第15話 ルジェとテイガー


 兄上とカルラが唐突にやってきた。まあ、カルラは連絡があったから良いとして、兄上は連絡が一切なくてやってくるのはいかがなものだと思って、文句を1つ言ってやろうと思った。決意は程遠く、フルールが出迎えてしまった。そのため、兄上の酒は少し減らしてやろうと思う。



『なんか、酒の量が少ないのに、酒の匂いがするね?』


『兄上の気のせいだろ』


『ちっちっち。お酒大好きなテイガーをなめてもらっちゃあ困るぞ、ルジェよwルジェの事だから、俺様に酒を出したくなくて、どっかに隠しているんだろw』


『その嗅覚をもっと別の所に活かしたらどうだ?』


『おっ、その反応は、どこかに酒があるんだな?もう場所の目星はついているから、さっさとはいた方が身のためだぞ?』


『……。一番奥の戸棚の裏に大量のツボがあるが、全部酒が入っている。これで満足か?』


『一番奥の戸棚の……。おっ、あった!酒が飲めるって嬉しいね!』


『全く、兄上っていつもそうだよな。酒の事しか考えていないのか?』


『いや、酒のこと以外も考えているさ。家族の事とか』


『そうか』


『実際、俺の家族に手を出したら、俺のブレスが飛ぶとは思う。まあ、それでも生きていたら、一族根絶やしにするがなw』


『兄上、それはせめて酔っ払っていない時に聞きたかった』


『まだ、一滴も飲んでいないぞ?』


『え?』


『だから、これは本心と言う事だ。ほら、酒たち減っていないだろう?』


『本当だ。疑って悪かったな、兄貴』


『ちょっ、俺ってそんなイメージか?』


『だから、すまんって!』


『まあ、しょうがないか。俺って、仕事が激務だから酒っかすとか、酒の皇帝とか言われるもんな』


『ごめ……なんて?』


『酒っかすとか酒の皇帝』


『そこではなくて』


『仕事が激務?』


『絶対にそこだろうが。兄上仕事やっているのか?』


『やっているよ。何なら、今の我が家の稼ぎ頭余裕で俺だよ』



 何と言う事だろう。2~300年帰らなかっただけで父親が稼ぎ頭から、兄上が稼ぎ頭になった。いつから変わったのだろうか。



『兄上、大体何年ほど前から稼ぎ頭になったというのだ?』


『大体ルジェが巣立った時ぐらいだから、2~300年ほど前かな?』


『そうなのか』



 竜において一家の稼ぎ頭とは、他の種族の一家の稼ぎ頭と訳が違う。どういう事かと言うと、竜は3頭以上いる決定や判断、投票をするなどといった場面の話を、会議と呼ぶ。その時に、一家の稼ぎ頭がいれば、司会、書記、話のまとめ役、投票結果開示などなど役割が割り振られる。そして、その経験のある竜は、一目置かれて尊敬される。


 分かりやすく言うなら、大御所の芸能人並みに有名になると言う事だ。そして、それは分かりやすく顕著に出始める。店などは、予約有りの所でも、顔パスで入れてしまうし、他の世界に旅行に行く際は、優先的に通される。いわば、他の種族に竜はこうやって力を所持していると見せつける代物である。


 でも、竜は世帯数が少ないからこれができるため、他の種族でこれが流行らないのはそういう事だろう。一頭だけの場合は関係ないしな。



『兄上が一家の稼ぎ頭なら、なぜ公表しないんだ?』


『親父のためを思って公表していないんだ。親父からは公表しなさいって言われているんだけどな』


『そうか』



 公表しないと適応されないからな。兄上が効力を発揮するのはまだ当分先の様だ。とは言え、私は大分焦りを感じてしまった。兄上はどんな感じになるのかがわかったもんじゃないからな。

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災害竜のお姫様 月桜 兎 @784136

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