第4話 ユーミ、エレキについて語る
4.ユーミ、エレキについて語る
「電気ってゆーのがあってぇ、電球を光らせて部屋を明るくさせたりぃ」
ユーミはつらつらと思いついたことを言ってみるが、
「はあ、良いですなぁ、想像力というものは我らを豊かにしますな」
アントラスは笑顔で流した。
「ちがくて!」
ユーミは叫んで、頬を膨らませる。
「ははは、恥ずかしがることはありませぬよ」
アントラスはやはり笑顔である。
「うぬぬー」
ユーミは唸って、
「妄想じゃないってばぁッ! アントラスのアホ!」
「ほっほっほっ」
アントラスは笑って取り合わない。
ユーミが小さい頃から、この手の戯れ言を聞かされているので、慣れてしまっているのだった。
「むー、どうにかして電気を作ってやるぅ」
ユーミは意気込んでいる。
が、これまでその意気込みが結果として実を結んだ事はない。
「あー、なんかたるー」
ユーミはすぐに飽きて、ソファに寝転んでしまった。
*
だが、きっかけはすぐにやってきたのだった。
「ユーミ、お前が好きそうな研究をしてる者を連れてきたぞ」
ユーミの父にして現魔王のロドリゲスが、魔法使いっぽい男を連れてやってきた。
ローブ姿で眼鏡を掛けている。
青白い顔をしており、牙が生えている所をみると吸血鬼的な何かのようだ。
「あ、お父様」
ユーミは起き上がる。
「お初にお目に掛かります。デンドロニウムと申します」
ロドリゲスが連れてきた男はローブをバサッとさせて、挨拶した。
(なに、コイツ? キモッ)
ユーミは心理的に1kmくらい退いた。
「へー、機械の研究してるんだー」
「はい、魔法に頼らないエネルギーの研究を……」
「じゃあさ、電気作れる!? 電気!」
ユーミは被せ気味で言った。
「あ、はい、エレキの事ですね」
デンドロニウムはうなずいている。
「エレキは電磁誘導で作り出すことができます」
「ほえー、難しい事はいいから、発電所作ろうぜぃ」
ユーミは頭が悪かった。
難しいことを言っても分からないのだ。
「あ、うん、ソウデスネ」
デンドロニウムはその辺を飲み込んだようだった。
「発電所を設置したら、次は水道だね。あ、道路も切らないと」
ユーミは1人でべらべらしゃべくっている。
前世で昔遊んだゲームの話をしているようだった。
「ふむ、それは都市建設の話ですか、ユーミ様?」
デンドロニウムの眼鏡がキラリと光った。
ちなみに関係ないけど、重度のヲタでナード野郎のデンドロニウムは、眼鏡を取るとイケメンである。
「そ、そう、そうなんだよ、トシケンセツだよ!」
ユーミは適当に話を合わせようとする。
「むむ、魔王様、ユーミ様のお話をしっかり伺いたいのですが」
デンドロニウムは傍らで居眠りしていたロドリゲスを揺すった。
「んあ?」
ロドリゲスは頭ボケボケ状態だったが、
「何だ?」
デンドロニウムに気付いてすぐに威厳を取り戻した。
「はい、ユーミ様のお話が、意外にも役に立つと思われますので」
デンドロニウムは神妙な顔で言う。
「意外にもとか言うなし」
ユーミは複雑な表情をした。
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