく知らないと…」
ユーミは遠回しに断りを入れてくるが、満更でもないのかデレデレしている。
今度は打って変わってその場の全員がユーミに迫るという状況になった。
が、
バン!
ここで重厚な両開きの扉を開けて、部屋の中へ警備兵たちが入ってきた。
「申し上げます!」
「城内に勇者一行が押し入ってきた模様」
「なんだと!?」
警備責任者のチェン・シェン・ロンが声を張り上げた。
(うわ、地声がデッカ!?)
ユーミは声にはしなかったが心の中で思った。
「現在、我ら警備兵が応戦中ですが、上様方には安全な場所へ避難頂きたく」
「バカを言え!」
ゴンザレスが吠えた。
「ここにおる方々は皆、腕に覚えがある。勇者どもなど叩き潰してくれるわ!
なあ、カイナス?」
「はい、父上!」
カイナスは腰に佩いた長剣を叩いてうなずいた。
それを見たせいか、その場にいる皆は逃げる選択肢を選ばなかったようだ。
「案内せい!」
「はっ」
ゴンザレスが言うと、兵士は平身低頭して案内をしようと歩み出すが、
「魔王! 尋常に勝負!」
部屋の中へと駆け込んできたのは4人の人間。
勇者、戦士、僧侶、魔法使いだった。
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