第4話 ユーミ、エレキについて語る

4.ユーミ、エレキについて語る


「電気ってゆーのがあってぇ、電球を光らせて部屋を明るくさせたりぃ」

ユーミはつらつらと思いついたことを言ってみるが、

「はあ、良いですなぁ、想像力というものは我らを豊かにしますな」

アントラスは笑顔で流した。

「ちがくて!」

ユーミは叫んで、頬を膨らませる。

「ははは、恥ずかしがることはありませぬよ」

アントラスはやはり笑顔である。

「うぬぬー」

ユーミは唸って、

「妄想じゃないってばぁッ! アントラスのアホ!」

「ほっほっほっ」

アントラスは笑って取り合わない。

ユーミが小さい頃から、この手の戯れ言を聞かされているので、慣れてしまっているのだった。

「むー、どうにかして電気を作ってやるぅ」

ユーミは意気込んでいる。

が、これまでその意気込みが結果として実を結んだ事はない。


「あー、なんかたるー」

ユーミはすぐに飽きて、ソファに寝転んでしまった。



だが、きっかけはすぐにやってきたのだった。


「ユーミ、お前が好きそうな研究をしてる者を連れてきたぞ」

ユーミの父にして現魔王のロドリゲスが、魔法使いっぽい男を連れてやってきた。

ローブ姿で眼鏡を掛けている。

青白い顔をしており、牙が生えている所をみると吸血鬼的な何かのようだ。

「あ、お父様」

ユーミは起き上がる。

「お初にお目に掛かります。デンドロニウムと申します」

ロドリゲスが連れてきた男はローブをバサッとさせて、挨拶した。

(なに、コイツ? キモッ)

ユーミは心理的に1kmくらい退いた。


「へー、機械の研究してるんだー」

「はい、魔法に頼らないエネルギーの研究を……」

「じゃあさ、電気作れる!? 電気!」

ユーミは被せ気味で言った。

「あ、はい、エレキの事ですね」

デンドロニウムはうなずいている。

「エレキは電磁誘導で作り出すことができます」

「ほえー、難しい事はいいから、発電所作ろうぜぃ」

ユーミは頭が悪かった。

難しいことを言っても分からないのだ。

「あ、うん、ソウデスネ」

デンドロニウムはその辺を飲み込んだようだった。

「発電所を設置したら、次は水道だね。あ、道路も切らないと」

ユーミは1人でべらべらしゃべくっている。

前世で昔遊んだゲームの話をしているようだった。


「ふむ、それは都市建設の話ですか、ユーミ様?」

デンドロニウムの眼鏡がキラリと光った。

ちなみに関係ないけど、重度のヲタでナード野郎のデンドロニウムは、眼鏡を取るとイケメンである。

「そ、そう、そうなんだよ、トシケンセツだよ!」

ユーミは適当に話を合わせようとする。

「むむ、魔王様、ユーミ様のお話をしっかり伺いたいのですが」

デンドロニウムは傍らで居眠りしていたロドリゲスを揺すった。

「んあ?」

ロドリゲスは頭ボケボケ状態だったが、

「何だ?」

デンドロニウムに気付いてすぐに威厳を取り戻した。

「はい、ユーミ様のお話が、意外にも役に立つと思われますので」

デンドロニウムは神妙な顔で言う。

「意外にもとか言うなし」

ユーミは複雑な表情をした。

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