第7話 フルールの昔話


「そういえば、我はそろそろドラゴンに戻った方がいいか?」


「そっちの方が楽なら戻って大丈夫ですよ」


「わかった」



我は、目をつぶってドラゴンの姿に戻るようイメージする。



『やはり、こちらの方が落ち着くな』


「私はどちらのルジェ様もかっこいいと思いますよ」


『むう、言われるのが久しいかもな』


「そうですか?」


『そういえば、我の昔話は語ったが、フルールの昔話は何かあるのか?』


「そういえば、話してないですね。私の昔話もお話しますよ」




あれは、私が小さい頃。金耳赤兎きんじせきと族の1貴族の娘として生まれた。


その頃の私は魔力の放出場所が定まっていない奇病、不定期魔力放出病にかかっていた。その奇病のせいで、手や目や足から魔法が出たりして、屋敷が何度も半壊しかけた。


両親はそんな私を見放さなかった。何か解決方法はないかと毎日毎日探してくれた。私は長女じゃないから、優先順位的には低かったはずなのに、それでも助けようと日々方法を探していた。


そんなある日、金耳赤兎の王女様が我が家にやってきた。王女様はとても人見知りで滅多に人に懐かなく、困った王様と女王様が色々な貴族のところに訪ねているらしい。


王女様は、私を見た瞬間、私に向かって飛びついてきた。それを見た王様と女王様は、すごく驚いた顔をしていた。王様も女王様も王女様がこんなになついた人はいなかったからだそうだ。


しかし、私は奇病を患っているのであまり遊べないかもと言う旨を伝えたら、『奇病を治療する術がある。その治療が成功したら、時々娘と遊んでくれないか』と王様から言われた。


私は、断る理由が無いほど魅力的な提案に感じていた。王女様はとても可愛らしいから遊んでいたら楽しいだろうし、それに何より奇病のせいで友達が居ない私に友達ができるのだ。


王様の提案を飲んでから私は治療に専念した。早く治って王女様と遊ぶためだ。その一心で治療を続けた。そしたら、奇病は治って王女様と友達になり遊んだりお勉強をしたりした。


そして、1ヶ月前。王女様……シュファは他国から無理やり婚姻が決まった。相手の国の方が力が大きいから無理やり婚姻を決めた。



『シュファ、私も行かなきゃいけないなんて相手の国はどうかしているよ。そもそもあそこは、黒い噂でいっぱいなのに、周りの国が私達を生贄にしようとするなんてさ』


『ごめんなさい、フルール……。あなたまで巻き込んで』


『シュファは悪くない!でも、シュファ、会いたい方がいるんでしょ?』


『ええ。母を助けてくれたドラゴンに会いたいわね。母はもう外交に行けないから、私が代わりにお礼を言いたいの』


『私、シュファのために探して来る!絶対戻ってくるから!シュファも負けないで!』


『フルール……。そうね。あなたが約束を守らなかった事はないから、楽しみに待っているわ』



そして、私は祖国を抜け出した。しかし、人間の国に入ろうとした所、ドラゴンの生贄に選ばれてしまった。


私は、眠らされて箱に詰められてその先の記憶がなく、起きたらドラゴンが目の前にいた。それがルジェ様だった。




「とまぁ、こんな感じですね」


『思い出話がとんでもなく濃いのだが?とりあえず、種族は人間では無いのだな?』


「そうですね」


『あと、奇病にかかっておったのか?』


「はい。今は完治しています」


『なるほどな。では最後に聞くが、シュファが探しているドラゴンとは?』


「それはおそらく……」

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