第8話 ユーミ、お見合いする

8.ユーミ、お見合いする


すぐにセッティングがなされ、お見合いとなった。


魔王城の一室に一同が会した。

エンケラドゥス家はロドリゲスとユーミの2人。

フォボス家は、父親ゴンザレス、長男カイナス、次男オルドス、三男グラナドスの4人。

アントラス、アニス、フォボス家のダークエルフを含む両家の使用人が、共同で給仕として働いていた。


豪華なテーブルに椅子。

カーペット。

高級感のある調度品の数々。

お茶が淹れられて、香りが漂っている。


それから立ち会い人として、

魔王城の警備責任者にして将軍職である竜人族の「チェン・シェン・ロン」、

魔王城の執務管理者である山羊角の悪魔族の「オキュペディウス・バフォメット」、

研究所の「デンドロニウム」、

が参加している。


しん、と静まりかえっている部屋の中。

「皆様お揃いになられましたな。ささ、ご歓談くだされ」

場の雰囲気が固く緊張しているので、オキュペディウスが気さくな感じで皆を促した。

「まあ、お見合いとは言っても、皆、ユーミとは幼なじみみたいなものだしな」

ロドリゲスが不自然な笑顔で言った。

実際、エンケラドゥス家とフォボス家は、仲が悪いわりに普段から交流がある。

仲が悪いのはロドリゲスとゴンザレスだという説もあるが。

「ふん、何の因果か昔から我らはよく会っていた」

ゴンザレスがそれを受けて言う。

「ああ、子供の頃はよく遊んだっけな」

カイナスが思い出しながら答えた。

「遊びってか、あんたらの体力に着いていけなくてよく倒れそうになったわ」

ユーミはツッコミ。

かけっこ、鬼ごっこなどなど、獣人の体力全開で走るのでユーミはまったくついて行けなかった記憶がある。

「いや、子供のやることだしなぁ」

カイナスはポリポリと頭を掻いている。

「兄さん、そんなことよりユーミの好みとか聞いたら?」

オルドスが呆れ顔で言った。

ちなみにオルドスは研究所勤めで、デンドロニウムとは上司と部下の関係である。

デンドロニウム→上司。

オルドス→部下。


「誰が一番好みかってことか?」

カイナスは冗談っぽく言ったが、

「それが一番重要でしょう?」

オルドスはクスリともしない。

「好みねぇ……」

ユーミは少し考えてから言った。

「今の所、皆等しくスタート地点かな」

「はあ、オレら全員脈なしかよ」

カイナスは肩をすくめる。

「グラナドスはどうだ? なんか話たらいいんじゃないか?」

都合上、誰かとくっついて欲しいと思っているゴンザレスが、話題を切り替えようと話を振るが、

「……いや、特に」

グラナドスは口下手であった。

幼なじみみたいなもののユーミとですら緊張して言葉が出てこないのだ。

コミュ障なのかもしれない。

「そうそう、オルドスは研究職なんだってな」

やはり都合上、誰かとくっついて欲しいと思ってるロドリゲスはムリヤリ話題を振った。

「ええ、デンドロニウム様に師事しております」

オルドスはうなずいた。

彼は研究職が性に合っているらしい。

「へー、弟子なんだ」

ユーミは興味を持ったのか、反応を返した。

「デンドロニウムさんのお陰で生活が良くなって助かってるよ」

部屋にある電気スタンドを持ってくる。

「……」

「……」

「……」

3人の息子は無言。

「いやー、それほどでも」

デンドロニウムは天然ボケなのか照れていた。

ロドリゲスとゴンザレスは目で「お前はしゃべんな!」と合図をしつつ、

「カイナスは軍にいるんだったな」

「そうだな、カイナスは武芸が得意なんだっけ?」

珍しく2人は共同している。

「え、あ、はい。やはり男の仕事と言えば軍人でしょう」

カイナスは突然話を振られ、慌てて答えた。

「武芸も有名な剣匠について習っています。

 豪斬衝撃流を習いました。

 てか、敵と戦えない男など、結婚相手にはふさわしくないと思いますね」

しゃべってる内に調子に乗ってきている。

「ほう、豪斬流か」

これまで黙って聞いていたチェン・シェン・ロンが言った。

気になる話題だったのだろうか。

「ワシの鴛鴦華美流と同様に有名な流儀じゃの」

「あ、将軍は鴛鴦流なのですね。私の師匠がよく褒めておりました」

カイナスはおべんちゃら。

アハハ、ウフフ。

とユーミそっちのけで話し出してしまう。

「……将軍」

「その話は後でもできるでしょ?」

「おっと、これは失敬」

ロドリゲスとゴンザレスに睨まれ、チェン・シェン・ロンは下を向いた。

まったく話が進まない。

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