第5話 新しい洋服(後編)


 我達は、人間の里に向かう途中、フルールに注意した。その注意とは、我とカルラがドラゴンだからなのか、様付けされる事だ。



「なれぬだろうが、人間の里の間だけ様付けはやめてくれぬか?さすがに、ドラゴンとばれると我達も危うい」


「で、ですが……」


「お願いよぉ。私たちを助けると思って、ルジェ、カルラお姉ちゃんって呼んで?」


「おい、カルラ。何どさくさに紛れて自分だけ姉呼びされようとしているんだ?」


「あら、別にいいじゃない。私、妹欲しかったのよね〜」


「でも、どっちにしろ、ルジェ様の言葉遣いで長く生きている人だと思われますが……」


「……」


「そう言われれば、その言葉遣い300年くらい前には流行ったけれど、今では使わないと思うわよ」


「……」


「で、話を戻すけど、フルールちゃん私たちの事何て呼ぶの?」


「うーん……。今の所はカルラさんで勘弁してください」


「わかったわ。後からでもいいからお姉ちゃんって呼んでね。ルジェ、ショックなのはわかるけど、さすがに喋ってよ」


「私は結局フルールにどう呼ばれるんだ?」


「えっええっ?」


「あ、口調変えたんだ。まぁ、不自然だけど、さっきよりかマシマシ」


「あっ、えっと、ルジェ様は、旦那様で。人間の里では夫は旦那様でもいいと言うしきたりがあるのでそれにあやかる形にしました」


「うん。じゃあ行くとするか」



 そして我達は服屋に向かった。その後カルラによってオシャレだけど、機能性が高いと言われている服を買ってもらっていた。


 我には、機能性が高い事だけはわかったが、オシャレは分からぬからな。先程、流行に乗り遅れていると言われたばかりだからな。


 そして、服も大体の数が揃ったので住処に帰った。



「カルラ、今日は助かった」


「これくらいいいわよ。妹になりそうだしね」


「……言っておくが、血縁上と種族的に無理だぞ」


「あら、でも人間の世界は結婚したら妹弟ができると聞いたわ〜。ドラゴンにはない風習だから、面白いわよね〜」


「あの、でもそれはルジェ様のお姉様やお兄様がいる場合嫁から見た立場がそうであると言う事です。義妹と義弟と言います」


「あらっ、じゃあフルールちゃんは私の義妹ね!嬉しいわ〜」


「えっ?」


「……カルラは、我の姉だ」


「ええぇぇーーー!」



 フルールはその後ばたんと倒れた。心配でカルラに聞いたが「驚いたんじゃない?」と返ってきた。


 しばらくすれば起きると思うからと言われ、カルラは帰っていった。……肝心な所で我に丸投げしないでほしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る