第3話 ユーミ「部屋暗くね?」とか言い出す

3.ユーミ「部屋暗くね?」とか言い出す


公爵家の3人の息子と会うことになった。

セッティングに両家の使用人、魔王城の官が相当苦労したのだが、それは語られることはない。


「はあー、どんなイケメンかなあ」

ユーミは頭、お花畑状態で公爵家の息子たちと会うのを楽しみにしている。

「おほん」

咳払いしたのはピシッとした正装姿の爺さんである。

エンケラドゥス家に仕える使用人の1人で、アントラスという。

髪の毛はなくヒゲが生えており、尻尾がある。

肌の色は緑がかっている。

「公爵家の3人のご子息は、カイナス殿、オルドス殿、グラナドス殿とおっしゃいます」

「ふーん」

ユーミはオヤツを食べながら聞いている。

小麦粉を練って揚げたドーナツのようなお菓子だ。

「カイナス殿は武芸に優れておりまして、軍人でもありますね。

 将軍にもなろうかという勢いだとか」

「えー、勢いだけ?」

ユーミは疑問を露わにする。

「……オホン、あくまでそういう噂です」

アントラスは逃げた。

視線をユーミから逸らす。

「オルドス殿は魔法院で研究職に」

「研究職って、具体的には? 地位はあるのー?」

「……将来有望という噂です」

アントラスはまた視線を逸らす。

「じゃー、グラドナス殿は?」

「グラナドス殿です」

アントラスが訂正した。

「そこはどんなナスじゃいっ! ってツッコむとこだろー」

「ウォッホン!」

「咳払いで誤魔化すなし」

「グラナドス殿は、その……英気を養っておられるとか」

「それ、ただのニートじゃん」

「……以上です」

アントラスは強引に話を終わらせた。


「なんか、皆、パッとしねーじゃん」

ユーミはソファに身体を預けた。

「ですが、公爵家との関係はよくなりますぞ」

アントラスは言った。

結局のところ、それが一番の目的なのだ。

「古来より婚姻に勝る友好関係はありませぬので」

「……」

ユーミは宙を見ている。

「んー、なんかさぁ、部屋暗くね?」

「はあ?」

アントラスは口をあんぐりと開けて言った。

「特にそうは思えませぬが…?」

「そーだ、明るくしよ!」

ユーミは突然、叫んだ。

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