第5話 ユーミと都市計画
5.ユーミと都市計画
公爵家の息子たちそっちのけで、エレキの話が進み出した。
デンドロニウムは元々構想があったようで、この機に一気に実現させるつもりのようだった。
とりあえず魔王城に併設する形で、発電機が作られた。
生活空間にだけであるが、電気が通うことになった。
電線を通すために工事が行われた。
「……この電球って言うの、便利だな」
ロドリゲスは電灯を見ながら言った。
「わーい、これが文明の光だよ、お父様w」
ユーミは無邪気に喜んでいる。
「ふむ、文明の光か」
何気なく言った言葉だったが、ロドリゲスの心に刺さったようだった。
「ユーミ様、エレキの使い心地は如何ですか?」
デンドロニウムがやってくるなり、聞いてきた。
なんだか眼鏡の奥で目を輝かせている。
「うーん、まだ光がチカチカしたりするんだよねぇ」
ユーミは指摘した。
「うっ、それは電気が安定していないということですかね」
「そーなんじゃん?」
「電気の安定が課題ですか…」
デンドロニウムは思案顔になってしまう。
「それからさあ、水道を」
ユーミは構わずに続ける。
「水道ですか」
デンドロニウムは思案顔のまま言った。
「発電機の動力は木材を燃やして湯を沸かしたもの、つまり蒸気を使用していますが、沸かした湯をそのまま流すのはどうでしょうか。
ただ捨ててしまうより経済的ですし。
金属の管を通して湯を通せば……」
「ん、まあ、やり方は任せるよ」
ユーミは面倒くさそうに答える。
こんな感じでやり取りをしてゆき、デンドロニウム主導で「都市計画」が実行されていった。
公爵家の息子の事は完全に置き去りになっている。
*
「どうなってんだ、魔王の娘と面会する話は!?」
公爵家では、息子の1人であるカイナスが叫んでいた。
怒りを露わにしている。
公爵家は狼獣人の家系である。
カイナスは武芸を嗜むだけあって男っぽい容姿をしている。
「えー、なんか立ち消えになってますね」
使用人が目を合わせずに言った。
肌の色が浅黒く銀髪。
ダークエルフのようだ。
「なんじゃそりゃあ!」
カイナスは怒りのあまりのけぞった。
「ユーミって言えば、自堕落でなんもせんとはいえ、一応美人でスタイルも良いんだよ!」
「見てるの、外見だけですね」
使用人はジト目である。
「折角帰ってきたのに、立ち消えとかないわ!」
カイナスはブンブンと腕を振った。
軍人なので普段は部隊に在籍している。
「アニキ、うるさい」
三男のグラナドスがやってきた。
何もせず家にいるだけの引きこもりニートである。
痩せて陰気な感じの男だ。
「おや、グラナドス、まだ仕事決まらんのか?」
カイナスはイヤミな笑顔を見せる。
「黙れ、オレに合う仕事があればいいんだが、ないんだ」
グラナドスはうそぶいて、そっぽを向いた。
「ふん、オルドスは?」
カイナスはニートな弟に興味を失ったのか、使用人に聞いた。
「オルドス様は研究所から戻ってきてません」
使用人は答える。
「そもそもオルドス様は、この見合いには乗り気ではないようですね」
「じゃあ、オレがもらっても良いよな?」
カイナスは怒りも忘れて喜んだ。
気分が変わりやすい質らしい。
「ちょっと待てよアニキ、オレがいるだろ」
グラナドスが言った。
「はあ? 仕事もしてないヤツが結婚って、ないわー」
カイナスの中では、自分が結婚相手で決まったようだった。
「仕事すればいいんだろ! すぐ見つけるさ!」
グラナドスは張り合った。
実は、ユーミの事が好きらしい。
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