第8話 ルジェとシュファ


「それはおそらくルジェ様かと」


『……我?』


「はい」


『特徴とかがそっくり似ていたのか?』


「んー、特徴はシュファの話だと一致しています」


『そうか。それだけか?』


「それだけじゃないですよ。だって、シュファの母親の匂いがルジェ様からかすかにするんですよ」


『なるほどな。確かにそれは我だな』


「と言うことでシュファの元に行きましょう」


『行くこと自体は構わないが、なぜそれほど重要な事をフルールは黙っていた?』


「だって、初対面で頼み込む事は良くないし、初対面で重い話することルジェ様は躊躇しません?」


『言われてみれば確かにそうだな。我の事が好きだったのも嘘だったのか?』


「いや、そっちに関しては一目惚れしました」


『そうか……』



 我は頭を抱えたくなった。さっきまでの重い話に我が関わるとは思っていなかったからだ。


 しかし、行くと言ったからにはフルールに従おう。我はどんな感情をフルールに向けられても、フルールの夫なのだ。妻を1人危険な場所に行かせる訳には行かない。


 ということで、金耳赤兎族の国に来た。我は人の体勢を取っている。



「ハシゴがないようだが、どうやって登る気だ?」


「前はハシゴがあったんですけどね……。とりあえずルジェ様、捕まってください」


「?ああ」


「よっと」


「おおっ?!」


「到着っと」


「飛ぶなら一声かけてほしかったが?」


「すみません、ルジェ様」


「!その声、もしかしてフルール?」


「シュファ、遅くなっちゃってごめんね!でもまだこの部屋にいるんだね」


「ええそうよ。でもね、ハシゴがなくなっていたでしょう?あれは、結婚相手に反対していたら、相手が考えを改めるまでハシゴを預かるって言われたのよ。1人で寂しかったわ」


「そうだったんだ……!あ、シュファのお母さんを助けたドラゴン様を連れてきたよ」


「そこの男性がそうなの?」


「うん!名前はルジェ様。私の旦那様!」


「よろしくな」


「あのフルールが結婚……?!おめでとう!それで、ルジェ様、母にもあってくれると嬉しいです。顔を見せてあげてください」


「わかった」


「じゃあね、シュファ、また会おうね」


「うん。また会おうね」



 こうして、シュファの母の元に向かうことになったが、シュファはなんだか浮かない顔をしていたので気になってフルールに聞いてみた。



「フルール、シュファは浮かない顔をしていたが、大丈夫なのか?」


「大丈夫じゃないだろうね。向こうの国の狙いは王が自然豊かな森と色とりどりの鉱石が採掘できる鉱山。王子の方はこの国の女性って言っていたからまともじゃないよ」


「かなりイラつく話だな。我も許し難い」


「でも、私は何も出来ない。それがとても悔しくて。シュファにはたくさん助けてもらったのにいざと言う時に何もできない。そんな自分が情けなく思えてくるんですよ」


「フルール……」


 我は相手を許すまい。フルールの恩人を傷つけ、フルールを傷つけた。そのような相手は許すまじ。それなら我なりのやり方で決着をつけてこよう。そう我は誓ったのだった。

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